徳島市の内藤佐和子市長が予算執行直前で待機児童解消のための保育施設補助事業を白紙撤回した問題で混乱が続くなか、内藤市長のリコールを目指す市民団体「徳島の未来を守る会(以下、守る会)」が市長宛てに公開質問状を突き付けた。
■取り消されていない「交付金内示」
見送りとなった同事業は、国や県からの補助が厚く、2億円の市税負担で16億円規模の保育施設の設備が可能となる、市にとっては好条件の事業。待機児童の解消に向けて、500名の受け皿が実現するという期待が膨らむ中、4月に初当選した内藤市長は、財政圧迫と供給過剰を大きな理由に挙げ、唐突に事業の見直しを発表した。
保育所新設の準備を進めていた保育事業者や子育て世代が見直し撤回を求め、署名活動を展開するなど激しく反発したが、市長は、市民からの度重なる対話要求も無視したままだ。
内藤市長が事業の見直しを発表したのは6月3日。3か月が経過するが、ここに来て、市が国に対し交付金内示の正式な取り下げを行っていないことが判明している。
市はこの間、公募により選定されていた事業者らに対し事業の見直しを正式に文書で通知したが、一部の事業者は、市側の同意のもとに計画を進めていたにもかかわらず理不尽な事業中止に至ったとして、市への損害賠償請求を検討しているという。
内藤市長が語る見直し理由に納得できないのは、議員も同じ。先月24日、徳島市議会自民党市議団は厚労省に対し、市の内示取り下げの経緯や理由について見解を求めていた。これに対し、厚労省は同月26日付けで「現在、国は徳島市より正式な取り下げの依頼は受け取っていない」と回答している。
9月1日に守る会が提出した公開質問状によれば、市が国からの交付金内示の正式な取り下げを行っていない理由や補助事業再開の有無について確認を求めた上で、今後市長自ら事情説明する意思があるのかなどを聞いており、回答期限は15日となっている。(*下が公開質問書)
事業中止を公表しながら、市が国からの交付金の内示を取り下げていないのはなぜか――?多くの市民が、疑問がに思うはずだ。守る会の篠村孝明さんは「署名提出時には、お会いすることが叶わなかった。今回こそは、回答を頂けると信じている」と話している。
もともとこの補助事業は、市の保育事業推進のために、国に資金的な協力を要請したもの。市の要請に対し、国が費用を一部負担することを了承しているにも関わらず、自ら断ったという珍しいケースだ。市関係者によると、同様の保育補助事業において、交付金の辞退は全国的にも前例がないという。