【新型コロナ点描】北九州市「夏に行く券」巡る明暗

新型コロナウイルスの影響で営業を自粛している飲食店などを応援しようと、全国の自治体や商工団体が中心となって行っている前売りチケット販売。市民に支援を呼びかけ、コロナ収束後に店舗を利用してもらえるよう、チケットを発行する仕組みだ。休業中の店舗にとっては、市民から届いた“支援金”を有効に使えるため、事業継続のための大きな助けになっているというが…‥。

■目標上回る成果

福岡県北九州市が販売したのは、クラウドファンディングを利用した店舗応援企画「夏に行く券」。企画に賛同して応募した市内の事業者の中から、市民が支援したい店を選んでチケットを買い、8月以降に使う仕組み。支援額には市が15%、事業者が5%を上乗せするため、プレミアムとして20%が付くという、利用者にはお得なチケットだ。

1回目で目標金額を上回る成果をあげたため第2弾まで実施されたが、2回のチケット販売で2,700万円を集める計画だったところ、実際に販売された「夏に行く券」はなんと約1億4,500万円。延べ約8,700人がチケットを購入した計算だ。新型コロナの影響で苦境に立つ飲食店にとっては、数カ月先に見える希望だったに違いない。支援を受けてコロナ禍を乗り切った店舗は、8月以降、前売りチケットを利用する「支援者」を迎えることになる。

ある飲食店の経営者は、目を潤ませながらこう話す。
「本当に助かりました。「夏に行く券」で、何とか一番苦しい時期を、自粛期間を乗り切ったんです。皆さん方も暮らし向きが大変な時に、地域の、私たちの店を、市民が守ってくれた。言葉がありません。次は、私たちがお返しする番ですから、精一杯がんばって、喜んでもらえるようサービスに努めさせてもらいます。

■支援受けたが……

一方、せっかく市民からの支援を受けながら、長引いた自粛のため、廃業を選択せざるを得なかった店舗もある。

6月中旬、完全閉鎖を決めた店舗内部を視察する機会があったが、解体予定となった店内でみつけたのが、市から通知された支援金振込のお知らせ(下、参照)。市が支援者からの支援金十数万円を店側に振り込んだという内容だった。

この通知を受け取った店は、支援が実らず営業再開とはならなかったため、なんともせつない結末となった。事業継続の意欲があっても、休業が1か月、2か月と続く中で、先が見通せなくなったということだ。

このような場合、振り込まれた支援金はどうなるのか――?市によると、支援店舗が廃業して利用不可となっても、支援者に返金することはないという。店舗の廃業を想定していない企画であるため、いったん振り込まれた支援金の返還を求めることはない、ということだ。企画の注意事項には「支援店舗の閉店等により『夏に行く券』が利用できない事態となっても返金はできませんし、北九州市は責任を負いません。本プロジェクトの趣旨は『応援』であることをご理解ください」と明記されていた。

だが、「営業再開後に利用したい」と待ち望んでいる支援者がいたことも確か。店に出向いて、廃業を知らされるというのはショックも大きい。助け合いの精神で成り立つ仕組みであることを考えれば、閉店を決断した事業者が事の成り行きを市に知らせ、市は支援者に閉店の事実を知らせる努力をすべきだろう。

応援チケットは7月下旬ごろに発送され、8月1日から11月30日まで利用可能だ。

(東城洋平)



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