田川市・疑惑のプロポーザルで問われる事業の継続性(2)|クリーン北部九州の「本社」は実態不明

2021年に行われた福岡県田川市の「一般廃棄物(ごみ)収集運搬業務委託業者選定プロポーザル」で選定が進められたA、B、C三つの工区のうち、A、B両工区で一位となった早雲商事有限会社(田川市)がA工区の受注を辞退。C工区一位の「株式会社クリーン北部九州」も何故か受注を辞退する。

正式契約が遅れる中、早雲商事が受注を辞退したA工区を同工区2位のクリーン北部九州が受注。この結果、C工区を辞退してA工区の受注に回ったクリーン北部九州は、約9,400万円もの利を得た格好となっていた。

25日の配信記事で報じた通り、事業を所管する田川市環境政策課(ことし3月までは「環境対策課」)の池口芳幸元課長は昨年1月、「幹事」として早雲商事のゴルフコンコンペ会場を予約した上、部下を引き連れて実際の競技にも参加。ハンターがコンペのメンバー表という癒着の証拠を入手したことで、入札妨害が疑われる状況となっている。

では、選定結果を覆し、その早雲商事とゴミ収集運搬業務を分け合った形となっているクリーン北部九州には何の問題もないのか――?

■本社所在地には別の会社

疑問を抱いたハンターの記者が長期取材で確認できたのは、普通の企業なら歴然とするはずの「本社」の実態が、同社の場合には見えてこないという実情である。

法人登記を調べたところ、クリーン北部九州は、2020年3月9日に田川郡香春町にあった「本社」の所在地を、田川市川宮に移転させている。プロポーザルが実施される1年2ヵ月前のことだ。

その移転したという田川市の「本社」というのが、下の写真である。

昨年5月と今年7月の2回、現地取材したが、クリーン北部九州の看板はなく、ドアには田川郡糸田町に本社を置く別の有限会社(以下F社)の社名が記されている(*下の写真)。

建物の中には中には仕事中のご婦人が二人。昨年も今年も「クリーン北部九州の本社はこちらで間違いないですか」と同じ質問をぶつけてみたが、昨年は「私たちでは分かりません」。今年7月は「はい、そうですが、私たちには詳しいことは分かりません」と微妙に変わっていた。いずれにせよ、常駐しているクリーン北部九州の社員は一人もいないというのが実情だ。

田川市にあるF社の土地と建物は今年2月、同所に形だけ「本社」を置いているというクリーン北部九州が買い取っていた。ただし、プロポーザルが実施された2021年5月の段階では、同地に関する不動産物件の所有権も使用実態もなかった。

次に、2020年3月8日まで本社を置いていたという香春町の建物を訪ねてみたが、そこは同社の代表者の自宅。表札はあるが、社名を示す看板などは一切なかった。インターホンを押してみたが、不在のようで反応はなかった。

■本社移転を偽装か?

取材して分かったのは、クリーン北部九州の「本社」が実態不明の状態にあるということ。これで緊急時対応ができるのか疑問だが、一番の問題は別にある。これまでの取材結果や現状からして、同社の「本社移転」に際しては、家具類などの具体的な動産の異動がなかったとみられ、さらには連絡を受ける社員の常駐もない。ここで浮上するのは、“本社移転の偽装”という疑惑である。

田川市が「一般廃棄物(ごみ)収集運搬業務委託業者選定プロポーザル」の応募者に課したのは、「田川市内に主たる事務所(本社又は営業所)を有する者であること」という条件。クリーン北部九州は、この条件をクリアするため、1年2カ月前に“形だけ”本社を田川市内に移転させたのではないかだろうか。もちろん、その場合に必要となるのはプロポーザル実施についての事前情報。市内部の人間――それもプロポーザルの実施要領を扱う部署の職員が関わったと考えるのが普通だろう。情報漏洩を伴う入札妨害はなかったのか、さらなる検証が求められているのは言うまでもない。

4月の選挙で落選した二場公人氏が市長を務めていた間、田川市はプロポーザルの評価表や審査個票、さらには業務を受託して実際のゴミ収取運搬を行っている早雲商事とクリーン北部九州の業務提案書を隠し通した。だが、情報公開の徹底を掲げた村上卓哉氏がトップに就任した同市が新たに開示した資料を検証した結果、「官業癒着」によって業者選定結果が歪められた疑いが濃くなっている。最も可能性が高くなっているのは、担当課の幹部による特定業者への便宜供与である。

一昨年7月、C工区を辞退した理由などについて聞こうとクリーン北部九州の代表者に取材を申し入れていたが、その際は“取り付く島もない”という対応だった。こちらが名乗って“”田川市のごみ収集運搬事業のことについてお尋ねしたい”と言ったとたん、「おたくに話すつもりはない」「答える必要はない」。辞退理由について聞きたいだけだと説明しようとしたが「おたくに話す義務はない」とケンカ腰で、逆に「この携帯番号は誰に教えてもらったんですか」と凄まれた。記者がかけたのは、田川市が発行している事業系ごみの許可業者一覧に掲載されていた同社の固定電話の番号。話も聞かずに憤りを露わにする態度には呆れるしかなかった。

(つづく)

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