久留米商工会議所に県が異例の改善指導|会議所法違反の政治活動、国も疑い指摘

今年1月に行われた久留米市長選挙の際、久留米商工会議所(本村康人会頭)が政治団体「日本商工連盟」の活動を装って会議所の組織や運営について定めた「商工会議所法」の規定に反する行為を行っていた問題で、福岡県が同会議所の調査に入り、厳しい改善指導をしていたことが分かった。

■ハンターの報道受け県が立ち入り調査

ハンターが県への情報公開請求で入手した関係文書から明らかになったもの。発端となったのは、1月に配信した久留米商工会議所の活動状況に関する一連の記事だった。(*下、参照)

ハンターが問題視したのは、久留米市長選で元県議会副議長を推薦した同会議所の政治組織「日本商工連盟久留米地区」が、選挙向けの文書に久留米商工会議所の代表電話やFAXの番号を使っていたこと。会議所側は「使用料をとっている」と釈明したが、会議所が政治団体に便宜供与していることに変わりはなく、《商工会議所等は、特定の個人又は法人その他の団体の利益を目的として、その事業を行つてはならない》《商工会議所等は、これを特定の政党のために利用してはならない》と定めた商工会議所法の規定に反するものだとして厳しく批判する記事を配信していた。

法令違反の疑いがあることを重視した県は、2度にわたって久留米商工会議所に立ち入り調査し、報道内容の確認を行っていた。下が、そのヒアリング結果を示す文書である。
(*以下、文書中の赤い書き込みはすべてハンター編集部。画像クリックで拡大)

■国も違法性指摘

調査は、ハンターが配信した記事の内容についてのもので、今年1月28日と2月10日にの2回にわたっていた。

  1. 久留米市長選候補者の事務所開き報告会、出陣式、総決起大会の案内文書に久留米商工会議所のFAX番号記載し、案内時において同FAXを利用したかどうか――。
  2. 令和3年8月3日付「日本商工連盟久留米地区会費納入のお願い」及びこれまでに日本商工連盟久留米地区が発出した文書に、久留米商工会議所の電話番号、FAX番号を記載し、利用したかどうか――。

などの疑問点について、会議所側に関係書類を提示させ確認していた。

県がこの問題をいかに重視したかが分かるのが、2月10日のヒアリング結果の最後に出てくる記述である。
前回調査した結果について、国に報告した。国も電話やFAXの共用は好ましいこととはいえない、との回答」――これは“国が久留米商工会議所の活動に違法性があることを認識した”ということを示しており、前代未聞の不祥事であることが理解できる。

県は調査結果を踏まえ、2月14日付「貴商工会議所による政治活動に関する報告について(依頼)」で、改めて久留米商工会議所の回答を求めていた(*下の文書参照)。

■会議所が認めた電話・FAXの不適切使用

これに対する久留米商工会議所の正式回答が、下の「久留米商工会議所による政治活動に関する報告について」と題する文書である(*画像クリックで拡大)。

まず、“久留米市長選挙の候補者である〇〇の事務所開き報告会、出陣式、総決起大会の案内文書への久留米商工会議所FAX番号の記載、案内時におけるFAX利用の有無について”に対する回答。

報告会、出陣式、総決起大会の案内文書に久留米商工会議所(以下「会議所」)のFAX番号を記載しました
 また、案内時において、会議所のFAXを利用いたしました。ただし、利用にあたっては、会議所の外部者が利用する場合のFAX利用規定に基づき、会議所は、日本商工連盟久留米地区(「商工連盟」)から規定の利用料を受けております。

次に、“令和3年8月3日付で発出された文書「日本商工連盟久留米地区会費納入のお願い」の中における、久留米商工会議所電話番号の記載の有無について。併せて、これまでの日本商工連盟久留米地区から発出された文書における久留米商工会議所電話・FAX番号の記載、日本商工連盟久留米地区による久留米商工会議所電話回線・FAX利用の有無について”に対する回答。

会費納入のお願い文書に会議所の電話番号を記載しました
 また、これまでの商工連盟より発出された文書には会議所の電話番号、FAX番号の記載がありました。

“久留米商工会議所職員による〇〇「出陣式」の案内文書配布の有無について”に対する回答は、こうだ。

会議所職員による案内文書の配布は一切行っておりません。

“久留米商工会議所仕事納めにおける○○の挨拶の有無について”に対しては――。

毎年、会議所恒例行事として仕事納めを勤務時間外(17時30分以降)に実施しています。今回は、○○がその時間に突然来所され、あいさつの要請を受けましたので、儀礼上これを受け入れ挨拶をされました。○○の記事の記載のように、専務理事が○○のあいさつのため、会議室へ集合するよう指示を出して行ったものではありません。

 “商工会議所内の特定候補者のポスター・チラシの配架、政治集会への職員動員、政治団体の事務を職員に行わせること、政治団体への資金提供、政治中立を損なう活動の有無”を問われ――。

