久留米商工会議所に「商工会議所法」違反の疑い(下)|政治活動の説明は虚偽

「『久留米商工会議所』と政治団体『日本商工連盟久留米地区』は別組織で、活動は区別している」――そう強く主張する久留米商工会議所の事務局長。政治組織担当とされる県職OBの穴見英三専務理事は、ハンターによる再三の取材要請に応じようとせず、事実上の取材拒否だ。

では、久留米商工会議所(本村康人会頭)と全国団体「日本商工連盟」の支部として位置付けられる日本商工連盟久留米地区という組織の活動は、事務局長が言う通り、厳然と区別されているのだろうか?

結論から述べれば、久留米商工会議所側の言い分は虚偽。選挙戦真っただ中の久留米市長選において、久留米商工会議所と政治組織はどうみても一体であり、「商工会議所法」の規定に背く動きを行っていることが分かっている。

■非現実的な会議所側の主張

まず、商工会議所と政治との関係について規定した「商工会議所法」の第4条を再掲しておきたい。

「日本商工会議所」(日商)は、商工会議所の議員研修用資料「商工会議所の役割・活動等について」の中で、次のように解説している。

「特定の個人又は法人その他の団体の利益を目的として、その事業を行ってはならない」
・商工会議所は、商工業の総合的な改善発達および社会福祉を増進することを目的としており、その目的達成のためには、全商工業者のために活動しなければならないとの原則を示したもの。

特定の政党のために利用してはならない」
商工会議所が総合的経済団体としての基本性格を逸脱して、政治団体化し、特定の党利党略に利用
され、そのための政治活動を行うようなことがあってはならないとの原則を示したもの。

商工会議所法第4条の規定を前提にして考えると、政治団体である日本商工連盟久留米地区の活動に、久留米商工会議所のFAXや電話を使うのは明らかに不適切。「使用料をとっている」という会議所事務局長の主張にしても、会議所が政治団体に便宜供与していることに変わりはなく、疑問は残る。念のため100人いるという久留米商工会議所の議員の中から旧知の関係者を選んで片っ端から聞いてみたが、商工連盟久留米地区が久留米商工会議所に電話やFAXの利用料を支払ったなどという話は「聞いたことがない」と口を揃える。

そもそも、どうやって会議所の用件と政治組織の用件を区別し、料金を徴収するというのか――?問題となっている「出陣式の案内」に使われたFAX番号が会議所の代表FAX番号である以上、区別するのは不可能に近いはずだ。会議所側の説明は、非現実的と言わざるを得ない。

■不透明な政治組織の収支

仮にFAXや電話の使用料を商工会議所に支払っているとして、日本商工連盟久留米地区の会計はどうなっているのだろう。支出があれば、それを賄うための収入があるはずだ。そこで関係者にあたってみたところ、収入原資が「会費」であることが分かった。下が、本村康人久留米商工会議所会頭の名前で出された「会費納入のお願い」である。

 会費は年間1万円、約100名いるという「議員」は、ほとんど無条件にこの金額を支払っているのが現状だ。少なくとも年間100万円は集めている計算だが、すべてを活動費に充てられるわけではない。商工会議所の関係者で組織される全国団体「日本商工連盟」の収入は、主として毎年約5,000万円前後となる「会費」。あとは、政治資金パーティーの売り上げだ。(*下は、同団体が総務省に提出した令和2年分の政治資金収支報告書の表紙と収支の状況の一部分

東京にある日本商工連盟の本部に連絡して会費の額や支部ごとの収支について聞いたところ、会費の額は地方の支部ごとに決められており、いったん全額を全国団体に入れることになっているという。すると支出原資がなくなるわけで、その点について確認すると、集められた会費などの中から、必要に応じて支部に分配(寄附)する仕組みなのだと説明する。

だが、ここでおかしな事実に突き当たる。確認可能な日本商工連盟の平成30年、令和元年、同2年の政治資金収支報告書には、どこにも「日本商工連盟久留米地区」に対する寄附の記載がないのだ。つまり、連盟久留米地区への寄附額は、報告書への記載義務がない「5万円以下」だったということになる。

久留米市は人口約30万人。およそ8,300の小規模事業所があり、商工会議所の議員数約100名に役員が40名ほど、規模としては決して小さくない組織の政治団体の活動が5万円以下でできるはずがない。久留米市で行われる大型選挙のたびにしゃしゃり出てくると言われる久留米商工会議所の政治団体の収支は、どうみても不透明なもの。会議所事務局長の主張はかすむ一方だ。久留米における政治連盟の活動には、商工会議所のカネが充てられている可能性が高い。

ちなみに、お願い文書に記された「日本商工連盟久留米地区事務局」の電話番号“0942-33-0211”は、やはり久留米商工会議所の代表番号だった。(*下の会議所HPの画像参照。赤いアンダーラインはハンター編集部)

この事実をもってしても、政治組織と会議所が一体であることは明らかだ。しかも、電話の使用に関してはFAX以上にどれが政治活動に使われたものか特定するのは困難。「使用料をとる」という会議所事務局長の話は、益々あやしいものになる。

■露見した決定的な「嘘」

会議所事務局長の決定的な「嘘」も露見している。18日の直接取材時、“政治団体に加盟していない企業にも、問題の出陣式の案内がわたっているが?”と質した記者に対し、事務局長は「そんなことは絶対にありません」とむきになって答えた。しかし、日本商工連盟に加盟しておらず、もちろん1万円の会費など払ったこともないという複数の事業者が、問題の「出陣式」の案内と参加者名簿をわたされていた。しかも、案内文書を配ったのは会議所の職員。会議所と政治組織が一体であることの、何よりの証拠だろう。久留米商工会議所は、商工会議所法第4条に違反している。

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