国民民主党福岡県連の複数陣営、同じ関係者の会社に選挙公営対象物を発注|問われる選挙ビジネスの是非(修正稿)
福岡県内の衆議院選挙区と二つの政令市の市議選において、国民民主党が公認した候補者陣営が、選挙公営の対象となったポスターやビラなどを同一人物の会社に満額発注し、同社側に利を得させる形となっていたことが分かった。その人物は二つの政令市の選挙でそれぞれの陣営の出納責任者を務めていた。ある関係者は、その人物から“出納責任者就任”と“選挙公営の一任”を申し向けられたと話しており、意図的な「満額発注」が行われた可能性が否定できない。
一連の動きを県連側が承知していたとすれば、「103万円の壁」を旗印に減税を主張して支持を伸ばしてきた国民民主党の地方組織が、公費を使った選挙ビジネスを容認したも同然。夏の参院選でその是非が問われることになる。
■同一人が複数選挙で「出納責任者」
ハンターが取材対象にしたのは、昨年10月に行われた衆議院選挙で福岡4区から立候補して落選し比例復活で初当選した許斐亮太郎議員、23年の福岡市議会議員選挙で西区選挙区から立候補し落選した松本玲子氏、今年1月の北九州市議選で小倉北区選挙区から立候補し初当選した宇都宮亮氏ら3人に対する選挙公営の実態。三つの選挙のうち、二つの政令市の選挙では、福岡市内に本社を置く会社の代表者であるM氏が「出納責任者」を務めていた。
通常は、それぞれの陣営の関係者が就任する「出納責任者」を、外部の、しかも同一人物が務めるというのは異例。それだけでも興味を引くが、候補者側が、出納責任者の会社に選挙公営の対象となっている陣営の印刷物等を満額発注しているとすれば、「発注金額は妥当なのか?」「公金利用の選挙ビジネスか?」といった疑念を抱かれるのは当然だ。出納責任者が発注権限を有していれば、疑念はさらに増す。
選挙公営における満額請求が、ただちに違法というわけではない。しかし、不必要な金額を水増ししたり、後援会活動に使用した他の印刷物の代金をポスターなどの公営対象の中に紛れ込ませて詐取するなど悪質なケースが存在するのも事実。そうした場合の大半が「満額請求」となっている。
ハンターは、関係者の告発を受け、情報公開請求で入手した前記3人の選挙運動費用収支報告書及び公費助成に関する文書を精査した。下の表はそのまとめだ。
選挙ポスターやビラなどが対象となる公費助成を巡るトラブルは後を絶たず、全国各地で住民監査請求や訴訟が相次いできた。制度の抜け穴を利用した手法は一見合法ともとれるが、水増し請求が認められれば公金を詐取したとして詐欺罪で立件される場合もある。
本稿における国民民主党福岡県連の候補者たちのポスター代などは、いずれも「満額請求」。褒められた話ではあるまい。「103万円の壁の引き上げ」――つまりは減税――を訴えて躍進した政党の候補者が、公費支出を抑える努力をしていない点も矛盾していると言うしかない。取材を進める中、ある同党の関係者から次のような証言を得た。
「私は、Mさんから『自分を出納責任者にしてポスターなどの発注を任せてくれれば、ただで選挙を手伝ってあげる』と誘われました。ですが、胡散臭いと感じて断りました。Mさんの動きに異を唱えるのは難しい状況でしたが……。(国民民主党の)県連は政党活動で使用した印刷物もMさんの会社に発注しており、彼は組織内部でも特別な存在とみられているからです。県連は、選挙公営制度を使った選挙ビジネスを黙認しているとしか思えません。過去には、県連幹部が身内の会社に印刷物の配布を任せるよう強く指示したこともありました。その幹部自身が、政治活動の印刷物配布をめぐって不正を指摘され、政務活動費の一部を返還しています。税金がどうの、減税がどうのと言う前に自らの襟を正すべきなんです」
出納責任者就任と選挙公営の対象物発注がセットになっているとすれば、“選挙ビジネス”を疑わざるを得ない。証言を基に政治資金収支報告書を確認したところ、同党県連は2022年と23年に、M氏の会社に以下の印刷物を発注していた。県連自体が、M氏の会社と関係を有してる証左だ。
・2022年3月 機関紙号外作成料として 110,000円
・ 同月 機関紙号外作成料として 766,700円
・2023年3月 福岡市議選閣員団体用ビラ 152,790円
・ 同月 広報代行 330,000円
・ 8月 民主プレス号外 58,300円
26日、M氏に三つの選挙(*M氏側の指摘で「政令市の二つの選挙」の間違いであると確認)で出納責任者を務めていたことの確認を求めたところ、「覚えてはないですけど」。公営対象物の発注先について“M氏の会社で間違いないか”と聞いたところで「口頭で聞かれても困ります。詳細は確認しないと分からない。メールで質問内容を送らなければ答えない」として即答を避けた。「明日配信予定」との通告には憤然とし、「知ったこっちゃない」と返された。衆院選は昨年の10月、北九州市議選は今年の1月だ。本当に出納責任者に就任したことや、自身の会社が受けた仕事についての記憶が定かでないないというのか?念のため、M氏が指定した問い合わせフォームに、下の質問事項を送付しており、回答があれば本稿に追記する予定だ。
・昨年の衆議院議員選挙で福岡4区から立候補して落選し、比例復活で初当選した許斐亮太郎議員、福岡市議会議員選挙で西区選挙区から立候補し落選した松本玲子氏、北九州市議選で小倉北区選挙区から立候補し初当選した宇都宮亮氏ら3人の選挙で、貴殿が「出納責任者」を務めていたことになっていますが、間違いありませんか?
・当該3つの選挙で、それぞれの候補者陣営が、貴殿の会社に選挙公営にかかる印刷物等の仕事を発注していたということで間違いありませんか?
【お詫びと訂正】
本稿中、許斐亮太郎氏陣営の出納責任者をM氏としたのは誤りで、許斐氏自身が出納責任者でした。また、「松本玲子氏」とあるのは「松本怜子氏」の誤りです。お詫びし、見出しも含めて訂正いたします。以上は本稿中でM氏とした人物からの抗議と、昨日送信されたというメールの回答を再送していただいたことから判明したもので、同氏からは修正、削除、謝罪の申し入れがありました。間違いがあったことについては、関係者及び読者の皆様にお詫び申しあげます。しかしながら、満額発注の問題点や関係者の証言については配信記事の通りであり、記事の削除は行いません。(2025年6月27日19:45)
ニュースサイトハンター中願寺純則