姑息な手段で事実を隠蔽するような大人たちに、子供たちの教育を任せられるのか――?答えが「NO」である以上、鹿児島県の子供たちは不幸な現状下に置かれていると言うべきだろう。
昨年9月に鹿児島県指宿市で起きた女性教師暴行事件に関するハンターの情報公開請求を受けた県教育委員会が、15日間という本来の開示決定期限を2カ月に延ばしたあげく、ほとんどの文書を黒塗り非開示にした。悪質な“隠蔽”である。
■2か月かけて黒塗り作業
暴行事件の犯人は、被害女性と同じ小学校に勤務する教務主任の男だったが、悪質な強制性交未遂であったにもかかわらず、県教育委員会は「免職」ではなく「停職1カ月」という“軽い処分”でお茶を濁し、教員免許を取り上げることなく幕引きを図った。
性的暴行での「停職1カ月」は、福岡市など他の自治体の同様事案における処分と比べて格段に軽いもの。“被害者軽視”であり“処分が甘すぎる”と追及したハンターの記者に県教委が返してきたのは、「猥褻事案ではなくセクハラ」という主張だった。
ならば、と処分過程を検証するため昨年12月7日に行った関連文書の開示請求に対して県教委は、時間の経過とともに騒ぎも収まると浅知恵を働かせたのか、開示決定期限を大幅に延長。今年2月までの2か月間もかけるという、異常な対応をとっていた。
先週末になって開示された文書は、案の定ほとんどが黒塗り非開示。いわゆる「のり弁」状態で、事案の経過や関係者の言い分、軽い処分に終わった理由などが全く分からないものになっている(下の画像参照)。
■不必要な非開示で墓穴
役所が隠蔽に走る時の典型的な手法であり、これだけで鹿児島県教育委員会の体質が分かる。問題は、被害者と加害者が務めていた小学校の校長が、事件の4日後(9月28日)になって教育委員会に提出した「事故報告書」の記述を一定程度読めるようにしながら、事件当日(9月24日)に指宿市教委が県教委に提出した「学校職員の事故(暴行)について(第1報)」を前面黒塗りにした点だ。どういうことか、下の画像で確認してみたい。
まず、「事故報告書」。(*赤いアンダーラインと書き込みはハンター編集部)
「事故報告書」は、学校内で体罰やいじめ、教員同士のトラブルなどが起きた場合、現場を預かる校長が作成して教育委員会に提出する文書で、昨年9月23日から24日の未明にかけて起きた今回の女性教師暴行事件では、4日後の28日に市教委に対し事故報告書が提出されていた。
この「事故報告書」の記述については、校長が事実上の捏造を行い、加害者が《仕事上のアドバイスをしたい》として引き留めたのに対し、女性教師が《仕事上のアドバイスなら聞きたいと思い》などと虚偽の報告を行っていたことが明らかになっている。(参照記事⇒“【速報】指宿女性教師暴行事件「事故報告書」の虚偽が判明|校長がでっち上げ”)
次に、県教委が「のり弁」状態にして送りつけてきた、事件当日の9月24日に指宿市教育委員会学校教育課が作成した「第一報」。なぜか、全面非開示だ。
事件については、事故報告書の内容とダブる部分があるはずなのに、記述内容は一行も示されていない。学校名や教員の氏名など、個人情報だと分かる部分を消すことに異を唱えるつもりはないが、それ以外の部分は開示すべきなのだ。不必要にすべてを黒塗りにしたことで、「隠蔽」の証拠を差し出した格好だ。墓穴を掘るとは、こういうことをいう。
■まだある、県教委の「悪行」
2か月かけて開示されたのは、黒塗りばかりの100枚以上の紙切れ。暴行事件の犯人が、なぜ「免職」ではなく軽い「停職1か月」になったのかという疑問に対する答えは、得られなかった。説明責任を果たせない役所は、必ず不正な仕事をやっているもの。県の教育関係者からは、複数の「元校長」と県教委の特別な関係が「事件を矮小化させた」との見方が出ている。
鹿児島県教育委員会の“悪行”については、別のシリーズで詳細を報じていく予定だ。