衆・参補選、自民苦戦で動揺広がる

「このままでは年内の解散総選挙はない、いやできないだろう」と話すのは、岸田派の国会議員。スマートフォンの画面に浮かび上がっていたのは、今月22日に投開票される参院徳島・高知選挙区補欠選挙の情勢調査の結果だ。

◇   ◇   ◇

高野光二郎前参院議員が秘書への暴行で辞職したことを受けて行われている同選挙区の補選。自民党は前高知県議の西内健氏、野党は衆院議員や参院議員を経験している広田一氏が無所属で出馬し、事実上の一騎打ちとなっている。

同党が9月16日から18日にかけて行った情勢調査では西内氏29.8%に対し広田氏35.0%、23日から24日にかけての調査では西内氏30.6%広田氏38.4%という数字。立憲民主党の調査結果(実数)は西内氏588、広田氏674だった。いずれの調査結果も広田氏が、西内氏よりも優勢であることを示している。

同選挙区は合区によって徳島県と高知県が一つになった特殊なケース。高知県議だった西内氏はもちろんだが、広田氏も衆院議員時代は高知2区が地元だった。自民党の高知県連幹部がこうぼやく。
「候補者が高知ばかりで、まるで以前の高知県選挙区のようになっている。高知県は盛り上がっているが、徳島県ではまったく関心がない」

選挙の告示日、自民党は茂木敏允幹事長が高知入りして西内氏とともに支持を訴えた。一方、徳島では悪名高い「ドリル優子」こと小渕優子選対委員長が、候補者がいない中、選挙の責任者としてでマイクを握ったが、お寒い状況だったという。

「初日なので党本部から何か要請があるかと思ったが、動員の声はかからず。仕方なく様子だけ見に行ったら、先に広田さん本人が演説しており、あちらはけっこうな盛り上がり。その後、こちらには小渕選対委員長がやってきたが、30人ほどが見ているだけで、肝心の西内さんがいない。ドリル優子の人気のなさなのか、最後までガラガラでしたね。今後の選挙戦の展開を如実に示すような初日だった」(自民党の徳島県議)

自民党の徳島県連は、高野氏が辞職する見込みとなった時点で候補者の選定に動いた。幹事長の嘉見博之県議が推したのは前徳島県知事の飯泉嘉門氏。徳島県知事5期20年で実績は十分だが、徳島県は人口減が続き何ら変わり映えせず、今年春の選挙では、後藤田正純氏に大差で敗れたばかりだった。嘉見県議の「飯泉氏推し」に県連の大半が反旗を翻した。

そして、2021年の衆院選挙は野党系無所属として後藤田氏を破って徳島1区で当選した仁木博文衆議院議員が自民党入りの意向を打ち出した。「徳島県内の政治ニュースが、仁木氏の自民党入りに注目が集まり参院補選にはまったく目が向かなくなった。おまけに、県連はバラバラで一致結束していた高知県連が動いて西内氏に候補者が決まっていた」(前出・自民党の徳島県議)

県別でみると、保守王国の徳島県では西内氏が広田氏をリードするという結果が出ており、これは自民、立憲両党の調査結果で同じ傾向だ。しかし、高知県で広田氏が断然リードという情勢のため、全体になると西内氏苦戦という格好になる。前出の自民党高知県連幹部も悲観的だ。
「広田さんは高知県で衆議院選挙に加えて参議院議員でも当選した実績があり、個人的な人気、知名度があります。ここから逆転するには、高知県での挽回も必要ですが正直厳しい。徳島県で圧倒する票が欲しいところですが、すっかりしらけているので、西内氏が勝てそうな展望は見えてこない」

10月10日には、衆院長崎4区の補選が告示された。こちらも自民党と立憲民主党の激突となりそうだ。2つの国政選挙とあって、その結果は解散総選挙に向けた岸田文雄首相の決断に大きな影響を与えるとみられている。

「長崎の選挙も正直、厳しい。理由は公認の金子容三候補が、“世襲の3代目”という弱点を徹底的に批判されているから。補選で二つとも勝てば年内に解散総選挙、早ければ11月末に投開票だと党内では言われていますが、一つでも負ければ年内の解散総選挙は少し遠のく。二つとも負ければ、解散総選挙はかなり先になると思いますね。衆参の補選は、自民党と野党のガチンコ勝負。その結果が今の国民の民意だと考えれば、岸田総理も慎重にならざるを得ません。それに、岸田政権の支持率も落ち込み、回復の兆しがありませんからね」(自民党幹部)

解散総選挙へ風雲急を告げる永田町。公認候補苦戦の状況に、自民党内の動揺が広がっている。

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