熱海土石流、民事・刑事で責任追及へ

今年7月に静岡県熱海市で発生した土石流災害では、26人が死亡し、今も1人が行方不明だ。多数の市民が住まいを、仕事を失った。

被災者や遺族らは9月28日、土石流の起点となった土地を現在所有する麦島善光氏や、前所有者の新幹線ビルディング・天野二三男氏など個人、法人に対して32億円あまりを求める民事訴訟を静岡地裁沼津支部に起こしている。

また、遺族らは麦島氏を重過失致死、天野氏を業務上過失致死傷で刑事告訴をしており、静岡県警が受理し、捜査が始まっている。

■訴状が示した土石流の原因

ハンターではこれまで、麦島氏と天野氏の問題を指摘してきた。提起された訴状などからも、2人の法秩序を無視した非道な対応が明らかになっている。

刑事事件の告訴状によれば、土石流の原因は天野氏と麦島氏が行った盛り土。その対策が不十分で、前代未聞の土石流を引き起こしたとしている――《土石流として流下した黒色の土砂は、地山の土質とは異なり他所から搬入された盛り土と推測》――盛り土が土石流の原因だという明確な指摘だ。

静岡県副知事も、記者会見で同様の見解を示している――「土地に設置された盛り土に適切な排水工、擁壁が設置されておらず土砂崩壊の危険性があり、土砂崩壊の二次災害防止の安全対策工事が必要であることを認識していた。(中略)盛り土のやり直し、適切な排水工を設置するなど未然に防止すべき注意義務があったのに、これを怠り、漫然と放置した過失」――その上で知事は、盛り土が土石流につながったと結論付け、「人災」ともいえると訴えている。

盛り土については、2006年9月に前所有者の天野氏が経営していた新幹線ビルディング社が土地を取得。土砂採取の計画書が県に提出された。その後、天野氏側が土地を拡大して開発していることが分かり、静岡県が是正を求めていた。2010年になって、搬入された土に木くずなどが混入していたことが判明。熱海市が、天野氏側に盛り土を中止するように要請したという。直後の2011年、天野氏は責任を逃れるかのように麦島氏に土地を売り渡していた。

訴状には、天野氏側が「熱海市の土砂搬入中止要請を無視して当初の届出を大幅に超える量の盛り土を行ったか、譲り受けた麦島氏において、5万4,000立方メートルに至るまでの盛り土を行ったことが推測される」として、天野氏や麦島氏が盛り土を行ったことが明記されている。

当初、静岡県の会見や一連の報道では、盛り土を行ったのは天野氏という見立てがほとんどだった。しかし、民事訴訟の訴状では「2021年6月、麦島が本件盛り土南西側の隣接地付近で土砂を処分しており、(熱海)市職員がこれを確認し、麦島側に口頭で直接注意」し「本件盛り土付近で土石流発生直前まで違法な土砂投棄を続けていた」と事実関係を明らかにしている。

要するに、もともと天野氏が静岡県や熱海市の指導を無視して盛り土をしていた土地に、購入した麦島氏がさらに違法に土砂投棄したことで、不適切な状態であった盛り土がさらに危険性を増し、土石流につながったということだ。

■「盛り土知らない」は噓だった

この点について麦島氏側は、土石流発生当初、大きな嘘をついている。2013年、静岡県に提出された書面にはこう書かれていた。
《前土地所有者(天野氏)が熱海市建設指導課指導を無視して放置した伊豆山漁港及び逢初川下流水域への土砂崩壊による二次災害防止の安全対策工事を施工する》

つまり、盛り土の事実のみならず、危険性があり是正工事が必要であることまで把握していたということだが、麦島氏の代理人弁護士はマスコミ取材に「盛り土は知らなかった」と答えていた。

民事訴訟で原告となった住民の一人は悔しそうに語る。
「土石流から2か月が経過して、だんだんと原因究明が進んできた。素人ながら調べた結果、ハッキリしたのは天野氏、麦島氏が危険性を認識し、なんらかの手を打つと約束していたにもかかわらず放置してきたということです。訴状の罪名は違いますが、被害者から見れば殺人に匹敵する犯罪だ。当局には、厳正に捜査してしっかりと立件してほしい」

土石流を引き起こす原因を作ったとみられている天野氏も麦島氏も、謝罪の意思すら示していない。司法の場で、2人の責任が明確になることを祈るばかりだ。

 

 

この記事をSNSでシェアする

関連記事

注目したい記事

  1. 鹿児島市内の公立小・中学校に通っていた3人の子供たちが、いじめ防止対策推進法が規定した「重大事態」に…
  2. 腐敗した鹿児島県教育界の隠蔽体質が、数々の“いじめ”を放置し、被害を拡大する原因になっていた。 …
  3. 衆議院議員総選挙の投開票まで1週間、九州各地でも激戦が展開されているが、注目されるのは「候補者調整」…
  4. 滋賀県大津市の中学校でいじめを受けていた2年生の男子生徒が自殺してから10年。2013年には、その事…
  5. 衆議院議員選挙期間中の22日、就任まもない岸田文雄総理大臣が北海道を訪れ、道内各地で与党系候補の応援…




最新の記事

  1. 鹿児島市内の公立小・中学校に通っていた3人の子供たちが、いじめ防止対策推進法が規定した「重大事態」に…
  2. 腐敗した鹿児島県教育界の隠蔽体質が、数々の“いじめ”を放置し、被害を拡大する原因になっていた。 …
  3. 衆議院議員総選挙の投開票まで1週間、九州各地でも激戦が展開されているが、注目されるのは「候補者調整」…

ページ上部へ戻る