安倍派幹部「非公認」でも世間からは厳しい視線

「大嵐が吹き荒れるぞ。自民党が割れるんじゃないのか」と緊張した面持ちで話すのは、自民党の閣僚経験者。岸田文雄首相は、自民党の裏金事件を巡る政治倫理審査会が終了したことを受け、党として関係者の処分をする方針だ。非公認以上の重い処分を下されそうな安倍派の幹部たちだが、反省しているとは思えない言動に、関係者はもちろん世間からも厳しい視線が向けられる状況となっている。

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3月18日、岸田首相は参議院予算委員会で立憲民主党の福山哲郎議員からの質問に対し、「処分をする前に衆議院の解散はしない」「今国会中に処分をする」と明言した。浮上したのが安倍派5人衆だった西村康稔前経産相、世耕弘成前参院幹事長と下村博文元文科相、塩谷立座長に対する「次の選挙で非公認」以上の重い処分というものだ。その直前、注目されていた下村氏が政倫審に出席した。

18日の予算委員会後に開催されたのが下村氏の政倫審。最大の焦点は、安倍晋三元首相が「キックバック中止」との方針を決めていたにもかかわらず、銃撃事件後の2022年8月、「キックバックは行う」と方針変更する会議に出席していた下村氏が何を語るかだった。同氏は記者会見などで、「ある人が、還付(キックバック)は個人のパーティー分に上乗せ、政治資金収支報告書で合法的な形で出す案もあった」と述べていた。

「合法」というからには、それまでのキックバックは違法であることを認識していたことになる。それを「合法的」に継続と言い出したのは誰なのか。下村氏の政倫審での説明に注目が集まったのは言うまでもない。しかし、下村氏は「“ある人”と言ったのは覚えていないからだ」「わからない」――。下村氏と対立している森喜朗元首相と安倍派の関係、森氏の影響力についても、「まったく承知していない」と “ゼロ回答”に終始し、真相解明への期待を大きく裏切った。

「岸田首相は常々、説明責任を果たすようにと言ってきた。だが、政倫審では安倍派の全員がまったく説明責任を果たせなかった。岸田首相、自民党の支持率はますます低下するばかり。説明責任が果たせないのならと、厳しい処分を課すしか手がなくなってきた」(前出・閣僚経験者)

自民党の処分は、重いものから除名→離党勧告→党員資格停止→選挙で非公認→国会や政府の役職辞任→党役員停止→戒告→勧告となっている。新型コロナウイルス感染時に、銀座で“豪遊”がばれた3人は、離党勧告。裏金事件で逮捕された衆議院議員の池田佳隆被告は除名だった。そのバランスから見ると、党員資格停止か選挙で非公認となる公算が大とみられる。

しかしハンターは、西村氏が3月に地元兵庫9区の洲本市で開催した「お詫び」の会合で、「すでに大臣を退いている。今後、自民党の処分があろうが3か月か半年の党役員停止処分だろう。そこまでは謹慎する」と処分が終わったかのような発言をしていた時の録音データを入手している。会合に出席した関係者こうは話す。
「西村先生は、大臣を辞めたことである意味、処分を受けている。それで十分じゃないかと思っているのでしょう。ただ、世論の目が冷たいので、党役員停止くらいの処分なら受けてやろうじゃないかという雰囲気でした。会合の最後、出口でその点を確認すると、『そう、もう大臣やめたのが処分ですから』と言っていました。非公認などの重い処分はまったく考えていない様子でした」

巨額のキックバックを継続した当事者でもある西村氏は、相変わらずの“上から目線”状態。それは世耕氏も同様のようで「政倫審で話した以上のことは知らないんだから。キックバックがどうして継続になったか自分が知りたいよ。岸田首相が厳しく出るのなら、みんなで別の形で結束する。参議院を束ねてやるしかない」などと語っている。

処分次第では自民党を出て新党もと思っているのかもしれないが、現実は厳しい。衆議院議員の西村氏、下村氏、塩谷氏と参議院議員の世耕氏では立場が違う。西村氏らは、自民党が非公認となれば無所属か既成政党、もしくは新党から出馬することになる。だが閣僚経験者だけに既成政党からというのは考えにくい。自ら新党を立ち上げるか、無所属で――となる。その場合、小選挙区で敗れると、比例で復活当選という「保険」はほぼなくなってしまう。

世耕氏は、参院和歌山県選挙区だ。これまで衆院転出が何度も噂されたが二階俊博元幹事長の厚い壁に阻まれてきた。世耕氏の参議院議員としての任期は来年夏まで。非公認で戦って勝てる見込みはない。

「衆参どちらにも共通して言えるのが、ある人が選挙で非公認となった場合、政権与党として『公認候補がいない』という事態はあり得ないという論議になること。刺客を立てるかどうかだ。仮に刺客は立てないとしても、千載一遇のチャンスとして自民党の地方議員らが無所属で出馬して保守票が割れるという危険性もある。世耕氏は参議院なので和歌山県全体が選挙区となり、衆議院の小選挙区以上にカネがかかることは明白だ。関西で強い維新が候補者を出せば保守票の一部は流れる。世耕さんは、ますます厳しい戦いになるだろう」(前出・閣僚経験者)

これまで岸田首相、安倍派と二階派幹部が政倫審に出たが、誰一人として国民が納得する形で裏金事件を説明できていない。とりわけ安倍派の幹部なら、誰がキックバック継続を決めたのか、そもそもキックバックの元締めは森喜朗元首相ではないのかなどという質問があることくらいは分かっていたはず。ならば、政倫審の前に自らが派閥内で情報収集し、事実関係を確認して臨むのが政治家として当然の責務だろう。何もせずに判で押したように「知らない」を連発する政治家たち――。岸田首相も含めて、裏金事件に関与した国会議員は、すぐに政治の世界から退場すべきだろう。

 

 

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