自民党とヤクザの接点(下)|福岡で相次ぐマル暴企業の事件

人や地域社会の安心・安全を守るのが政治家なら、それを脅かす存在が暴力団――。本来、対極にあるべき両者だが、戦前からいまに至るまで“汚れたつき合い”は亡くならない。特に保守政治家とヤクザ・右翼の関係は歴史的なもので、かつては組幹部が地方議会の議員として権勢をほしいままにするケースさえあった。

暴対法の成立以降、さすがに直接的なつながりを持てなくなったせいか、政治家が付き合うのはマル暴のフロント企業や親交者。これも歴史的な流れなのだが、フロントや親交者の多くが「土建屋」である。福岡県の事例を確認しておきたい。

■耐震補強・手抜き業者「大島産業」の暴力体質

大樹総研を接点にした滉王と政治家の関係に注目が集まる中(参照記事⇒「自民党とヤクザの接点(上)|菅政権のフィクサーはマル暴企業の顧問」、政・業癒着が公共工事を歪め、国民の安心・安全を脅かすという、とんでもない“事件”が発覚した。

中日本高速道路(NEXCO中日本)が発注した跨道橋(こどうきょう)の耐震補強工事で、受注者の「大島産業」(福岡県宗像市)が、指定された鉄筋を入れずに手抜き工事を行っていたというもの。大惨事を招きかねない事態の裏で、福岡4区選出の国会議員がNEXCO中日本に圧力かけてもみ消しを図った疑いも浮上しており、政権の足もとを揺るがす事態となっている。

大島産業は、過去にヤクザまがいの暴力的な社内体質が問題になった会社。暴力団との関係を指摘する関係者もいることから、事件の拡大が懸念される状況だ。ここでもチラつく「暴力」と政治家の関係――。ある元暴力団幹部は、苦笑交じりにこう話す。
「昔の福岡では、ヤクザ者と政治家の区別がなかった。背中に彫り物(入れ墨)をしょった議員さんなんて、ざらにおったわけよ。港湾や土木には、ヤクザのしのぎがかかっていて、関係が深い。言うならば、福岡の政・官・業の、業はヤクザ。まあ、フロントというんかねぇ。暴対法やらなにやらで厳しい世の中になったせいで、足を洗った形で、土建屋が本業になった連中は少なくない。その連中、本質はヤクザやけん時々地が出る。現役の組関係者との付き合いもなくならない。しかし、荒っぽいけど、カネ離れはいい。政治家に裏金渡しても、罪悪感がない。カネを渡せば付き合いが深まり、政治家は言うことをきかざるを得なくなる。それがヤクザのやり方。一度はまると、抜けられんとやね」

■県連会長や麻生副総理側に渡った黒いカネ

取材に応じた元組幹部の話を裏付けるような事案は、指定暴力団の本拠がある久留米でも起きている。

今年7月、福岡県警は、久留米市に本社を置く建設会社「メンテック」の実質経営者で、昨年6月に朝倉市の復旧事業にからんだ贈収賄事件で役員が逮捕された「九州防水」の社長を、県の出先である久留米県土整備事務所に虚偽の貸借対照表を提出したとして建設業法違反の疑いで逮捕した(その後、罰金刑に)。一連の事件を引き起こした九州防水グループ(現在はキューボウグループ)の代表は、地元のヤクザ組織との関係で知られた人物。ハンターが注目したのは、同グループの代表と自民党議員の「切っても切れない関係」(久留米市の選挙関係者)だった。

九州防水グループの代表者は、自民党福岡県連会長を務める原口剣生県議の選対本部長。県議会議員選挙の際には、その人物が選挙事務所を仕切っており、カネのつながりがあることも分かっている。

原口県連会長が代表を務める政党支部「自由民主党福岡県久留米市第二支部」が福岡県選挙管理委員会に提出した2017(平成29年)年分の政治資金収支報告書によれば、九州防水は同年10月、60万円を同支部に献金していた。

九州防水グループの代表者は、麻生太郎副総理が代表を務める「自由民主党福岡県第八選挙区支部」にも献金していた。同支部が県選管に提出した政治資金収支報告書によれば、九州防水グループの代表者は、2017(平成29年)年10月に、個人で10万円を同支部に献金していた。黒いカネが、県連会長や副総理に流れていたことは紛れもない事実である。

■ヤクザと自民党の歴史

自民党の裏面史には何人ものヤクザや右翼が登場する。いずれも、その世界では「大物」として名の知れた人たちだ。新たな日米安全保障条約が締結された1960年(昭和35年)には、予定されていた米国のアイゼンハワー大統領来日に備えて、岸信介政権下の自民党が「アイク歓迎実行委員会」を組織。博徒、テキ屋、右翼ら数万人を動員して大統領の来日に反対する左派勢力に対抗した。

鳩山一郎が率いた自民党の前身「日本自由党」の結党資金を提供したのが、戦前・戦中に大陸で特務機関を操っていた児玉誉士夫だったことは、戦後政治史の中で語られてきた事実。アイク歓迎実行委員会と裏社会の人間たちの橋渡しをしたのは、のちにロッキード事件で表舞台で引っ張り出されることになる児玉だった。

世の中で暴力団追放の機運が強まるに従い、政治家とヤクザの表立った関係は減っていったが、それでも昭和50年代までは、国会議員が刑務所に入ったヤクザの幹部のため“面会”に行くことがあった。今では考えられないことだが、国会議員の面会を受けた組員には箔が付くため、組側が議員に面会の依頼を行っていたのだ。福岡県選出の政治家も例外ではなく、当時の参議院議員や衆議院議員が、平然と受刑中の組員に面会に行っていた。

国会議員がヤクザの箔つけに協力していた理由は一つ。政治家とマル暴が、ウインウインの関係だったからに他ならない。それほど自民党の政治家と暴力団は、親しい関係にあったということだ。

ここまで述べてきた通り、自民党の政治家が直接手を組む相手は「不良土建屋」を中心とするフロント企業や親交者に変わったが、マル暴との関係は立ち切れていないとみるべきだろう。



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