【独自入手】久留米商工会議所・会頭選挙の「怪文書」(上)|現職支持派の幼稚な主張

 昨年11月、福岡県の久留米商工会議所で会頭選挙が実施され、現職の本村康人氏(75)が6選を決めた。3人の候補者で争われた会頭選挙は、一回目の投票で過半数を制する候補がなく、筑邦銀行の佐藤清一郎頭取と本村氏による決選投票に――。3回目まで同数という異例の展開をみせた末、最後に5票差でようやく決着がつくという緊迫した状況だった。

 地場銀行の頭取とはいえ、佐藤氏は数か月前に商工会議所の議員になったばかり。他の会議所関係者と縁が深いとはいえない同氏がベテラン会頭の本村氏を追い詰めたのは、現在の久留米商工会議所の運営実態に危機感を抱く関係者が数多くいるからに他ならない。明確にしておきたいのは、現在の久留米商工会議所が明らかなブラック組織であるということ。その証拠に、会頭選挙の裏で、現職支持者とみられる関係者によって「怪文書」がばら撒かれるという卑劣な動きがあった。ハンターが、複数の関係者から問題の怪文書を入手した。

■怪文書第1号は的外れの報道批判

 久留米商工会議所の会頭選挙が行われたのは昨年11月1日。投票権を持っているのは、会議所の議員が所属する市内の企業計100社で構成される「議員総会」のメンバーである。その議員総会に参加する予定の企業に対し、10月初旬と20日過ぎの2回、FAXで「怪文書」が送付されてきたという。発信元は、商工会議所の近くにある「セブンイレブン」。ハンターは、2種類の怪文書を、別々の関係者から入手した。

 連載の初めは、10月6日付「西日本新聞掲載記事の見解等について」と題する文書についてである。

(*以下の書き写し文で、問題があると判断した個所は赤字で表記した)

 久留米商工会議所 議員各位

西日本新聞掲載記事の見解等について

 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

 さて、来る11月1日における臨時議員総会で会頭選任が行われる運びとなっておりますが、このところ一部マスコミで、記事や取材が偏っているとの印象を与えるような報道がなされており、私どもとしても看過できない事態だと重視しております。このため久留米商工会議所の心ある幹部達が集まり協議した結果、議員の皆様へこの会頭選任方法の実態や見解を適宜、お伝えすることにしました。可能な限り正確な情報や動向をお伝えできるよう努力してまいる所存ですので、ご理解の程よろしくお願いいたします。

 10月1日時点での会頭選任をめぐる動きとしては、皆様のご承知のように、「西日本新聞で筑邦銀行頭取の佐藤清一郎氏が立候補の意向を固めた」と報じられました。しかし、私どもとしては佐藤氏から会議所活動の中で直接何らの意思表明がないことから、会頭選任に手を挙げた人物は、去就を明らかにしていない本村康人現会頭をはじめ誰もおられないとの認識でありました。しかし、急遽10月5日に文書で立候補表明がありました。西日本新聞は「123年目の激震」と題する上下二回の連載記事を10月1日と10月2日に掲載しました。この連載はあたかも当所の会頭選任に不穏な空気が生まれているような、加えて議員や会員企業の不安と亀裂をあおるような内容だと指摘せざるをえません。

 記事内容をつぶさに検討しますと、底流にあるのは会頭選任が久留米市長選に端を発した政争の具にされている構図が浮かび上がっています。そもそも会頭選任は定款では選挙を実施するとは規定されていません。また、「選挙に必要な手続きについて、規約に明記すらされていない」と書かれていますが、福岡商工会議所、北九商工会議所をはじめ、ほとんどの県内商工会議所においても会頭等の選任規約を設けているところはございません。議員さん方の話し合いで決まるのが慣例でした。新聞では盛んに「会頭選挙」という文字が踊っていますが、基本のところから誤解があるようです。政治の場の選挙と地域経済の核になる商工会議所会頭選任を同じレベルで扱う記者の感覚に驚いています。「選挙」の文言を使用する1号議員選挙と会頭選任を混同している印象です。次期会頭の選任は政治色を排し、会議所活動に精通し、激動の時代を乗り切れる人物に会議所運営を託したいと望んでいます。議員の皆さんにはあおり立てるような新聞紙面に引きずられることなく、冷静な視点から会頭選任に対処されますようお願いします。

