【熱海土石流】盛り土業者「新幹線ビルディング」代表の素顔

静岡県熱海市伊豆山で起きた土石流から2週間が過ぎた。死者15人、行方不明者14人となっており、いまも捜索活動が続く。依然として500人を超える住民が避難している状況だ。

土石流の起点となった盛り土の土地を所有していた人物が、建設・不動産会社などを傘下に置く「ZENホールディングス」の創業者・麦島善光氏であることは、報じてきた通りである。

麦島氏の弁護士は「(問題の土地が)盛り土とは知らずに購入した」と述べており、静岡県も麦島氏が購入する前に盛り土がされていたことを認めている。

■盛り土は届出の3倍

不動産登記簿を確認してみると、盛り土を行った業者は「新幹線ビルディング」(本社・神奈川県小田原市)。土石流の起点となった一帯を開発していたのも、この会社だ。

静岡県の調べによれば、同社は2007年、条例に基づき高さ15メートルで約3.6万立方メートルを盛る計画であることを熱海市に届出する。しかし同社は23年1月に、申請の2倍以上となる35メートル以上、約7万㎥を盛っていたことが分かっている。うち5万㎥以上が、今回の土石流となった。

同社の盛り土は、熱海市議会でも問題になった。2007年7月、台風4号の暴風雨で今回の土石流の起点となった地域で土砂崩れがあった。熱海市の担当者はこの時、次のように答弁していた。

「これは、伊豆山地区の七尾団地奥にある広大な山林地の図面でございます。現在の土地所有者は、新幹線ビルディング株式会社が所有しまして、宅地分譲開発を行っている敷地内に市の水道施設の調圧槽がございます。水色で書いてございますけども。その西側背面の山林斜面地の赤色部分が崩壊をいたしまして、調圧槽の一部が土砂と流木により埋没したものでございます。土地所有者には、土砂、流木の排除対応処理についてすぐにですね、お願い文書を出してありますが、よい返事はなく、いまだに動きがございません

ある市議が、復旧工事について“土砂災害の土地所有者がすぐに行動しない向こう側の言い分は何ですか”、“土地所有者側がやろうとしない理由は?”と畳みかけると、市側はこう答えている。

「新幹線ビルディングそのものがですね、同和系列の会社でございまして、ちょっと普通の民間会社と違いますので、その辺でそういうふうな回答が来たんだというふうに考えております」

つまり熱海市は、「同和系列の会社」ということに腰が引け、毅然とした態度で対応していなかったということだ。

2009年6月の熱海市議会でも、新幹線ビルディングの造成・盛り土工事について質疑が行われていた。

市議:現実的に本当に災害とか何かの心配がありますし、あの辺の環境問題、実際問題、近隣のところに例えば宝泉寺なんかにすごい迷惑かけているのですよ。土砂が何回も流れ込んで、建設部長さんなんかは、自分が言って、それ市に言って、夜中の11時とか何かに現場にも一応来ていただいたことがあるでしょうけれども、自分は大雨が降れば、何回も夜、近隣の人がもうあふれそうたということで、自分は何回も行っているのですよ。だから、そういう悪徳業者がいるのですから、そういうのもやっぱり何らかの、一般論ではなくて、現実論で対応していただきたいと思います。

熱海市:今の朝の時間帯の話ですが、今赤井谷という場所に確かに土を入れています。これは、平成19年4月に一応土採取条例というものに基づいて谷に土を入れたいというものでそういった行為で今入れ始めているところです。これにつきましては、新幹線(ビルディング)直営でなくて、新幹線がいろんな金の絡みで、ある別の会社にそういった自分の土地に入れるというようなことをやらせて今やっているのですけれども、そのやっている会社の人間はある程度土木の専門技術もあって、先日も地元説明会等また開きまして、作業について説明してやっています。

赤井谷は、まさに今回の同席流の起点となった場所だ。10年以上も前から危険性や、盛り土を行った会社の問題点が指摘されていた。

では、新幹線ビルディングの代表者は、どんな人物なのか?ハンターでは、土地の所有者である麦島氏の「脱税の過去」などを報じてきたが、新幹線ビルディンの代表・天野二三男氏も何度か警察のやっかいになっていたことが分かっている。2000年1月24日の静岡新聞の記事から。

破たんのログハウス村で債権回収を妨害 容疑の右翼代表ら3人を逮捕

御殿場署経営破たんした会社の債務整理に介入し、債権者の債権回収を組織的に妨害していたとして御殿場署と県警暴対二課、警備課は二十四日、強制執行妨害、公正証書原本不実記載・同行使の疑いで神奈川県小田原市鴨宮、会社役員天野二三男(49)、同市、会社役員、「政治結社大日本光雄塾塾頭」太田光男(53)、田方郡函南町、会社員花島善一郎(47)の三容疑者を逮捕した。

調べによると、天野容疑者らは経営破たんした御殿場市神場の株式会社「御殿場高原ログハウス村」の債務整理に介入し、強制執行を免れる目的で平成十年十二月ごろ、同社と連帯保証人の飲食店や居宅、賃貸アパート建物などの不動産について、信託や売買など虚偽の所有権移転登記を申請し、不動産登記簿に不実記載するなどした疑い。抵当権設定以前に賃貸借契約や所有権移転契約をしたように装い、民事執行手続きを妨害していたとみられる。>

この事件では、天野氏の有罪判決が確定しているが、それでも懲りなかったらしく、2009年に再び新聞の紙面を賑わせていた。次は、11月28日の読売新聞の記事。

違法風俗店と知りながら賃貸容疑 不動産会社社長を逮捕 容疑否認=神奈川

県警生活保安課は27日、小田原市城山、不動産賃貸会社社長天野二三男容疑者(59)を組織犯罪処罰法違反(犯罪収益等収受)容疑で逮捕した。発表によると、天野容疑者は昨年5月から今年5月、売春を周旋している違法なデリバリーヘルス(派遣型風俗店)業者と知りながら、小田原駅前のビル1室を通常家賃に2万円上乗せした月12万円で事務所として貸し、業者の違法収益計156万円を受け取った疑い>

天野氏を知る地元の関係者は、こう振り返る。
「盛り土と言いますが『神奈川県より静岡県の方が処分費用が安い』との理由で当時、どんどん熱海市に運んでいた。コンクリートがら、ごみなどの産廃も混じっていたんですが『大丈夫、みつからない』などと言っていました」

コンプライアンス意識が欠如した天野氏から、これまた同じタイプの麦島氏に広大な土地が売却され、今回の悲劇になってしまったということか。

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