新型コロナウイルスが猛威を振るい感染症病床の不足が懸念される状況となる中、福岡県が、感染者を入院させるための病床の確保を怠り、患者数が指医療療療機関のベッド数を上回る事態に陥っている事が分かった。
小川県政の危機管理能力に疑念を生じさせる事態で、県民から批判の声が上がりそうだ。
■「検討を行った」「準備を進めています」は怠慢の証明
HUNTERが福岡県内の感染症病床の少なさに警鐘を鳴らしたのは2月19日。《【新型コロナ】感染症指定医療機関 福岡市内「病床数8」の危ない実態 全県で66床 脆弱さ露呈》の中で
・県内の病床数は66床しかなく脆弱な体制であること
・福岡市に至っては、3施設で8床という「危ない実態」(市内の医療関係者)であること
を明らかに、県の態勢に警鐘を鳴らしていた。
この折、“新型コロナウイルスの感染者が出た場合、現在の感染症指定医療機関の病床数で対応できるのか”と記者に問われた県の担当課は、県内に87施設ある「新型インフルエンザ協力医療機関に協力を求めるから大丈夫」だとして、危機感を欠いた回答を返してきていた。
しかし、県がこの段階から感染者が急激に増え始めた3月中旬頃まで、病床数の確保に力を入れてこなかったことは明らかだ。
先月30日の会見で、“指定感染症医療機関の病床数に限りがある中で、医療体制の整備が課題になると思いますが、今後どのように取り組むのか”と聞かれた小川知事は、次のように答えている。
将来に備えるという意味で、週末の28日に、医療関係団体、大学病院、感染症の指定医療機関、それから各専門医による協議会を開き、今後の医療体制の整備について検討を行ったところです。
具体的には、今持っている感染症の病床数を超える感染者が発生した場合、感染症指定医療機関の一般病床、それから今までの新型インフルエンザの入院の協力医療機関で感染者を受け入れること。それから、重症の患者さんや透析等を必要とする患者さんを受け入れる医療機関についてあらかじめ決めておこうということで、話し合いを進めており、現在、具体的な準備を進めています。
つまり福岡県は、先週末になって、ようやく病床確保に動き出したということだ。『遅い!』
という批判に、言い返す言葉はないだろう。事態は既に、「これから検討」という時期をはるかに過ぎているからだ。
下は、新型コロナウイルス感染者に対応する第2種感染症指定医療機関の一覧表。前述したように、福岡県内では、第1種感染症指定医療機関となっている福岡東医療センターが保有する2つのベッドを加え、感染症病床は66床しかない。福岡市に至っては、たったの8床だ。
一方、4月1日現在、県内の感染者数は78人(県発表)で、そのうち福岡市が28人。すでに福岡市の病床数も、県全体の病床数も足りなくなっている。これでは県民の安心・安全は守れまい。
今頃になってベッドが足りないでは、行政の怠慢。県感染症対策課に現在確保できている病床数を改めて尋ねたところ「日々お願いをしている状況だが、公表できる数はない。カウントはしていない」という無責任な答えだった。不作為が招いた病床不足のツケは、確実に県民に回ることになる。
福岡市内の医療機関関係者は、「コロナ感染者の受け入れ要請が来ても、ゴーグルや防護服など感染症対策が整わないため受け入れできない。通常の診察にも支障が出るため、断らざるを得ない」と話す。
院内感染のリスクやコロナ感染者の受け入れによって、他の来院者が減ることを避けたいというのが本音だろう。予想される感染者数に対応可能な病床を、県や福岡市は確保できるのか――。ここから、知事や市長の力量が問われる。
小川県政には、2月の配信記事で「医療現場の実情を把握した上で、新たな感染症に即応できる体制づくりを行ってもらいたい」と提言した。ネットメディアのたわごととバカにされたのだとすれば、残念でならない。