【2020鹿児島知事選】現実味帯びる「再選挙」

今月25日告示の鹿児島県知事選挙で、「再選挙」への懸念が広がっている。

知事選には、現職で2期目を目指す三反園訓氏をはじめ、前九州経済産業局長の塩田康一氏(54)、前知事の伊藤祐一郎氏(72)、元鹿児島大特任助教の有川博幸氏(61)、内科医の横山富美子氏(73)、元民放アナウンサーの青木隆子氏(57)、元高校教諭の武田信弘氏(66)など7人が立候補を表明しており、希に見る大乱戦。普通なら投票率が上がる構図だ。

しかし、新型コロナウイルスの影響で事前の活動が制限されてきたことから、候補者増の割には盛り上がりに欠ける前哨戦となっている。

■マイナス材料ばかりの現職陣営

低調に拍車をかけているのが現職・三反園氏の不人気。2016年の知事選で反原発派と「政策合意」を結び、共産党を含む野党陣営の支援を受けて初当選した三反園氏が、今度は敵対した自民党と公明党にすり寄り、推薦をもらって2期目を狙うというのだから、県民が呆れるのは当然だろう。

自民党の推薦を得た後も、三反園氏の周辺ではトラブルばかりが目立っている。

新型コロナの感染拡大を受け政府が緊急事態宣言を発令する中、県境を越える移動の自粛を訴えていた三反園知事本人が、5月9日に行われた自身の事務所開きに東京から自民党県連の森山裕国会対策委員長と野村哲郎参議院議員を招いていたことが報道され、県民の猛反発を受けることに――。知事は、「案内は出したが、呼んでいない」などと意味不明の言い訳でごまかした。

さらに、自民党鹿児島県支部連合会(会長:森山裕国会対策委員長。以下、県連)が三反園氏を支援するよう所属県議37名に要請した際、茶封筒に入れた現金30万円を渡していたことが発覚。県連幹部が県内在住の男性から刑事告発されるという事態に発展した。

三反園氏自身の理解できない動きにも批判が集まっている。現職知事でありながら、民間主催で計画された立候補予定者討論会は、すべて不参加。報道各社が、各候補の政策や政治信条を有権者に伝えるため事前に用意する「候補者アンケート」にも、一切答えないのだという。前代未聞。自分のマニフェストだけを一方的に県民に押し付ける姿勢には、三反園陣営の中からも疑問の声が上がっているという。

■支持20ポイント台の現実

マイナスばかりの現職陣営。当然支持率は下がる。今月初旬から中旬にかけて、ハンターや地元メディアが行った情勢調査によれば、三反園氏を支持するとする有権者の数はいずれも20ポイント台。先月まで30ポイント台後半だった数字が急落している。

21日には、三反園氏が複数の自治体首長に、事業予算を盾に集票を迫る電話をしたことを地元紙「南日本新聞」が報道。公選法が禁じる「公務員の地位利用」と「事前運動」の疑いが浮上し、知事本人が刑事告発されかねない状況となった。

現職支持の数字が20ポイント台の前半まで下がるとどうなるか――。囁かれ出したのが「再選挙」への懸念である。公職選挙法が、地方自治体の首長選挙で当選人の確定に必要な得票を《有効投票の総数の四分の一以上》と定めているからだ。

仮に三反園氏がトップの得票を得たとしても、有効投票数の25%未満なら「当選」とはならず、再選挙になる。

下に2008年、12年、16年の選挙構図と投票率をまとめたが、今回の知事選は構図が大きく変わっている。(*下の表、太字が当選者)

周知の通り、知事選に立候補を表明しているのは三反園氏を含めて7人。情勢調査の結果では、反三反園の立場で立候補する6人に、支持が割れているのが現状だ。特に、前職・伊藤氏と塩田氏が抜きんでており、二人合わせれば三反園氏のポイントを上回る。

首長への恫喝がたたって三反園氏を支持する有権者はさらに減ったとみられており、現職陣営の頼みは自民党の組織力だけ。しかし、その自民党の中が割れており、隠れ離反者が相次ぐ状況なのだという。森山県連会長の周辺だけが、躍起になって支持拡大に圧力をかけているが、電話で「三反園を支援しろ」と言われた方は、「はい分かりました」と答えて、舌を出しているケースがほとんどらしい。「再選挙」が、現実味を増しているのは確かである。

鹿児島県選挙管理委員会によれば、知事選投開票(7月12日)後に開かれる「選挙会」は7月15日。仮に《有効投票の総数の四分の一以上》の得票を得る候補者が出なかった場合、そこから14日間が「異議申出期間」となり、以後50日以内に再選挙が行われることになるという。

23日、自民党本部で安倍晋三総裁から推薦状を受け取った三反園氏の足は、ガクガクと震えていたという。再選挙への恐怖か、はたまた武者震いか……。

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