福岡県田川市に新たな疑惑|市長派市議の会社が所有権移転前の市有地で建設工事

福祉施設建設のため福岡県田川市(二場公人市長)から市有地を購入した会社が、本契約後に予定されていた土地の所有権移転を待たずに、建物の建設工事に着手していたことが分かった。

福祉施設を整備した「里ごころ有限会社」は、二場公人市長に近いとされる今村寿人市議会議員が役員を務める会社。田川市側は本契約前の着工を認めていたとしているが、市と里ごころによる一連の動きに法的根拠は見当たらず、「便宜供与」が疑われる事態だ。

■市有地売却の流れ

問題の土地は、産炭地振興などを目的に「特定開発事業」として国が関与して造成されたもの。最終的な売却には国の許可が必要だった。

「昭和団地南側所有地B区画」と呼称されていた約6,700㎡にのぼる企業誘致用のこの土地は、2017年(平成29年)3月まで田川市が保有していたもの。2016年(平成28年)1月に今村市議が専務取締役を務める「里ごころ有限会社」が、売却希望にあたる『貴市所有地ご紹介のお願い』(*下、参照)という文書を提出したことを発端に話が進み、市有財産処分審議会の議論を経て、平成28年8月23日に同社と市が『私有財産(土地)売買仮契約』を結んでいた(*「お願い」の下の画像が契約書)。この段階はあくまでも仮契約。本契約に至るには、国=厚生労働省の承認が必須だった。

 国の承認が下りたのは平成29年3月23日。これを受けて市と同社が交わしていた「仮契約」が、ようやく「本契約」に移行(契約金額:29,354,943円)。里ごころ側は4月28日に土地代金を支払い、同日付けで所有権移転の登記が行われていた(*下の登記簿参照)。

 所有権移転に至るまでの動きをまとめるとこうなる。

“土地取引き”に関するここまでの動きに問題はないものとみられていたが、ハンターは昨年、この市有地売却の裏で「便宜供与」行われたことを強く疑わせる証拠を入手する。それが「平成29年3月25日」に撮影された下の写真である。
(*赤い矢印、黄色の囲み、書き込みなどはハンター編集部)

■昨年報じていた「第一の便宜供与疑惑」

この土地の“取引き”には問題がなかったと述べたが、“この土地に絡む疑惑”が存在していたことを、ハンターが昨年10月の配信記事で報じていた(既報)。田川市は、仮契約期間中に問題の土地の一部である法面を、公費を投入して整備していたのだ。

市は、仮契約から3カ月半も経って、法面となっている市有地部分に「雑草が多い」「維持管理に支障をきたしている」「隣接地所有者に迷惑をかけている」――つまり『瑕疵があった』――などという根拠のない理由をつけて、法面の除草と防草シートを敷設する工事を行っていた(契約金額:2,311,200円)。工事の起案時には確かに市有地だったが、既に売却が決まって「仮契約」まで済ませた土地の法面部分に、わざわざ税金を使って工事を行ったということだ。市が、市長派の市議に忖度したとしか思えない出来事だった。

■第二の疑惑も「便宜供与」

そして今回判明した第二の疑惑。上掲の写真が示しているのは、市民の持ち物ともいうべき田川市の土地の所有権が移転する前に、売買代金も支払っていない業者が、建物を建設していたという事実だ。田川市は、議会に報告もせぬまま、市長派市議の会社のやりたい放題を認めていた。どういうことか、以下に説明する。

前述したように、上の写真が撮影されたの平成29年3月25日。建物の枠組みが出来上がっているところからみて、着工はそのかなり前だったことが推定できる。少なくとも「3月23日」には、かなり工事が進んでいたということだ。「3月23日」は国が土地売却を承認した日。これでは国の承認という重要な要件を、行政機関である田川市が形骸化させたことになる。

さらに、この土地の所有権が市から里ごころに移転したのは、国の承認から約1か月後の、同社が田川市に土地の契約代金を支払ったとみられる同年4月28日。市が了承を与えていたとしても、法的な根拠はない。本事案の一連の流れに建設工事が開始された時期を加えると、里ごころの行為がいかに無理なものだったかが分かる。

市の担当課に事実関係を確認したところ、担当者は、“里ごころ有限会社から建設工事を進めさせてもらいたいという申し出があったため、市としてこれを認める文書を発出している”と説明する。しかし、上の表でも明らかなとおり、里ごころが建設工事を開始したのは、国の承認も所有権移転も完了していない時期。どうみても不適切だ。

売買交渉中の自家の土地に、話がまとまらないうちに買い手が勝手に建物を造れば、誰もが怒るはず。上掲の写真は、市民の意向を無視した二場執行部と市長派市議の会社が、共謀して事を進めた証拠であるとしか思えない。国の指導に従わず、建設関連情報を非開示にして隠蔽を続けるなど横暴の限りを尽くしている大任町・永原譲二町長の影響か、町長の義弟である二場公人氏が市長を務める田川市も無法地帯となっている。闇は深い。

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