被害者は町民|大任町永原町政による「血税」収奪の構図

福岡県大任町と田川市に、公共事業関連の文書などを情報公開請求したのが2021年6月14日。請求の翌日に田川市・郡を選挙区に抱える武田良太総務大臣(当時)の秘書から「(情報公開請求を)なかったことに」との電話があったことで、記者は“不正”を確信。以後、2年を超えて大任町や田川市の疑惑を追及してきた。

疑惑の中心にいるのは、武田衆院議員の選対本部長でもある大任町の永原譲二町長。義弟である二場公人氏(4月の市長選で落選)が市長を務めていた田川市はもちろん田川郡内にある他町村の行政権益まで壟断し、「永原独裁」といわれる状況を作り上げた。

指定暴力団「太州会」の企業舎弟だった人物が町長になり、福岡県町村会の会長(今年6月の会長選で落選)から全国町村会の副会長(退任)にまで上り詰めたわけだが、力の源泉は「暴力とカネ」。コントロール下に置いた人間を建設業者に仕立て、町内の公共事業をそうしたダミー業者や側近企業を集めた談合組織「田川政策研究会」の加盟メンバーに独占させる仕組みを確立し、町政を牛耳ってきた。(*下の図参照

ダミー業者を使う以上、その連中にはもちろん、下請けに入って実質的に工事を行う側近業者への分け前も確保しなければならない。当然、事業費は積算段階で何割か上乗せされる。極めて悪質な血税の収奪に他ならないが、不正が露見するのを防ぐため、請負業者名が分かる施工体系図や積算書、入札結果表などを隠すという二次的な不正が必要となる。永原町長が入札結果を非公開にし、施工体系図や積算書を「ない」と主張してきたのはそのためだ。

ハンターはこれまで、福岡県の出先に提出された建設業者の工事経歴書から、ダミー業者と側近業者の請負実績を検証。不正の実態を何度も報じてきた。公共事業ピラミッドの頂点にいるのが永原町長であることは言うまでもない。

おさらいになるが、仕組みはこうだ。まず、永原側近として町長選の出納責任者を務めていた元暴力団組員の藤吉俊数という人物や、ダミー業者「信栄建設」の代表で全日本同和会地元組織代表でもある町長の親族・永原太氏などから、「今度はおたく」などと落札予定の業者に連絡が来る。

連絡を受けた業者は、役場に出向いて「仕様書」を受け取り、所定の書類に受け取りのサインをする。役場の書類には町が指名した業者名が記載されており、書き写す。その後、はじき出した入札金額を入札書に記入し、封筒にその写しを入れて他の入札参加業者を1社ずつ回り挨拶し、封筒ごと相手業者に渡す。開札日、入札書の写しを渡されていた業者は、それより高い金額で応札し、町長側からのお墨付きをもらった業者が自動的に落札者となるという寸法だった。明らかな談合だ。

こうした談合システムのもと、元請として数多くの工事を落札してきたのがダミー業者と永原町長の側近企業。把握可能だったものに限定されるが、これまで報じてきたそれぞれの受注実績は次のようになる。

 大任町では、平成27年(2015年)から令和3年(2021年)にかけ、分かっているだけでも、たった12の業者が208件もの工事を受注。契約額は約40億円以上にのぼっていた。永原町長及びその周辺の関係者だけが、税金を原資とする公共事業を独占している格好だ。ただし、ダミー業者や側近企業以外で大任町の発注工事を請負っている業者も、ほとんどが前述の「田川政策研究会」に年会費48,000円を支払って加盟しており、永原町政と無関係の業者は仕事が取れない状態だった。

もっともタチが悪いのはダミー業者で、建設資材どころかスコップの1本さえ保有していないケースばかり。代表者が建設現場に出ることはほとんどなかったという。それもそのはず、調べたところ、ダミー業者の代表者はスナックのママやトラック運転手などで、実際の工事に携わった経験のない人間ばかりだった。

他の自治体ではあり得ない工事実態の前提となるのは、建設業法が禁じる「工事の丸投げ」と「官製談合」による入札妨害である。被害者は、食いものにされてきた町民なのだが、永原町政による不正な公共工事の実態を調べて報じようとするメディアが皆無だったため、悪質な税金詐取行為が野放しになっていた。

やりたい放題を続けてきた永原町長が発覚を恐れているのは、建設工事絡みの二つの事案である。まず、ダミー業者の誰かが口を割り、不正の事実が証明されること。もう一つは、田川市とのトラブルの原因ともなっている、三つのごみ処理関連施設整備事業の裏が暴かれることだ。その二つの事案が密接に絡むのが、ごみ処理関連施設整備事業とそれに付随する形で生み出された土木工事なのである。

実は、ダミー業者と側近企業が受注した工事は前掲の表にあるものがすべてではない。業者が県の出先に提出する工事経歴書には、受注したすべての案件を記入する必要がないからだ。従って、三つのごみ処理関連施設整備事業に関わった各業者の詳しい受注状況を調べるには、大任町に情報公開請求するしかない。だが同町は、一昨年9月に条例を改悪、開示請求権者を1年以上居住した町民だけに限定したため、ハンターの記者も手が出せなくなっていた。

そうした中、国が同町の入札結果非公開を「違法」と断じたことで、事態が動く。永原町長が、不十分ながら入札結果の公開に応じる姿勢に転じたことを受けて、ある大任町民が、残された人生をかけて重い扉をこじ開けたのである。武器となったのは、やはり「情報公開」だった。

次稿で、永原町政の闇に別の角度から光をあてることになった文書の記載内容に従って、ごみ処理施設関連工事を食い物にするダミー業者と町長側近企業、そして永原町政の実態を明らかにする。

(以下、次稿)

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