週刊文春の報道で明らかになった、黒川弘務・東京高検前検事長の不祥事。「# 検察庁法改正案に抗議します」で燃え上がった世論に「賭博」という油を放り込んだ格好となったが、政府は事の重大性を見誤ったらしく、当然と思われた「懲戒免職」にはせず、「訓戒」という甘い対応で済ませてしまった。
「訓戒」は、厳密にいえば“処分・処罰”ではなく「指導・監督上の措置」。つまり、軽いお叱り程度のものだ。本来なら刑事事件として立件されるはずの犯罪行為を、政府だけでなく検察までグルになってもみ消したということだろう。
では、新聞記者との賭け麻雀や、それを受けた当局の「訓告」処分などを、現場の検察職員はどう受け止めているのか。5月28日、北海道・札幌の検察庁で行なわれたオープン会見(記者クラブ非加盟者も参加できる会見)で、趣くままに訊いてみると……。
■まるで他人ごとの次席検事
以下に、札幌地検・山口敬之次席検事と筆者とのやりとりを採録しておく。現職検察官の認識の一つとして参照いただけたら幸いだ。
Q 黒川検事長の処分をどう評価しますか?
次席:お答えする立場にありません。Q 検察庁法の解釈変更や改定、とりわけ定年延長についてのお考えを。
次席:それもお答えする立場にありません。Q 一般論として、3年間、月に1、2回の頻度でお金を賭けて麻雀をすることは、賭博罪にあたるでしょうか?
次席:状況を総合的に判断して、ということになると思います。Q 行為があきらかであっても、賭博にあたらない場合があると?
次席:どういう行為なのか、証拠関係から事実認定した上でないと、なんとも言えません。『賭博罪にあたることをしたら賭博罪にあたるか』という質問は、意味がないのでは。Q 次席ご自身は、報道関係者と麻雀したことはありますか?
次席:ありません。私は麻雀ができないので。Q 飲食をともにしたことは?
次席:それはあります。Q 捜査とかには影響しませんか?
次席:親しい人と飲食をした時に、その人の職業が記者だった、ということです。Q たまたま、ということですか?
次席:はい。Q 事件の取材をする記者とは、とくに飲食していないと?
次席:たまたまそういう立場の人だった、というのもあり得ることです。
筆者はこのほか、感染症対策として不必要な身柄拘束を控える考え方について尋ね、山口次席が「従前から必要な範囲で勾留請求を行なっている」などと答えている。同日は北海道司法記者クラブ加盟社の記者も4人参加していたが、加盟記者から黒川の問題に関する質問は一度もなく、質疑応答に参加したのは非加盟の筆者のみだった。
(小笠原淳)
【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 北方ジャーナル→こちらから |