 西日本新聞の連載の冒頭で、会員企業あてに1号議員選挙の投票券の委任状(以下、「委任状」という)を集めている実態が紹介されています。皆さんはすでにどの金融機関の役職員が動いているかご存じだと思います。委任状を集めるにあたって金融機関が組織的に実行しているとの証言を私どもも複数の会員企業から得ています。それらの会員企業は、支持を集めるための優越的な地位を乱用した金融機関からの露骨な圧力だと憤慨していました。地域の金融機関が地域の分断を自ら計るような行動をとることが、我々の郷土・久留米の将来に深い傷を負わせる可能性があることを何とも思わないのでしょうか。公共性の強いその企業のコンプライアンスに抵触するのではないかと逆に心配になります。

 このような、一部マスコミの偏っているとの印象を与えている報道は、明らかに報道の名を借りた本村会頭への個人攻撃ではないか、と指摘する声が会員企業の経営者から多く聞こえ始めました。会員企業の大方の見方ではないでしょうか。背景は想像できますが、こうした報道は日本新聞協会の新聞倫理綱領から逸脱したものになる恐れがあるのではないでしょうか。果たして報道する側にそうした倫理観はあるのでしょうか。会頭選任について報道する自由は当然ありますが、新聞倫理綱領にある「公正な報道」の項目をよく読んで記事を書いてもらいたいものです。

令和4年10月6日

久留米商工会議所議員 同志一同

 怪文書作成者の「久留米商工会議所議員 同志一同」は冒頭、一部マスコミが「記事や取材が偏っているとの印象を与えるような報道」を行っていると難癖をつける。その後の流れから一部マスコミが西日本新聞を指していると分かるのだが、ハンターと違って大手メディアの報道姿勢は弱腰がほとんど。石橋を叩いて、さらにコンクリで固めるような形でなければニュースにしないものだ。訴訟をはじめとするゴタゴタを嫌う腑抜けが増えたせいだが、久留米商工会議所の会頭選挙に関する西日本新聞の記事(主に筑後版)をチェックしてみたところ、記事が偏っているわけでは決してない。ハンターから見れば、むしろ大人し過ぎるほどの内容だった。

 怪文書の記述から、「記事や取材が偏っているとの印象」を受けたのが「久留米商工会議所の心ある幹部たち」であることは明らかで、彼らは「集まり協議した結果、議員の皆様へこの会頭選任方法の実態や見解を適宜、お伝えすることにしました」のだという。会議所の幹部がそろって怪文書を作成し、関係先にFAXしたというわけだ。

 「幹部」であることを明かしたのなら堂々と名乗ればいいものを、正体を隠したのは、自分たちの行為が後ろめたいものだと認識していたからに他なるまい。こういうやり方を世間では「卑怯」「卑劣」という。言うまでもないが、陰でコソコソ陰謀を巡らす連中にメディア攻撃をする資格などない。

■怪文書は小学生レベル

 内容は報道批判だが、よほど国語力のない人間が作成したものらしく、誤用やおかしな日本語ばかり。下にその一部を列挙する。

・誤:「このところ一部マスコミで」→ 正:“このところ、一部マスコミで”
・誤:「看過できない事態だと重視しております」→ 正:“看過できない事態だと考えております”
・誤:「会議所活動の中で直接何らの意思表明がないことから」→ 修正不能の駄文。言いがかりの典型。
・誤:「皆様ご承知のように」→ 正:“皆様ご承知のとおり”
・誤:「不安と亀裂をあおる」→ 正:“不安を招き、亀裂を入れる”あるいは“不安と亀裂を招く”
・誤:「底流にあるのは会頭選任が久留米市長選に端を発した政争の具にされている構図が浮かび上がっています」→ 「底流にあるのは~浮かび上がっています」では主語と述語がつながらない。底流にあった「会頭選任が久留米市長選に端を発した政争の具にされている構図」が「浮かび上がってきた」ということのようだが、作者は自分で書いた一文がおかしいということさえ分からない程度の人間だ。
・誤:「会頭選任は定款では選挙を実施するとは規定されていません」→ 正:“定款では、会頭選任の際に選挙を実施するとは規定されていません”
・誤:「地域の金融機関が地域の分断を自ら計るような行動」→ 正:「図る」

