兵庫県政界揺るがす「怪文書」|自殺した自民党県議候補巡り

「全国的には知られていないと思いますが、兵庫県の政界に激震が走っています。知事に国会議員、とんでもないことになるかもしれない」――そう話すのは、自民党のある兵庫県連幹部。手にしていたのは『県議(中央区) 自由民主党公認 三浦将太候補 自殺の真相』と題された真偽不明の「怪文書」だ。

■不可解な死と怪文書

亡くなったのは、昨年末まで兵庫県の県職員として農林水産部の主査などを務めていた三浦将太氏。民党兵庫1区選出の盛山正仁衆議院議員の秘書に転じた三浦氏は、4月の県議選で、神戸市中央区選挙区から自民党公認候補として出馬することになっていたが、2月末に自宅で死亡しているのが発見された。自殺とみられている。

三浦氏のSNS投稿を見ると、県議選に向けて意欲を燃やしていたのがよくわかる。
“2連ポスターのご協力ありがとうございます”
“各訪問先でこれからの政治に期待することを聞かせていただきました”

三浦氏がそのまま県議選を迎えていれば、当選濃厚だったことを複数の地元県議・市議が認めており、自殺の理由など見当がつかないという。だが出回った「怪文書」には、カネ絡みの違った内情が記されていた。

三浦氏は、盛山衆院議員と安達和彦神戸市議(自民党)の後押しで県議選出馬を決断したとされ、SNSへの投稿にも盛山氏と安達氏の名前やリンクが出てくる。だが、紙爆弾は次のように背景を描く。
《「サラリーマン候補」のため、十分な貯金・選挙資金がほとんどないこと事であった。そこで、安達氏の周旋でK社のA氏(紙爆弾では実名)から、資金供与を受けることになる。このA氏なる人物は県知事選の際も斎藤元彦候補へ多額の献金を行い(全て収支報告書・選挙費用報告書未記載)、その一部が安達氏と一味に流れた》
《新人で当選確実の三浦氏は、小さな選挙事務所で細々と清廉潔白な政治活動をすべきだったが、A氏から「元町センター街の一等地の事務所を借りておいたから、家賃は月100万円だ」と切り出され「断ったら政治生命終わりだから。今まで俺に逆らった市議会議員や政治家は全部『オシマイ』なっているからと豪語。傍らで、困ったような、冗談半分だからと笑いすかす安達氏。「そんな高い選挙事務所は必要ない」「A氏にかカネを借りたら人世終わりだ」と周りから再三忠告されるも、断り切れず、ハンコを押す三浦氏。しか20回はLINE電話で「なぜすぐ出ない」と恫喝するA氏に、心身とも摩耗した三浦氏は、ついに自死を念慮するように。周辺の議員が「すこし最近調子がおかしい」と聞くと「お金のことで困っているんです」とこぼす。その後ほどなくして、三浦氏は命を絶ってしまった》

■謎のフィクサーの正体は?

「黒幕」と言わんばかりに名指しされたA氏は、三浦氏や盛山議員、安達氏、斎藤知事だけではなく、関芳弘衆院議員、安井鋭彦神戸市議などとも親交があるという。まさに「兵庫政界のフィクサー」ともいえる存在だ。その素性について怪文書は、一方的に攻撃する。
《H元県議にマンションと億のカネを付けて議員にしてやったと豪語するA氏の本業は地上げ屋。反社勢力を押しかけさせ、自殺に追い込んで土地をせしめ、大型ショッピングモールや大型病院にするのが生業で、兵庫県庁の人間も神戸市職員もその力を借りている。つい先だっては「協力」を見返りに、ポーンと500万円を兵庫県と神戸市に、ご褒美小遣いを寄付したことは関係者周知のこと》

コロナ禍にあたって、A氏やK社が兵庫県と県内の自治体に大量のマスクを寄付したという内容のリリースがあり、井戸敏三兵庫県知事(当時)から感謝状が渡されている場面の写真もある。また「紙爆弾」にある500万円の寄付は、A氏がX社の名義で行ったものであることが、神戸市の『ご寄付に対する感謝状贈呈式の実施』の案内でも分かる。感謝状贈呈式の出席者には安達氏の名前もあった。

A氏の会社であるK社の法人登記調べてみると、目的欄には不動産業以外に経営や建築土木、情報システム、マルチメディア、高齢者施設に関するコンサルティングなどと何が本業なのかよくわからない記載ばかり。Kというまったく同じ社名で、1966年と1974年に設立された2社が存在していたことも確認されている。

2社とも、本店所在地を神戸市や大阪市などで頻繁に変更。A氏の住所も同様に、数年おきに神戸市内を転々としていた。またA氏は、他にも複数の不動産会社を経営していた。

K社をネット検索してみると、Jリーグの強豪チーム「ヴィッセル神戸」のホームページに、スポンサー・パートナーとして登場する。ヴィッセル神戸のオーナー企業はネット事業で知られる楽天。スポンサーとして約100社の企業や法人が名前を連ね、ホームページからのリンクでそれぞれのウェッブサイトを閲覧できる。しかし、K社だけはウェッブサイトからのリンクがない。

GoogleやYahooで検索しても、A氏が代表を務めるK社やその関連会社などのウェブサイトは発見できない。A氏はまさに謎の存在といえるだろう。

「三浦氏が自ら死を選ぶなんて、まったく考えられない。怪文書の内容を苦にしたのではないかとの声も聞かれる」と話す自民党の兵庫県連幹部。3月9日、同党の兵庫県連は三浦氏に代わる候補として西村康稔経産相の秘書の経験があるという伊藤栄介氏の擁立を決めている。三浦氏の弔い合戦の行方にも注目だ。

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