鹿児島県議会の外薗勝蔵議長(薩摩川内市区:当選6回)が、県の発注工事を数多く受注しているファミリー企業の株を大量に保有し、毎年約300~790万円もの株式配当を受け取っていることが明らかとなった。税金を還流させて懐に入れた形となっており、土建屋政治の実態に県民から批判の声が上がりそうだ。
■地場建設会社の大株主
外薗議長の実兄や長男らが経営する鹿児島県内のファミリー企業は、総合建設業の「外薗建設工業」、工事用クレーンのリースなどを主業務とする「株式会社外薗運輸機工」、産廃処理業「川辰都市環境株式会社」の3社。県議会事務局で閲覧した資産報告書によれば、議長は外薗建設工業の株を770株、外薗運輸機工の株を67株保有していることが分かっている。
法人登記を確認したところ、外薗建設工業の発行済み株式は3,000株(下、参照。赤い囲みはハンター編集部)。議長は、同社発行済株式の三分の一近くを保有している大株主ということになる。
議長はこの他、熊本市に本社を置く「クマモトクレーン株式会社」と宮城県岩沼市の「東日本クレーン工業」では代表取締役を、前出・川辰都市環境でも取締役を務めて役員報酬を得ていることが分かっている。典型的な「土建屋政治家」の稼ぎ方だ。
■外薗議長の懐を潤す県民の血税
議長が770株を持つ地場ゼネコン外薗建設工業は、国や地方自治体から多くの公共事業の受注しており、鹿児島県及び県の出先である北薩地域振興局からは、平成26年(2014年)~令和元年(2019年)の間に以下の表にまとめた工事を受注していた(同社の県提出資料で確認)。この期間の県からの受注高は、21件分で986,351,000円に上る。
一方、外薗氏が資産報告書に記載した「配当」と「議員報酬+役員報酬」の年ごとの額は、次のようになっている。
鹿児島県議会の資産報告で記載が義務付けられている「配当」とは、県会議員本人が保有する株式などの配当金のこと。外薗議長が保有しているのはファミリー企業「外薗建設工業」と「株式会社外薗運輸機工」の株だけだ。すると年間335万円から785万円の配当収入は、両社から得ているものということになる。
税金 ⇒ 鹿児島県⇒ 外薗建設工業 ⇒ 外薗勝蔵議長
県民が納めた税金を原資とする公共事業を外薗議長のファミリー企業が受注し、その利益が配当に化け、議長の懐を潤すというカラクリだ。
外薗建設工業が数多くの工事を受注してる北薩地域振興局は、薩摩川内市、阿久根市、出水市、さつま町、長島町の3市2町を所管区域としており、庁舎は薩摩川内市にある。外薗議長はその薩摩川内市選出の県会議員であり、同局管内の事業に関しては、早い段階から情報を得ることが可能な立場だ。株を持つ企業が儲かれば、配当も大きくなることは明白で、同社に便宜を図っているのではないかという疑念を持たれても仕方があるまい。
■議会で原発と産廃処分場の推進主張、その裏で……
外薗氏の議員活動と“利権”が直結していることは、県議会の記録を遡ればすぐ分かる。2010年の県議会では、地元住民らが建設に反対していた薩摩川内市川永野の「エコパークかごしま」の整備計画について、「今月末には事業者が選定されると思いますが、いよいよ着工が目前であります。施工に当たっては、地材地建は言うまでもありませんが、地元住民と自治会や薩摩川内市と連携を密にして進めていただきたいと思います」と発言。11年には「エコパークかごしまについては、まだまだ地元の同意が得られていない問題がございますけれども、これは私は、説明と情報をしっかりと提供していただいて速やかに、速やかに工事を一日も早く着手していただきたい。ぜひこのことだけはしっかりと一日も早く着手して、やはり一日も早くつくり上げていくということに主眼を置いていただければありがたいなと思っておるところでございます」と早期着工を県に迫り、進捗状況を確認する質問を行っていた。
何のための質問だったかは、エコパークかごしまの建設現場に掲示されていた施工体系図で明らかになっている(下、参照)。外薗県議の議会質問の裏で、外薗建設工業が一次下請けとして処分場工事を受注していたということだ。
地元薩摩川内市にある川内原発と外薗グループとの関りも深い。議長は一貫して原発推進を唱え、川内3号機の増設にも賛成していたが、原発立地自治体に交付される電源立地地域対策交付金(電源三法交付金)を財源とする事業を受注していた外薗運輸機工と外薗建設工業の2社が、2007年以降、政治献金や相談役報酬などの形で約500万円を勝蔵氏に提供していたことが明らかになっている。
■問われる議長の資格
外薗議長は、県議会議長の立場にありながら、2元代表制の意義を無視して現職・三反園訓鹿児島県知事の自民党推薦に狂奔。同僚議員を恫喝して県議団の方針を決めさせるなど、横暴の限りを尽くしてきた。外薗氏の尽力で自民党推薦を得た三反園知事が実現を目指しているのは、数百億円の予算が必要とされ県民の間から「不要不急の事業」との声が上がっている総合体育館の建設だ。
複数の県関係者によれば、知事に同調して熱心に計画推進を説いてきたのが外薗議長。原発や産廃処分場の推進を、恥ずかしげもなく県議会で主張した際の“動機”と同じ理由によるものだとみられている。鹿児島県議会は、議長の人選を間違った。