任期満了に伴う北九州市長選挙は5日、投開票が行われ、元厚生労働省官僚の無所属新人・武内和久氏(51)が、自民、公明、立憲民主、国民民主の各党が相乗り推薦した元国土交通省官僚の津森洋介氏(47)らを破り、初当選を確実にした。
北橋健治市長が後継者として全力で支援したのは、落選が決まった津森氏。北九州市民は、北橋市政の継続ではなく、新たな市政の誕生を望んだことになる。
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武内氏は久留米大学付設中・高校から東大法学部に進み、卒業後は厚生労働省に入省。医療・福祉分野で実績を積んだのち、早期退職して民間で大学教授を務めたり会社経営に乗り出すなど多方面で活躍していた。
2015年からはKBC九州朝日放送の番組でコメンテーターに、18年には福岡市の政策参与に就いていた。19年の福岡県知事選では当時の現職・小川洋氏に敗れたが、手腕を惜しんだ北九州の関係者から市長選出馬を強く求められ、早い時期から頻繁にミニ集会を開くなど草の根の運動を展開していた。
選挙戦は、与野党に加え労働組合の連合も加わるという分厚い布陣で組織戦を徹底させた津森氏と武内氏による事実上の一騎打ち。勝って当然とみられていた津森陣営が候補者討論会への参加を断るなど、打ち出す手が次々と批判の対象となり支持を失っていったのに対し、政党色を出さずひたむきに政策を訴えた武内氏の姿が、多くの有権者の共感を呼ぶことにつながったとみられる。最終日の4日、マイク納めを終えた後も深夜まで街頭に立って無言で頭を下げるなど、武内氏は最後まで真摯な姿勢を崩さなかった。
一方、芳しくない情勢調査への焦りからか津森陣営は終盤、公共施設内で行われていたスポーツの試合会場に登場。陣営幹部の県議と“たすき”をかけた津森氏本人が、公職選挙法違反となる「演説」を行うなど迷走する始末だった。
(北九州市の当日有権者見込み数:776,335人。最終投票率:38.5%(前回比5.02%。期日前投票:10万9,284人)