ヤジ訴訟に弁護士費用など375万円|道警・国賠で使われた血税

本サイトでたびたび報告している首相演説ヤジ排除事件で、排除行為の違法性を問われて地元市民から裁判を起こされた北海道警察が、控訴審の終結までに計375万円の裁判費用を使っていたことがわかった。筆者の情報公開請求を受けた道警が「監察官室の情報提供」という形であきらかにした。

◇   ◇   ◇

筆者は本年9月下旬、ヤジ訴訟など道警がかかわる複数の裁判の費用がわかる公文書の開示を道知事に請求した。その後、当該公文書を管理しているのが知事部局ではなく警察本部であることがわかったため、以後は道警とやりとりする形となったが、担当者によれば対象文書は厖大な量になり、すべて開示するのは現実的ではないという。相談の結果、通常の「警察本部長への公文書開示請求」ではなく「監察官室長への情報提供申し出」という形をとり、道警側が公文書の内容をまとめた一覧表を新たに作成・交付することになった。その一覧は10月下旬にも一度交付されたが、そこで筆者の一部請求漏れが判明、改めて提供申し出をやり直し、結果的に11月22日付で最終版が交付された。

一覧によると、道警がヤジ訴訟に使った裁判費用は原則として弁護士への支払いのみ。札幌地方裁判所の一審では2件の裁判(原告2人)それぞれに110万円ずつ、計220万円の費用が発生したが、いずれも全面敗訴した道警は地裁判決を不服として札幌高裁に控訴、さらに費用がかさむこととなり、控訴審では155万3,500円が上乗せされた。合計すると、375万3,500円。本サイト既報の通り、控訴審は一審原告一部敗訴の結果となり、双方ともに最高裁へ上告を申し立てているため、道警が負担する裁判費用はさらに増えることが確実となっている。

先に述べたように、裁判費用のほとんどは弁護士への支払い。では、控訴審で傍聴人の失笑を買った「笑撃ビデオ」の製作費などはどこから捻出されているのか。情報提供申出人として筆者が担当課に問い合わせたところ、ビデオの制作に携わったのはすべて現職の警察官らで、機材もすでに道警が所有している物を使ったため、とくに費用は発生していないという。公務員が職務中に作業にあたっている以上、その時間の人件費も裁判に充てられたと考えることができるはずだが、道警としてはあくまで裁判費用イコール弁護士費用と見做しているようだ。

訴えを起こした1人・大杉雅栄さん(35)はこれに「裁判のために本来の業務を抜けてる分とかが計算されていないので全体像は見えないけど、まあ無駄ですよね」と呆れ、「この費用をむしろ原告側弁護団に支払うべき」と話す。いうまでもなく、原告側の代理人らは原則手弁当。また一審判決で札幌地裁が道警に支払いを命じた損害賠償は計88万円で、道警側が二審で使うことになった裁判費用のほぼ半額。道警が控訴せずに判決を受け入れていれば、一審原告に賠償金を支払ってなお道民の血税を大幅に節約できたわけだ。

なお筆者はヤジ裁判の費用と併せ、同じく道警が訴訟当事者となっているヒグマ駆除ハンターの狩猟免許取り消しをめぐる裁判についても費用の開示を求めた。こちらの訴訟も一審では原告側が実質全面勝訴しており、道警の控訴により二審の審理が続いているところだが(既報)、一審終結までに費やされた費用は82万円に上ることがわかっている。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

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