福岡県田川市の「一般廃棄物(ごみ)収集運搬業務委託業者選定プロポーザル」を巡る疑惑の裏にあったとみられているのは、市幹部と業者による「癒着」。しかし、二場公人元市長が事業の関連文書を隠蔽して真相解明を阻んだため百条委員会でも審査過程は藪の中だった。
状況が一変したのは、今年4月の田川市長選で3選を目指した二場氏が落選してから。「徹底した情報公開」を掲げて初当選した村上卓哉氏は、市長に就任したとたん、これまで非開示にされてきたプロポーザル審査の関連文書を公開する方針に転換。それまで隠されていたプロポーザル審査資料の内容が次々と明らかになった。こうして開示された資料を精査しながら、選定された業者の周辺取材を重ねた結果、「不正」を疑わせるに足る事実がいくつもみつかっている。検証記事を5回に分けて配信する。
■ゴルフコンぺ「メンバー表」が示す不都合な真実
問題のプロポーザルの裏に「官業癒着」が存在するのは紛れもない事実だ。まず検証対象としたのは、ごみ収集運搬業務でA、B、C 三つに分けられた工区の内、AとB二つの工区で選定1位となりながら、A工区の受注を辞退するという不可解な動きをみせた早雲商事(田川市)と、事業を所管する池口芳幸元環境政策課長(現在は市立病院総務課に異動)の関係だった。
池口氏に関しては昨年4月、早雲商事のゴルフコンぺ会場を自身の会員権を使って予約し、競技にも参加していたことが判明。本人を追及したが、会場予約を認めながらもコンペへの参加は頑なに否定していた。ゴルフ場の予約だけでも公務員としては失格だったが、二場市政のもと、池口氏は処分されることもなく業務を続けていた。
ところが今年7月、取材を継続していたハンターの記者が、廃棄寸前だった「早雲商事ゴルフコンぺ」のメンバー表を入手する。メンバー表によれば、池口課長の組で一緒にプレーしていたのは同課の清掃係技術主査(現在は異動)。ごみ収集運搬の民間委託を進めた担当課の課長と現場の主査が、そろって業者と癒着していた。下がそのメンバー表である。
「国家公務員倫理規程」には、禁止行為として『利害関係者と共に遊技又はゴルフをすること』と明記されており、“割り勘”でも認められない厳しさだ。池口氏にとって、早雲商事は利害関係者。昨年から指摘してきたことだが、池口・元環境対策課長(今年4月から「環境政策課」)がプロポーザルの審査委員を務めていたということも、村上市政が新たに開示した文書(下、参照)によって証明されている。
公務員は国民全体の奉仕者で、報酬の原資は税金だ。田川市民や他の業者が、早雲商事のゴルフコンペや二次会に参加している担当課長の姿を見たらなんと思うか?中立性に対する信頼を損なうような行為が禁止されている以上、池口氏も、同氏をゴルフコンペに参加させ会場予約までさせた早雲商事も、ルール違反の責任をとるべきだろう。ハンターは、田川市に上掲のゴルフコンぺメンバー表の写しを提出し調査を申し入れていた。
24日、市側に調査状況を確認したところ、池口氏は内部の聞き取りに対し、「メンバー表の左半分が早雲商事のゴルフコンペのもので、右半分は自分の同級生の集まりだった」と強弁、早雲商事ゴルフコンペには「参加していない」と主張したという。
いわゆる「IN」スタートとなっているメンバー表の右半分には、同級生ではない元環境政策課術主査の名前がある。少なくとも元主査は同級生ではない。このことについて池口氏は「数合わせだった」と苦しい釈明を行った模様で、反省する気持はなさそうだ。
ただし、メンバー表の右半分に記されている複数のゴルフ参加者は、「早雲商事のゴルフコンぺだった」と証言しており、池口氏の主張が崩れていることを付記しておきたい。
「国家公務員倫理規程」には、禁止行為として『利害関係者と共に遊技又はゴルフをすること』と明記されており、“割り勘”でも認められない厳しさだ。地方公務員と利害関係者の関係が同様に厳しく制約を受けるのは当然で、池口氏のゴルフコンペ参加とその件に関する虚偽の主張は、公務員の信用失墜行為にあたる可能性がある。
早雲商事に、ごみ収集運搬業務を継続する資格があるのか否か、さらには問題のプロポーザルに正当性はあるのか――答えを出すのがまともな行政機関としての義務だ。
(つづく)