【江差看護学院パワハラ事件】第三者委の調査続く|さらに最大8人聴き取りへ 

北海道立江差高等看護学院のパワーハラスメント問題で、在学生自殺事案の調査にあたっている第三者委員会が1月中旬に本年初めての会合を開き、引き続き最大8人の関係者への聴き取り調査を重ねる考えをあきらかにした(*下の写真)。同委はすでに元学生ら6人への聴き取りを終えており、この調査の過程で新たに8人の対象者が特定された形だ。

◇   ◇   ◇

本サイトなど既報の通り、江差看護学院で男子学生(当時22)が自殺したのは2019年9月。のちに表面化したパワーハラスメントが原因であることが強く疑われたが、21年のパワハラ調査では教員11人による計53件の被害が認定された一方、自殺事案についてはハラスメントとの因果関係が認められるに到らなかった。

これが改めて調査の対象となったのは、22年になって遺族が真相解明を求める声を上げ始めたため。代理人からの調査要請を受けた道は新たな第三者委員会を設立することになり、昨年11月までに2度の会合が設けられた。同委は遺族の証言などをもとに関係者6人の聴き取りが必要なことを確認、同月下旬から対象者らとの面談を重ねてきたところだった。

年が明けた1月11日には、札幌市内で第3回会合が開かれた。委員らは同日までに先の6人の聴き取りを終え、その過程で新たに8人の関係者を特定したという。同日夕に報道陣の取材に応じた同委は「おもに客観的に話ができそうな人からの聴き取りの結果」として8人が浮上した経緯を説明し、今後の調査については次のように話した。

「退学された学生さんや退職した教員がいるので、8人のうち何人に聴き取りできるかは、これからの連絡調整次第だと思います。いつごろ聴き終わるかの目途は立っていませんが、できるだけ早急に、1月・2月でお話を聴いていきたい」

調査結果とりまとめの時期については「できるだけ年度内にと思っているが、確実な時期はわからない」としており、聴き取り以外の調査方法については「学校に残る記録などを調べている」とした。

未だ被害認定に到っていない在学生自殺問題だが、当時の同窓生らは「間違いなくパワハラが原因」と断言しており、第三者委の調査に応じた元学生の1人は学内で箝口令が敷かれた事実などを証言している(既報 )。

亡くなった学生の母親(46)は「(同窓生が証言したような)過剰で苛酷な指導に我慢し続けた息子のことを思うと涙が出る」と改めて無念さを語り、「今後の聴き取りに応じる人たちも当時の実態をきちんと話してもらいたい」と呼びかけている。

渦中の江差看護学院は12月下旬、公式サイトで学生アンケートの結果を報告、ハラスメント被害について回答者全員が「ない」と答えたことなどをあきらかにした(→江差看護学院公式サイト)。

公表された意見には「先生が優しい」「とても勉強しやすい」「雰囲気が明るく面白い人が多い」などの肯定的な文言が並ぶが、一方で過去のハラスメント被害については未だに真っ当な謝罪や賠償を得られていない被害者が複数おり、被害告発から2年以上が過ぎた今も一連のパワハラ問題は完全な解決に到っていないのが実情だ。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

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