福岡市が、災害対策本部の機能拡充を図る目的で計画した業務委託の業者選定に、大きな疑惑が浮上した。
福岡市への情報公開請求や関係者への取材から分かったもので、業者選定過程の一連の動きが、当初から特定業者の受注を想定したものだった疑いがある。
■災対本部の機能強化、事業費は約3億4,000万円
疑惑が持たれているのは、今年になって福岡市市民局防災・危機管理部が業者選定を行った「災害対策本部機能(ICT設備等)拡充整備業務委託」。市は、災害の激甚化・頻発化を受けて、迅速な災害対応を行うための基盤整備を図るため、ICT設備の設置や災対本部の改装などを行う目的で、提案競技を実施して業者を選定していた。
同業務委託の事業費は3億3,904万7,000円(上限額。税込)。今年1月15日に提案競技の公募を開始し、2月10日に締め切り。審査の結果、2月16日に『NECネッツエスアイ株式会社 九州支店』が最優秀提案者に選ばれている。
公募開始から締め切りまでの期間は、土日を含めてもわずか25日。ICT設備の選定や本部のレイアウト検討、Web会議システムの構築など多様な業務内容であることを考えれば、異常に短い公募期間だった。
ただし、疑惑の全容から見ると、公募期間の短さは“必然的にそうなった”と言わざるを得ないもの。実は、公募期間がもっと短くても、業者選定に困ることはなかったとみられている。何故か――?その答えを示すためには、提案競技の前段階となる「基本設計」の段階に遡る必要がある。
■疑惑の起点となった「基本設計」
疑惑の起点となったのは、福岡市が災対本部の機能拡充を図るにあたって、事業内容を決め込むために策定した基本計画だ。事業を所管する市民局防災・危機管理部防災推進課は昨年4月、まず、基本計画の策定を民間企業に委託するため「災害対策本部機能(ICT設備等)拡充整備基本計画検討業務」の業者選定に着手。2社を選んで、委託業務の積算をするための“参考見積り”を提出するよう求める。
基本設計の参考見積りを提出したのは『NECネッツエスアイ株式会社 九州支店』と『一般財団法人 高度映像情報センター』の2社。NECネッツアイが875万円とはじき、高度映像情報センターは770万円と見積もっている。(*下が2社の参考見積り。画像クリックで拡大)
市側に参考見積りの提出を求めた2社を選んだ理由を確認したが、「同様の事業の設計実績がある業者が他に見当たらなかった」という合理性を欠く説明しか聞けなかった。市が基本設計業務の予定価格として採用したのは、高度映像情報センターの「770万円」だった。(*下の文書参照。画像クリックで拡大)
税込770万円を予定価格とする設計業務の業者選定は、入札ではなく「見積り合せ」と呼ばれる方法で決められていた。市が見積り合せに参加するよう要請したのは3社。先に参考見積りを提出していた『NECネッツエスアイ株式会社 九州支店』、『一般財団法人 高度映像情報センター』と、ここで初めて登場する『NTT西日本』だった。しかし、NTT西日本は見積り合せを辞退し、実際の見積り合せはNECネッツエスアイ株式会社と高度映像情報センターに絞られる。おかしくなるのは、この後だ。
(つづく)