久留米商工会議所に「商工会議所法」違反の疑い(上)|政治担当の専務理事は取材拒否

16日に告示された久留米市長選で、久留米商工会議所の政治組織が「事前運動」を行っていた問題に絡み、別の疑惑が浮上した。久留米商工会議所は、会議所の組織や運営について定めた「商工会議所法」の規定に反する行為を行っている可能性が極めて高い。2回に分けて詳細を報じる。

■「日本商工連盟久留米地区」と一体の久留米商工会議所

選挙運動にあたる「出陣式」の案内を関係者に送付して参加者を募ったことで、公職選挙法が禁じる「事前運動」の疑いを持たれている「日本商工連盟久留米地区」。商工会議所が政治活動を禁じられていることから設立された政治団体「日本商工連盟」(東京都)の支部にあたる組織だが、ハンターの取材で、実態は久留米商工会議所そのものである疑いが濃くなっている。

注目したのは、政治団体である日本商工連盟久留米地区が関係先に送付した、元県議会副議長の選挙イベントの案内文書。その中にある連絡先FAXの番号は、久留米商工会議所の代表FAXのものだった(18日既報 下の案内文書と商工会議所のHP参照)。

 久留米市長選の取材をする中、地元の商工業者から聞こえてくるのは「商工会議所は十中(大雅・元県議会副議長)支持」という声ばかり。“日本商工連盟久留米地区”とか“商工連盟”という組織名はまったく出てこない。関係者は、「商工会議所」が元県議会副議長を推しているという認識しかないのだ。記録に残った連絡先のFAXや電話の番号が会議所のものであるなら、なおさらだろう。

■「一体ではない」会議所事務局長は強弁するが・・・

事実関係を質そうと県庁職員から天下った政治組織担当の穴見英三専務理事あてに何度か電話するが、返りがない。18日、久留米商工会議所を訪問して専務理事に取材を申し入れたところ、記者の名刺を持って引っこんだ職員が戻ってきて「建物内にいるのですが、どちらにおられるか分かりません」――。居留守としか思えない対応に呆れるしかなかったが、「政治団体の基本的なことについて聞きたいだけだ」という申し入れに、久留米商工会議所の事務局長という人物が取材に応じた。

“政治団体の用件で商工会議所のFAXや電話を使うのはおかしくないか?”。記者の問いに事務局長が返してきたのは、びっくり仰天の言い分――「使用料をとりますから問題ありません」――だった。なんと、FAX1件ごとに使用料をもらうのだという。以下、事務局長と記者のやり取りである。

記者:1件につきいくらもらうのか?
事務局長:30円だったと思いますが……。

記者:送信した件数分のFAX代をもらうということか?
事務局長:そうです。

記者:すると、政治組織に収入と支出が生じるが?
事務局長:それは穴見が一人でやっていますから、私には分かりません。

記者:収入と支出があるから、電話の使用料がもらえる。そういうことでいいか。
事務局長:それはそうでしょう。

記者:実は、政治団体である日本商工連盟久留米地区の収支を見たことがあるという人が、少なくともこちらの取材先には一人もいない。収支の公開はするのか?
事務局長:穴見が一人で、すべてをやってますから。

記者:会議所の議員が政治組織の収支を見せるように求めたら、見せるのか?
事務局長:分かりません。

記者:見せるべきではないのか?
事務局長:穴見に聞いてください。

記者:昨日から連絡を待っていたが、返信がないからここに来ている。
事務局長:穴見に伝えます。

記者:ところで、久留米商工会議所と日本商工連盟久留米地区は別の組織だというのは建前で、じつは一体で活動しているのではないか?
事務局長:そんなことはありません。一体ではないです。

記者:しかし、政治団体に加盟していない企業にも、問題の出陣式の案内がわたっているが?
事務局長:そんなことは絶対にありません。

記者:ないと言い切れるのか?
事務局長:ありません。

久留米商工会議所と日本商工連盟久留米地区の活動は別個のものだと言い張る事務局長――。たしかに、彼の立場では、そう言い切るしかない。「商工会議所法」はその第4条で、次のように規定しているからだ。

この条文があるがゆえに、商工会議所として特定の政治家や政党を支援することはできない。つまり、政治団体と商工会議所の活動は区別すべきもの。法律上の決まりなのだ。ならば、政治団体の活動に商工会議所の電話を使うのは筋違いであり、活動実態の違法性を問われても仕方があるまい。会議所と商工連盟の動きは区別していると繰り返す事務局長だったが、この主張が真っ赤な嘘であることが、前後の取材で明らかになっている。詳細は、明日の配信記事で。

(つづく)

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