阪神・オリックス優勝パレードの熱狂と「維新の会」への冷たい視線

阪神タイガースとオリックス・バファローズのリーグ制覇を祝して11月23日の祭日に大阪と神戸でパレードが開催された。

大阪ではメインストリートの御堂筋が会場。多くの人たちが熱狂する中、午前11時に大阪府の吉村洋文知事が駆け付け、挨拶に立った。「優勝おめでとうございます」――沿道にあふれかえる人波を前に、勝ち誇ったような表情だった。

一方で、ボランティアとして参加を余儀なくされた大阪府の職員・Xさんは大声をあげて、パレードがまったく見えない場所で観客の整理に懸命だった。

◇   ◇   ◇

パレードは、《兵庫・大阪連携「阪神タイガース、オリックス・バファローズ優勝記念パレード」~2025年大阪・関西万博500日前!~》という長ったらしいタイトル。既報のように、万博は開催すら危ぶまれる状況で、阪神とオリックスを政治的に利用し、万博のイメージアップ戦略に使おうという魂胆が丸見えだった。

前明石市長の泉房穂氏はX(旧ツイッター)に、“『優勝記念パレード~2025年大阪・関西万博500日前!~』なんて名称はやめていただきたい。素直に喜べなくなってしまう”、“『38年ぶりの阪神日本一』を心から喜んでいるファンの1人として、吉村知事にお願いしたい。パレードを“万博”で汚さないでいただきたい”と吉村知事を批判する投稿。これには、「いいね」が2万3千もついた。

この日、オリックスと阪神の監督や選手を前に祝辞を述べた吉村知事は、「万博」には触れずじまい。しかし、着用していたジャケットの胸元にはしっかりと『2025 EXPO』のロゴを入れ、御堂筋の沿道の一部には万博のネオンサインがあったりと、こっそりPRしていた。

もっとも批判を浴びたのが、パレードにおける大阪府職員のボランティア。1,500人を募集して警備や誘導に当たらせたが、兵庫県や神戸市が休日出勤扱いにしたことで、好対照となった。

前出のXさんは朝8時半に集合して、午後4時に終わるという日程を伝えられていたという。不満げにこう話す。
「ボランティアには応募したくなかった。しかし、上司が『上の者から行くと言わないと下の職員は応じないから』と変な理由で説得されてしぶしぶですよ。阪神ファンだから、家でテレビ見ながらと思っていたのですがね」

Xさんが配置された場所は、パレードが行われる御堂筋ではなく、少し離れたところ。観客誘導、整理の担当だった。

「肝心のパレードは、まったく見れませんでした。それは仕方ないことですが、やっていることは完全に仕事です。ボランティアでやる業務ではない。大阪では午前にオリックスのパレード、午後が阪神で1時間ほど休憩がありました。しかし、20万人も来ているので、コンビニにいっても食べるものがスナック菓子とか、スイーツしか残っていません。しょうがなく、同僚とおかきやポテトチップを口にしてまた午後にはボランティアへ戻りました。せめて有料でもいいから、昼ご飯の手当くらいしてくれてもいいでしょう。警備や誘導の経験もなく、慣れない仕事で足が棒になるほど疲れました。素人のボランティアが1,500人もいて、事故や大きなケガがなかったことだけが救い」(Xさん)

Xさんの手元に残ったのは、非売品の白い記念ジャンパーと帽子だけ。メルカリやヤフオクでは、パレードの終了後から非売品の出品が相次ぎ、2万円以上の値段がつくケースもあった。

「同僚はすぐに出品して、1万円以上で売れたと喜んでいた。お金もほしいけど吉村知事の無茶なボランティア募集への当てつけという側面がけっこうある。私は子どもがほしいというのでプレゼントしましたけど。家に帰ってテレビをみたら吉村知事の様子が映っていた。車に乗りマイクを手に挨拶している吉村知事は公務でしょう。こっちは、ただ働きでこき使われこれってどういうことなんだと思いましたよ」(同)

パレードが終わり取材に応じた吉村知事は「ファンの皆さんも喜んでもらえよかった。大阪、関西の元気につながる」と自画自賛。万博については「万博とはパレードを切り離した。ただ大阪のこの賑わいが1年半後の万博につながれば」と胸を張った。

パレードの費用は総額で5億円。吉村知事はクラウドファンディングで集めると豪語していたが、パレードの時点で集まったのは1億円に満たない9,700万円。残りは協賛企業から寄せられた4億円の寄付で賄ったという。この点ついても、吉村氏の強弁は聞くに堪えない。
「クラファン、初めての取り組み。その中で結果1万人が約1億円を寄付した。目標は5億円で、そこまで達していないが、クラファンは大成功。批判されても(パレードは)できた。反省すべき点はない」、「ボランティアの全員が無理やり駆り出されていると書くのはメディアのやり過ぎ」などとメディアに責任転嫁。メルカリやヤフオクで非売品のジャンパーなどが出品されていることについては、「メルカリに出品して2万円とか流れていますが、最初の条件でボランティアの支給品としている。個人の所有物でいいし、メルカリに出品するのもいい。あくまでもボランティア。職務ではないので個人の範疇でいい」と述べた。ある大阪府の幹部は、ため息交じりにこう話す。
「質問もされていないのに、(パレードについての言い訳を)知事から言い出した。先々、職員から批判があがるのがよほど怖かっんでしょう。それもあって、メルカリなどへの非売品出品を容認したんじゃないですか。公務員は兼業できないのに……」

大阪のある経済団体幹部も辛らつな言葉を口にする。「クラファンで5億円と大風呂敷を広げた吉村知事でしたが、結局、最後は財界で4億円を集めざるをえなかった。万博の建設費が増え、企業へのチケットの割り当ては700億円。維新の会の失政のツケを尻拭いさせられるばかりで、まったくアホらしい」

沿道でパレードを見てい維新の会に所属する大阪市議が、正直な感想を漏らす。
「うち(維新)は、万博ですっかり人気を落としています。吉村知事はパレードを利用して支持率アップを狙ったんだと思いますよ。『96万人も集まって、費用の5億円も税金を投入していないんだ。大成功だ!』と自慢話を繰り返しているのも、政治的な思惑があってのこと。けど、万博は本当にこのままでいいのかどうか……。なんとか万博と一緒に維新が沈まないようにしないといけません」

維新の「失政」をパレードでごまかそうとする吉村知事の作戦に、騙されてはいけない。

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