 ハッキリ言って、この文章は小学生レベル。とても商工会議所の「幹部」が書いたものとは思えない酷さだ。さらに問題なのは、主張に整合性がないこと。自分たちがやってきた間違いを棚に上げて、身勝手な主張を押し付けているのだから始末に負えない。次の記述である。

・「政治の場の選挙と地域経済の核になる商工会議所会頭選任を同じレベルで扱う記者の感覚に驚いています

・「次期会頭の選任は政治色を排し、会議所活動に精通し、激動の時代を乗り切れる人物に会議所運営を託したいと望んでいます

 怪文書にある「底流にあるのは会頭選任が久留米市長選に端と発した政争の具にされている構図が浮かび上がっています」、「政治の場の選挙と地域経済の核になる商工会議所会頭選任を同じレベルで扱う記者の感覚に驚いています」、「次期会頭の選任は政治色を排し、会議所活動に精通し、激動の時代を乗り切れる人物に会議所運営を託したいと望んでいます」に至っては、開いた口が塞がらない。

 そもそも、現在の本村体制に疑問符が付く発端となったのは、昨年1月に行われた久留米市長選挙の際、本村会頭ら商工会議所の執行部が、会議所の施設や組織を使って政治活動していたことを暴いたハンターの報道なのだ。(*以下、3本の配信記事参照)

・《久留米商工会議所政治組織に公選法違反の疑い|市長選告示前に「出陣式」の案内
・《久留米商工会議所に「商工会議所法」違反の疑い(上)|政治担当の専務理事は取材拒否
・《久留米商工会議所に「商工会議所法」違反の疑い(下)|政治活動の説明は虚偽

 久留米市長選で元県議会副議長を推した商工会議所は、その政治組織「日本商工連盟久留米地区」の名称を使って、事実上の選挙活動を展開。選挙向けの文書に、久留米商工会議所の代表電話やFAXの番号を使っていた。

 会議所側は「使用料をとっている」と釈明したが、会議所が政治団体に便宜供与していることに変わりはなく、ハンターは《商工会議所等は、特定の個人又は法人その他の団体の利益を目的として、その事業を行つてはならない》《商工会議所等は、これを特定の政党のために利用してはならない》と定めた商工会議所法の規定に反するものだとして厳しく批判する記事を配信していた。

 法令違反の疑いがあることを重くみた福岡県は、2度にわたって久留米商工会議所に立ち入り調査し、ハンターの報道内容を確認。その後、商工会議所法違反を指摘して異例の改善指導を行っていた。(*記事参照)

・《久留米商工会議所に県が異例の改善指導|会議所法違反の政治活動、国も疑い指摘

 怪文書を作成した会議所の「幹部たち」とやらは、「政治の場の選挙と地域経済の核になる商工会議所会頭選任を同じレベルで扱う記者の感覚に驚い」たという。しかし、「政治の場の選挙」に「地域経済の核になる商工会議所」を利用したのは、本村氏をはじめとする久留米商工会議所の幹部たち。そのことを棚に上げての新聞批判はお門違いというものだろう。身勝手もほどほどにしろと言いたい。

 次期会頭について、「政治色を排し、会議所活動に精通し、激動の時代を乗り切れる人物」がいいというのなら、真っ先に排除すべきは、市長選挙に会議所組織を使って商工会議所法違反を指摘されるという事態を招いた本村氏のはず。だが、本村氏の6選を許した会頭選挙の結果を見る限り、久留米商工会議所には自浄作用がなかったと言わざるを得ない。

 怪文書の最後で「会議所幹部の同志一同」は、会頭選挙を巡る報道を「明らかに報道の名を借りた本村会頭への個人攻撃」と非難する。だがこの連中、調子に乗ったのかバカなのか、怪文書第2号で今度は自分たちが、明白な名誉棄損にあたる「個人攻撃」を行っていた。(以下、次稿)

中願寺純則

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