岸田首相長男のでっち上げスキャンダル、拡散させた高木国対委員長の粗忽

12月20日の午後だった。「明日は大変なことになるかもしれないな」と記者団や関係者につぶやいたのは高木毅国対委員長。彼が「大変なこと」と繰り返したのは、岸田文雄首相の首相秘書官を務める長男・翔太郎氏をめぐるスキャンダルだった。

■スキャンダル情報の裏

12月に入って翔太郎氏が民放テレビの政治担当記者「Xさん」と不倫関係にあるという噂が流れた。「週刊文春が記事にする、いや週刊新潮が動員をかけて取材に動いている」、「記者のXさんが、文春に追いかけられている」などと、もっともらしい話がマスコミや永田町関係者の間で交わされた。それをどこかで聞きかじった高木国対委員長が「うっかり」なのか意図的なのか真偽不明のまま、しゃべってしまったのだ。

12月21日朝10時過ぎ、ハンターが入手した文春の「早刷り」には、岸田首相を徹底追及する記事がトップに踊っていた。しかし、翔太郎氏のスキャンダル報道はどこにもない。何故そんな噂が飛び交ったのかという疑問が残った。
岸田翔太郎氏が首相秘書官となったのは10月。その後、Xさんは『山際大志郎経済再生大臣が辞任』をはじめとする、いくつかのスクープをものにしている。

Xさんは、ある雑誌の特集記事《20代女性政治部記者に聞く「総理番の仕事」って?》というインタビューにも登場しており、政治担当記者としての活躍や頑張りぶりを聞かれて、やりがいなどを答えている。「できる記者」という印象だ。ある官邸関係者が、こう解説する。
「いつしかXさんのネタ元は翔太郎さんではないか、特別な付き合いをしているのではないかと、関係を疑う声が上がるようになり、噂が噂を呼んで拡大していったのです。翔太郎さんは政治記者としてXさんを知っていたうようです。翔太郎さんは独身ですが、Xさんはまだ新婚。特別な関係になるとは思えない。それに翔太郎さんは首相秘書官になる前、岸田事務所を仕切っていたわけで、情報を漏らすことの危険性は誰よりもわかっている。Xさんのスクープにやっかみ、嫉妬したマスコミ関係者がウワサを拡散したようです」

■役立たず国対委員長の首を切れない首相

問題は国対委員長の重職にある高木氏が、噂レベルの話を大勢のマスコミ関係者の前で「大変なことになる」などとペラペラ話してしまうことだ。これまでも国対委員長がまったく機能せず、旧統一教会問題や急激な円安を受けての経済対策など重要課題が目白押しだった臨時国会を紛糾させた“張本人”として、党内では交代論が強くあった。パンツ大臣からパンツ国対委員長に別名は変わったが、粗忽さは隠しようがない。更迭されても仕方のない仕事ぶりだが、「しかしですね」と前出の官邸関係者が打ち明ける。

「岸田首相が即座に高木国対委員長を更迭することはなさそうです。山際氏や総務相だった寺田稔氏の時もそうでしたが、なかなか踏ん切りがつかない。その結果、自分の息子のありもしないスキャンダルを拡散されしまったんです。でっちち上げのスキャンダルでも、支持率が低空飛行を続けている岸田首相にとっては、大きなマイナスになります。就任時のような力強さがすっかり影を潜め、考え込む時間が増えています」

臨時国会はなんとか乗り切った岸田首相だが、唐突に「防衛費増額のための増税」を打ちだし、支持率低下に自ら拍車をかけた。年明けの通常国会でも、増税をめぐって紛糾しかねない状況で、前途多難といえそうだ。自民党では、岸田首相の迷走に「春の統一地方選で万が一ぼろ負けならそこで終わり。そこを乗り切っても、夏の広島サミットが花道」などと大っぴらに退陣論が語られる始末だ。

自民党のある大臣経験者は次のように話している。「岸田首相は聞く力というが、聞きっぱなしと揶揄されている。高木さんを国対委員長にしたのは、森喜朗元首相の進言を入れてのこと。ダメな人事の時だけ、聞く力を発揮しているようなもんですよ。退陣論がこれだけ明確に語られるようになると岸田首相の先行きは厳しい。そんな時期に、防衛費増額のための増税なんて言い出すでしょう。センスなさ過ぎ。年末で年越しするので精一杯という人が多いというのにね。年が明ければ、岸田おろしがはじまるのも時間の問題ではないか」

どうやら自民党は、岸田の「次」へと動き出そうとしている。

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