上記ポスター、チラシの配架、政治集会への職員動員、政治団体事務を職員に行わせること、政治団体への資金提供等、会議所において政治的中立を損なう活動は一切行っておりません。
 久留米市長選の一連の報道では、テレビなどの一部報道において、あたかも商工会議所が特定候補者の選挙支援を行っているかのような曖昧な報道がなされましたが、商工会議所として報道されたような活動を行ったことはありません。あくまでも商工会議所の政治団体である商工連盟による活動であるとの認識を持ちながら活動してまいりました。
 商工会議所と商工連盟はもとより別組織であり、長年に渡り、そうした考えに基づき活動してきましたが、商工連盟の連絡先として商工会議所の電話番号及びFAX番号を記載してきた慣行に思いを致さず、各方面の誤解を招いたことは大いに反省しております。
 今回、県からご指摘があったことを契機に真摯に反省し、今後はこうした誤解を招く行為がないように努めていきたいと考えております。ご迷惑をおかけしたことは、誠に申し訳なく深くお詫び申し上げます。

会議所職員を使った選挙支援などの“会議所と政治団体の一体化”については否定しているが、政治組織「日本商工連盟久留米地区」の発出文書に会議所の代表電話やFAXを掲載していたことは、証拠を突き付けられており認めざるを得なかった。「ごめんなさい」ということだ。

政治団体側が使用料を支払ったから問題ないと言いたいらしいが、有料であれ無料であれ、会議所の代表電話やFAXを政治団体に利用させてきた事実は動かない。それこそが政治団体への「便宜許与」であり、商工会議所法違反なのだ。

子供じみた言い訳は他にもある。一体化を「誤解」と言い訳しているが、多くの会議所関係者は「久留米商工会議所が選挙活動をやっている」としかみていない。会議所の代表電話やFAXを政治団体が使うことで、「商工会議所の決定事項」と思わせるよう、意図的に事を進めた可能性は否定できまい。

調査を終えた福岡県は、2月25日付けで「商工会議所法第4条に定める政治的中立の確保について(要請)」という名称の文書を発出する(*下の文書参照)。

「要請」となっているが、文中にあるとおり、実際は「指導」だ。そこには、行政機関としては最大限と言ってもおかしくないほどの厳しい文言が並ぶ。

《(会議所から)報告された内容は、商工会議所法第4条第3項に規定する商工会議所の政治的中立の趣旨に反し、あたかも貴会が政治活動を行っている、と県民に疑念を抱かせるものであると言わざるを得ません》――県が商工会議所法違反を認める判断を下したということであり、その結果としての「指導」は、極めて厳しい内容となっている。

  1. 久留米市長選挙の候補者である〇〇の事務所開き報告会、出陣式、総決起集会の案内文書に貴会のFAX番号を記載させるとともに、案内時において貴会のFAXを利用させた。このことは、貴会と日本商工政治連盟久留米地区(以下「政治連盟」という。)が一体であるとの県民の疑念を生じさせる恐れがあり、今後、このような行為を一切行わせないこと。
  2. 「日本商工政治連盟久留米支部会費納入のお願い」の文書へ、貴会の電話番号を記載させた。また、これまで政治連盟から発出された文書へ、貴会の電話番号、FAX番号を記載させた。このことは、貴会と政治連盟が一体であるとの県民の疑念を生じさせる恐れがあり、今後、政治連盟の文書には、一切貴会の電話番号、FAX番号は記載させないこと。
  3. 久留米商工会議所仕事納めにおいて、○○が挨拶を行ったことについて、儀礼上のものであるとの見解であった。しかしながら、立候補予定者が貴会で挨拶をすること自体が、貴会の政治利用を疑わせるものであり、今後、立候補予定者による挨拶その他の選挙運動と受け止められる恐れある行為は、一切行わないこと。

県の改善指導から約1週間後の3月3日、久留米商工会議所は服部誠太郎県知事あてに、「反省」の弁を述べた上で会議所の電話やFAXを政治団体に使用させないことなどを誓約する文書を提出していた。

■県の調査・指導を非公表 問われる会頭の責任

久留米商工会議所の全面敗北という格好だが、大きな問題が残った。県による立ち入り調査、国の見解、さらには厳しい改善指導といった重要事態であるにもかかわず、久留米商工会議所は一連の経緯を公表していないのだ。会議所の関係者で県の立ち入り調査や指導について詳しく知っているのは、会頭の本村氏や政治組織担当の専務理事などごく一部の役員だけ。会員はもちろんだが、会議所の議員でさえも知らされていないという。事情を知った久留米商工会議所のある関係者は、次のように話している。

「県の調査があったということは、まったく知らなかった。しかも2度も立ち入り調査されていたなんて、恥ずかしい話だ。あげく、国にまで報告が上がり、違法性を指摘され、県からは厳しい改善指導……。知らん顔して時間の経過を待つつもりだったんだろうが、こうした重大問題を議員や会員に報告していないのは、隠蔽の意思があったからだとしか思えない。会頭は関係者にお詫びして、辞任すべきだろう。そもそも、久留米商工会議所を選挙に巻き込んだのは本村会頭。すべての責任は、会頭にある。それと、会議所の回答では政治団体と会議所は一体ではないと抗弁しているが、それは真っ赤なウソ。誰も信じないはずだ」

 

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