代わり映えなし、期待なしの岸田文雄首相による第2次再改造内閣。最大のサプライズが、「文春砲」で妻のX子さんの元夫の「怪死」を追及されている木原誠二前官房副長官の退任だった。その木原氏だが、官邸を去って謹慎するどころか、党の重職を二つも任されることになった。
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木原氏は岸田首相の「懐刀」といわれてきた人物。首相があっさり官房副長官の辞任を認めたことに、岸田派の国会議員も困惑を隠せない。
「木原さんは“影の総理”と言われるほど岸田総理の信任が厚い存在。当然、留任かと思っていたのですが……」
岸田首相は、スキャンダルを抱えている木原氏を内閣改造直前にG20サミットが開かれたインドに同行させるほど頼りにしてきた。しかし、木原氏の方から官房副長官退任の申し出があったという。
直接的な関与はないとされるものの、週刊文春の報道で、木原氏の妻であるX子さんの前夫の死亡には、「怪死」、つまり「殺人事件」ではないかという「嫌疑」がかかわっている。木原氏が警視庁に「圧力」をかけたのではないか、などと報じられているが、もし「怪死」ではなく「事件」ということになれば、木原氏への疑惑が再燃する。
「官房副長官のままなら臨時国会がスタートしたとたん、木原さんのことが国会で追及されることになる。X子さん周辺にささやかれる『怪死』についての情報が、また広がりかねないことを木原さんはずっと危惧していた」(前出・岸田派の国会議員)
岸田首相は「警察も事件ではないと言っている。気にするな」と木原氏を慰留したが、退任の決意は固かったようだ。しかし、表舞台から退いたはずの木原氏は、党務に戻って幹事長代理と政調会長代理という2つの要職を兼務することが報じられている。
幹事長代理と政調会長代理――どちらも「大臣クラス」と呼ばれる議員がつくポストだ。直近だと、今回、経済再生担当相に再任され2度目の入閣となった新藤義孝氏が政調会長代理だった。
また、幹事長に二階俊博氏が長く座っていた時には、閣僚経験者である林幹雄氏がずっと幹事長代理のポジションにいた。閣僚経験のない木原氏が、2つを兼ねるというのだから「ある意味、すごい出世だ。幹事長代理、政調会長代理、どちらも連日会議の連続で非常に忙しい。両方をやるというのはこれまで聞いたことがない。物理的にできるのだろうか」とある自民党幹部は訝しがる。
そしてこうも話す。
「幹事長は党のカネを握っている。政調会長は政策だ。どちらも直結するのが選挙。岸田首相は早期の解散総選挙をもくろんでいるのではないか」
来年秋に自民党総裁選での戦いを控える岸田首相。「次」の呼び声が高く、最も警戒するのが茂木敏充幹事長だ。もう一人、注目されているのが、安倍派5人衆の中でも次期総裁候補の呼び声が高い萩生田光一政調会長。木原氏が幹事長と政調会長という2つの役職の代理につけば、茂木氏と萩生田氏、どちらの情報も入手しやすくなる。つまり「けん制」にもなるということだ。
岸田首相は、総理総裁になった現在でも派閥の会長を続けている。森喜朗元首相、小泉純一郎元首相、安倍晋三元首相と、この20年、日本の政治を主導してきたのは安倍派・清和政策研究会だった。前出の岸田派議員はこう解説する。
「岸田総理の口癖は『安倍派の台頭以前に、国をリードしてきたのは岸田派だ』。我が派は、大平正芳元首相、宮沢喜一元首相らを輩出し名門と呼ばれてきた派閥だからです。総理は、『続けて2人、3人と首相を出したい』と話していたほどです。総理・総裁の座を岸田派で続けてとっていくためには、最大派閥の安倍派と対峙していかざるを得ません。木原氏の2つの代理はその布石でもあるんです」
今回の内閣改造で意外だったのが、外相が林芳正氏から同じ岸田派の上川陽子氏に代わったことだ。林氏は、岸田氏の「特命」を受け、経済人を引き連れてウクライナを訪問。ゼレンスキー大統領と会談したばかりだ。その林氏、茂木氏が入閣した場合は党4役への起用が検討されていたが、なぜか主要ポストからは外れることになった。岸田派の国会議員はこう見る。
「現在、会長に次ぐ岸田派のナンバー2は座長である林さん。座長から名前を会長代行などに変えて、一つ格上げという格好になった。岸田総理の次は林さんで一致結束――そういう話が派内では広がっている。総理は、“林の次は木原”と考えているんじゃないか」
しかし、派閥のパワーを見ると安倍派は99人。麻生派、茂木派と続き、岸田派は50人にも届かない第4派閥でしかない。林氏の処遇の裏には、喫緊の課題である“派閥の強化”があるとみられる。ただし、先行きに不安がないわけではない。
「林さんも外されたが、そんなに機嫌が悪くないのは、岸田首相と派閥のてこ入れで話ができていたからでしょう。また、重要閣僚の更迭などという緊急事態になった時のために、林さんを温存したとみることもできる。まあ、気になるのは、嬉しそうにしているのが木原だ。ずっと週刊文春の影におびえていたが、追求がおさまりつつあると分かったとたん、急に元気になった。飲みにもいっているらしい。浮かれていると、とんだ落とし穴がまっているかもしれませんよ」(自民党幹部の話)
確かに、木原氏のスキャンダルはX子さんの問題だけではない。週刊文春が報じた同氏の「買春疑惑」や、大樹総研の創業者・矢島義也氏との深い関係など、疑惑の種は尽きない。岸田首相の木原氏重用は、ある意味「時限爆弾」でもある。