聴いて呆れる「真摯」「誠意」|田川バイオマス・南国殖産(鹿児島)の正体

 南国殖産は、年間で1,500億円近くの売り上げを誇る鹿児島県を代表する商社だ。立派な会社だとばかり思っていたが、これがとんでもない食わせ者。福岡県田川市で計画が進むバイオマス発電所の建設認可を得るにあたって経済産業省に提出した文書には、二度にわたって虚偽の内容を記載。ただの宴会を「説明会」に仕立てたり、建設予定地も周知されていない段階でいるはずのない「地元の代表者」をでっち上げるなどして、あたかも地元住民の同意を得ているかのように見せかけていた。

 その南国殖産が、田川市の住民の質問に対する回答の中で、当該事案に関する情報開示を禁じた上、南国殖産本社への電話をかけないよう求める文書を発出していたことが分かった。迷惑施設の事業者が地元住民への説明責任を放棄した形で、田川市民の間から怒りの声が上がっている。

■住民説明会に関し2度の虚偽記載

 令和2年(2020年)3月に南国殖産が「差し替え」の形で九州経済産業局に提出した発電所の申請書類に添付された『バイオマス燃料の調達及び使用計画書』には、「地域社会への対応」として令和元年(2019年)11月7日に“近隣住民説明会”を開き、“丁寧に説明を行い理解を得られた”と記されていた。(*下の文書参照)

 ところが、令和元年11月7日の会合は、発電所計画地周辺の三つの区の区長を招いた「顔合わせ」(区長側の説明)。近隣住民説明会は真っ赤なウソで、田川市内の和食料理店(*下の写真)で開かれた、ただの宴会だったことが明らかになっている。

 南国殖産は、それ以前の平成30年(2018年)12月20日に経産省に提出した『バイオマス燃料の調達及び使用計画書』に、さらに悪質な虚偽記載を行っていたことも分かっている。

 差し替え前の『バイオマス燃料の調達及び使用計画書』の中の「地域社会への対応」に記されていたのは、「これまで地元の代表者に対しては事業内容の説明をし理解は得られている」との作り話だったのだ。

 時系列で考えれば簡単にバレる話なのだが、「地元の代表者に対しては事業内容の説明をし理解は得られている」などという話はあり得ない。田川市選出の佐々木允県議がバイオマス発電推進を県議会で訴えたのが2018年の6月。南国殖産が田川市に事業計画を正式提案したのは翌年1月で、市民に発電所建設計画が伝わるのはその後。平成30年(2018年)の段階で事業計画の存在を知っていたのは、ごく一部の関係者だけだったからだ。

 住民説明会に関する南国殖産の記載内容は、初回(2018年12月提出)も差し替え分(令和2年(2020年)3月提出分)も、住民側にとっては明らかなでっち上げだった。ハンターは、南国殖産が2度にわたって虚偽の内容を記載した書類を国に提出していたことを情報公開請求で入手した文書で確認し、詳細を報じている。

【参照記事】
「近隣住民説明会」、じつは顔合わせ宴会|福岡県田川市・バイオマス発電所建設計画の闇(下)
田川市・バイオマス発電所建設計画で南国殖産に新たな「虚偽」の疑い|書きかえられた計画書

■容認できない企業姿勢――関係住民に「電話するな」

 平成30年12月20日に南国殖産が提出した『バイオマス燃料の調達及び使用計画書』に、「これまで地元の代表者に対しては事業内容の説明をし理解は得られている」と記されていたことを知った関係住民は、「怒りに震えた」という。当然だろう。どこに発電所が建つのかさえ知らされていない段階で、「代表者」が「理解」できるわけがない。南国殖産がいう「代表者」とは、一体どこのだれを指しているのか――?田川市役所の担当者は、誰のことか――?2点に絞って、住民代表が、電話で南国殖産に質問をぶつけていた。

 その質問に対する南国殖産の回答が下の文書である。(*赤い囲みとアンダーラインはハンター編集部)

 質問に対してはゼロ回答。事実上の回答拒否だ。地元住民が質問した相手は、南国殖産本社の「風力・バイオマス開発課」なのに、なぜか同社の100%子会社で発電所の運営管理を行う現地法人「田川バイオマス発電所」が、回答文を発出している。しかも、担当者の名前さえ入っていない。「回答書」は、質問を受け流した上で、こう求めている。

・回答書を複製するな。
・第三者へ回覧、譲渡、提供するな。
・メディアに回覧、譲渡、提供するな。
・質問は書面でやれ。
・南国殖産本社へは電話するな。

 考えられない傲慢ぶり。しかも、発電施設の事業者としては考えられない無責任な姿勢だ。田川市民をバカにしているとしか思えない。「お願い事」としているが、よくこのような非常識な内容の文書を送れたものだ。

 バイオマス発電所の認可申請を行ったのは南国殖産であって、「田川バイオマス発電所」ではない。許可申請の内容について疑義が生じた以上、書類を作成した南国殖産が答えるのが筋だろう。しかし、南国本社は逃げた。南国殖産に、事業を続ける資格はあるまい。

 そもそも、建設現場の看板に、田川バイオマス発電所のお問い合わせ先を「南国殖産 風力・バイオマス開発課」と指定し、同課の電話番号を明記したのは南国殖産だ。その証拠が、田川バイオマス発電所建設工事現場の入り口横に掲げられた下の看板の写真である。「099-252-6155」は鹿児島市内にある南国殖産本社内の太陽光・風力・バイオマスといった再生エネルギー開発を担当する部署の電話番号。これに「電話するな」というのなら、この看板も嘘っぱちということになる。

■南国殖産に問われる企業姿勢

 もし、九電や東電といった電力会社が原発や火力発電所などに関する質問に対し、南国殖産と同じような「電話するな。子会社にかけろ」というような対応をとったとしたらどうなるだろう。メディアは大きく取り上げ、電力会社は立ち往生するはずだ。南国殖産は、賛否が分かれる事業には、より丁寧な説明が求められる時代だということが理解できていないのだろう。同社に問われているのは“社会との向き合い方”だが、格好がいいのは上っ面だけのようだ。

 南国殖産の永山在紀社長は、同社のホームページに出てくる「代表挨拶」の中で、次のように述べている。
《「信頼とチームワーク」をベースに社員全員が「全員経営」の意識を持ち、総力を結集して地域社会から信頼と評価を得られる企業集団となるべく、「企業力を、地域力に」をスローガンに、より一層の努力を重ねて参る所存でございます。》

 また、「南国グループ行動憲章」の一節には《私たちは、一人ひとりが南国グループを代表しているとの自覚を持ち、お客様の声を真摯に受けとめ、誠意をもってお応えします。》ともある。

 ご立派な文言が並んでいるのだが、田川市のバイオマス発電所を巡る南国殖産の企業姿勢は、「真摯」「誠意」とは程遠いもの。地域社会からの「信頼」が得られるわけがない。関係住民への説明ができないような事業を行っている以上、田川市や国は、いったん南国殖産の発電所建設工事を止め、改めて「住民説明会」を開かせるべきだろう。

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