特定業者の提案丸呑み|須崎・市民会館整備事業で疑惑の「一者応札」

老朽化した市民会館の立て替えに合わせ計画された総事業費200億円を超える福岡市の一大プロジェクト「福岡市拠点文化施設整備及び須崎公園再整備事業」で、積み上げられた整備方針が、一業者の要請を受けてあっさり変更されていた――。]

異例の展開がもたらしたのは、「一者応札」という不適切な入札。書き変えられた「要求水準書」の裏で何があったのか、市への情報公開請求を通じて確認した文書で検証を続ける。

■「地下駐車場」に固執した福岡市

ハンターが注目したのは、入札公告後、事業に関心を示した業者と市側が質疑を交わした際の記録である「入札説明書等に関する質問及び意見への回答」。昨年5月22日に公表された第一回の「質問及び意見への回答」では、合計523項目について、事業者から細部にわたる質問が寄せられ、市が回答していた。特に重要なのは、要求水準書の駐車場に関する記載(No.77から83)である。(*赤い囲みとアンダーラインはハンター編集部)

これら7項目で業者側の意見として共通しているのは、「地下に駐車場を設けると、コストが大幅に合わないため、地上を認めてほしい」というもの。対象エリアは地下水位が高い場所のため、地下工事にコストがかかりすぎると指摘したり、隔地駐車場の利用を提案したりしているが、市側は「原案の通り」とバッサリ切り捨てていた。入札予定価格に地下駐車場の整備費用を含んでいることも明示しており、業者側と市のコストに関する意識に、かなりの温度差があったことがうかがえる。

多くの事業者が「地上駐車場」を要望していたが、市は認めなかった。入札に参加しようと考えていた事業者は、この結果を踏まえ公募に応じるかどうかを検討したことになるが、ここまではっきり回答されれば、だれがどうみても、駐車場は地下以外に認められないと判断するだろう。

同年6月5日、入札参加表明書の受付が締め切られた。この時点で参加を表明したのはわずか3グループ。この段階で入札参加を断念したある業者は、「ネックは駐車場だった。地下に整備するとなれば到底予算が合わなかった。ほかの事業者からも同じように聞いていた」と話している。

■一転して「地上」容認

入札参加が3グループに絞られた後、いよいよ疑惑の核心をなす“市と業者のやり取り”が行われることになる。

官民が連携するPFI事業では、民間事業者から幅広くアイデアを聞き、事業に反映することでより効果的な事業実施を可能とする。そのために開催されるのが「官民対話(サウンディング)」で、当該事業においても同年6月26日、入札参加表明者と市との間で「官民対話」が実施されていた。駐車場についての要求水準の変化がわかるのが、以下の項目である。

驚いたことに、前述した「入札説明書等に関する質問及び意見への回答」で明らかな通り頑なに駐車場整備場所を「地下」と限定していた福岡市が、入札を約2か月先に控えたこの時期に、あっさり「地上」を認めていた。

「地下を中心に」としていた駐車場の整備手法を示す文言を、単なる「表現」とした上で、「事業者が提案できるよう要求水準を修正します」――。要求水準の修正まで約束していた。

市が策定した要求水準書は、何年もかけて積み上げられた議論を形にしたもののはず。一業者が、入札まぎわになって出してきた“後ろ向き”の提案を、簡単に飲むことは通常考えられない。

ほんの数十日前、複数の事業者から同じ要望を受けていながら、頑なに「地下」と言い張った、福岡市の姿勢とは思えない変わりようだ。

この結果を見た業界関係者は次のように憤る。
「あれだけ『駐車場は地下』といっておきながら、突然地上を容認する市の対応に納得いかない。駐車場の位置取りにより、設計が大幅に変わる。もはや公平平等な入札とは言えない。特定の事業者グループと市との癒着を疑わざるを得ない」

業界関係者の言い分はもっともで、「癒着」を疑うに足る別のやり取りが、官民対話の中に出てくる。

唐突な駐車場整備手法の変更を知った別の事業者が、提案書の提出時期を先に延ばすよう要望したのに対し、市は一顧だにせず拒否していた。

■疑惑の「一者応札」

下は、一連の経緯をまとめた表だ。当初、多数の業者が事業参加に興味を示していたが、「地下駐車場」の工事費がネックになって、3グループに。さらに2グループに減り、唐突な「地上案」で対応できなくなったグループが入札直前に辞退を決め、最終的には「一者応札」になっていた。市側の説明によれば、辞退届が出されたのは7月31日と9月3日。入札が9月4日だったことから、最後の“辞退”はその前日だったことになる。

民間のノウハウを公共施設の運営に生かすというPFI事業の本質からすれば、複数の事業者からの特色ある提案が比較検討されるのは、市民にとって望ましい形。理想を言えば、入札参加者が多いほうがいい。しかし、採算の合わない仕事であれば無理に受注する必要はなく、厳しい予算での入札では応札者ゼロ、不調となるケースもある。

今回の場合はどうだろう。市の要求水準が一貫して「地下駐車場」だったとしたら、入札は不調に終わり、再入札になったかもしれない。逆に、初めから「地上駐車場」だったとすれば、多くの入札参加者が現れ、競争の中から価格を含めた提案内容がより優秀と判断される事業者が選定された可能性がある。

200億円を超える総事業費の原資は税金だ。特定業者に便宜を図るような形となった市の対応が選択肢を奪ったとすれば、不利益を被るのは市民ということになる。

ハンターは、当該事業についての検証を続ける予定だ。



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