検察が不起訴処分とした北海道警察の元警察官による強制わいせつ事件で、処分の適正性を審査する検察審査会が「不起訴不当」の議決を出していたことがわかった。元警察官は道警在職中の一昨年6月から7月にかけ、同居する未成年の女児に対して性的虐待を繰り返し、同10月に書類送検されたが、昨年3月に不起訴処分となっていた。道警は事件を報道発表せず、元巡査長は送検の翌日に辞職していた。
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道警が作成した公文書や地元報道大手の情報などによると、元巡査長は事件当時20歳代で、札幌の警察本部に所属していた。性的虐待の被害者は元巡査長と同居していた10歳未満の女児で、親族から道警に相談が寄せられて事件が発覚したという。捜査にあたった道警は書類送検時の一昨年10月6日付で巡査長を「停職6カ月」の懲戒処分とし、当時の『処分説明書』に次のような処分理由を記した。
《被処分者は、被害者が13歳未満の者であることを知りながら、令和3年3月18日から同年7月15日までの間、複数回、同人にわいせつな行為をするように指示し、これに従わせたものである》
警察庁の『懲戒処分の発表の指針』では「停職以上の処分」は漏れなく公表することとされている。だが当時の道警は、事件・処分ともに報道発表しなかった。元巡査長は停職処分の翌日に辞職、事件を引き継いだ地元・札幌地方検察庁が在宅捜査を続けていたが、同地検は昨年3月8日付で元巡査長を不起訴処分とした。
検察審査会への審査申し立ては、この処分を不服として行なわれたもの。申立人はあきらかにされていないものの、公開された議決の要旨に「法定代理人親権者」なる記載欄があることから、被害者自身が審査を求めた可能性が高い。もとの不起訴処分から10カ月ほどが過ぎた本年1月18日、札幌検審は「不起訴不当」の議決に到り、次のような議決理由を公表した。
- 被疑者の警察官に対する供述は、犯行の動機や態様について具体的かつ詳細であり、審査申立人の祖父母に対する供述の主要な部分とも矛盾はなく、相当程度、嫌疑が認められる》
- 本件は養父の立場を利用した児童に対する性的虐待という重大な犯罪であり、被害児童に対する精神的な影響を考えると結果は甚大である》
- 以上を踏まえると不起訴処分との結論には納得ができないので、改めて被害児童の心情に配慮しつつ、再捜査及び再検討を要請すべく、上記趣旨のとおり議決する》
議決のあった翌週の1月23日、札幌地検では記者クラブ非加盟者も参加できるオープン会見があり、上の議決についての質問に同地検の石井壯治次席検事が「適切に対応して参りたい」とコメントした。
なお、元巡査長の懲戒処分があった一昨年10月には、別の方面本部に勤務する巡査長が公然わいせつ(屋外で下半身を露出)で「減給1/10 1カ月」の処分を受け、また12月にも警察署巡査が児童ポルノ禁止法違反で「減給1/10 1カ月」の処分を受けていたが、道警はこれらのわいせつ事件も現在に到るまで報道発表していない。
(小笠原淳)
【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 |