右へ急旋回の岸田首相|「防衛費倍増」「増税」を争点に総選挙?

昨年、唐突に右へと急旋回を図る形で「防衛費倍増」の方針を打ち出し、増税にも言及した岸田首相。正月4日に開いた年頭の記者会見会では、「増税前に選挙があることも可能性の問題としてあり得る」、「(解散総選挙は)専権事項として時の首相が判断する」などと発言。さらに「それまで(2025年秋の衆議院議員の任期満了)に、衆院選はいつでもあり得る」と踏み込んだ。解散をちらつかせて党内の引き締めを図ったということだろう。

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こうした発言について、「岸田首相はうまくごまかしたつもりでしょうが、防衛費倍増はやる、解散総選挙で信を問う、増税もやるという思いがにじみ出たような会見だった」と感想を語るのは自民党の大臣経験者。別の若手議員も「いつ解散になってもいいように、新年からあいさつ回りの件数を去年の倍以上に増やしています。年内解散は確実でしょう」と危機感を隠せない。

確かに、解散総選挙は総理の専権事項だ。しかし、岸田首相がやろうとしているのは防衛費倍増についての信を問う、いわば「防衛増税解散」であることを忘れてはならない。

首相は就任時、子ども施策の予算倍増、脱炭素カーボンニュートラルを重視すると述べていた。だが、子ども関連予算はまったく手つかず、カーボンニュートラルについても大きな進展はない。「公約」にはなかった防衛費倍増を突然持ち出してその是非を問おうというのだから、どこから見てもおかしな話だ。

会見当日の4日、首相はBSフジの番組に出演し、「(解散総選挙は)首相が判断すべきもので、いつでもあり得る」と同様の見解を繰り返した。この日、同じ番組に出演したのは連立を組む公明党の山口那津男代表。そしてもう一人は、何故か国民民主党の玉木雄一郎代表だった。

いずれも、単独インタビューという形での番組出戦だったが、自・公プラス国民民主党という組み合わせが、永田町に「憶測」を呼ぶことになった。。

昨年の国会で自公政権の予算案に賛成した国民民主党が、連立政権に参加するのではないかという話は消えていない。事実、昨年12月には時事通信が同党の連立参加を報じる記事を配信。こうした動きを肯定するかのように、国民民主の玉木代表は「今年秋までには解散総選挙がある」と自信ありげに断言している。

この点について、ある官邸関係者がこう話す。
「自民党の執行部と玉木氏はかなり通じている。それでなければ、時事通信があんな記事を書くはずがない。あの記事が完全に間違っていたら、時事通信は出入り禁止程度では済まない。しかし、時事通信には何のおとがめもなく、自民党の本部でも普通に取材している。要するに、岸田首相は低迷する支持率回復、防衛増税にあわせて、国民民主党を取り込むことも見据えているということです。ただ、支持率をみればわかりますが、国民民主党はメディアの世論調査で1%か2%しかない。これは、れいわ新選組や参政党と同じようなレベルです。どうも防衛増税だけではない狙いがある」

かつては、玉木氏と同じ釜の飯を食っていた立憲民主党の幹部からも「昨年秋くらいから玉木氏の動きが明らかに変わってきた。自公政権に軸足を置き始めたのが同じ国会にいてよくわかる」といった声が聞こえてくる。

現在、自民・公明を合わせると、衆議院と参議院で過半数をおさえており、ねじれはない。そこに、国民民主党の国会議員20人が加わると、憲法改正に必要な「3分の2」も視野に入る。自民党には、日本維新の会という、もう1枚のカードも存在する。

「岸田首相に、安倍元首相の悲願だった憲法改正を実現させたいという強い思いがあるのは事実。その前に防衛増税という、憲法改正に匹敵する大きな政策をぶちあげた。国民民主党との接近は、防衛増税を想定してのもの。それがとん挫するなら維新にも手を伸ばすだろう。立憲民主党、共産党をのぞく大連立として、憲法と安全保障という2つの大きな山を乗り越えようとしているのではないか。そのためにはまず国民民主党を引き寄せたいということ。茂木幹事長ら執行部がその意を汲んで、玉木氏と頻繁に連絡を取っているというのが現状だろう。岸田首相が菅元首相とちょくちょく会うのは、明らかに維新対策です」(前出・自民党の大臣経験者)

だが、この国とっての喫緊の課題は、新型コロナで破壊された経済の再生とコロナ後を睨んだ対策であり、さらには30年近くも放置されてきた賃上げ問題がある。少子・高齢化対策も待ったなしだ。それを無視してたまま防衛増税解散に打って出て、勝機はあるのか――?

かつて、小泉純一郎という絶大な人気を誇る総理大臣が退任した後、安倍晋三→福田康夫→麻生太郎とほぼ1年おきにトップが変わった。最後はリーマンショックに対する経済対策の失敗が大きなポイントとなり、2009年には旧民主党が政権奪取に成功する。ある古参の自民党議員は、下野した当時を振り返ってこう嘆いた。
「国民民主党を取り込むというが、玉木が20人全員を引き連れてくるなんて絶対にできない。半分も来ないんじゃないか。維新も連立となれば割れる可能性がある。岸田総理は解散総選挙の争点を防衛増税と語ったも同然だが、小選挙区制度においては1回の選挙で政権交代が起こりうる。増税が争点で勝てるわけがない。総理はそれが分かっていて、なぜ危ない橋を渡ろうとするのか……」

 

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