【江差看護学院パワハラ問題】自殺事案で調査進む|第三者委、関係者6人を追加聴取へ

未認定被害の事実確認が待たれる北海道立江差高等看護学院のパワーハラスメント問題で、在学生が自殺した事案の調査にあたる第三者委員会が2度目の会合を開き、亡くなった学生の同窓生ら複数の関係者への聴き取り調査を行なう方針をあきらかにした。聴取の結果によってはさらに別の関係者への追加聴取もあり得るといい、最終的な調査結果の公表は年明け以降になるとみられる。

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本サイトで報告してきた通り、道立看護学院ではこれまで江差・紋別の2校で教員による計53件のハラスメントが認定されている。2019年に江差の在学生が自殺した一件はその中に含まれていないが、当時を知る同窓生らは実習などで教員からのハラスメントがあったことを憶えており、また江差の前学院長が「パワハラ虐めがあった」と遺族に謝罪していたことがわかっている。このため本年5月になって遺族が改めて事実調査を求めるに到り、道がこれを受ける形で新たに第三者調査委員会を設置、10月に初会合が設けられたところだった。

初会合当日の午後には遺族である母親(46)が同委らの聴取に応じ、約2時間にわたって被害を訴えた。参加した委員らは、今後の調査について次のような思いを述べている。

「調査では、ご遺族の哀しみについてもお話しいただきました。そういう思いにできるだけ寄り添い、丁寧に聴き取りをしていかなくてはならないと思っています」(山谷敬三郎委員)

「長時間にわたった中、非常に冷静にお話しいただき、私たちもよく理解することができたので、今後の調査に活かせるものと考えています」(野谷聡子委員)

11月15日夕に設けられた第2回会合では、この時の聴取を通じて得られた情報をもとに、新たに聴き取り対象となる関係者(教員や学生など)6人を特定することとなった。会合後の記者会見で、座長の須田布美子弁護士(札幌)は次のような方針を明かしている。

「最初から『この人とこの人に聴き取りを』と決めているわけではないので、まず(今回の6人を)特定した上で、今後その聴き取りの中で出てきた人もまた新たな聴取対象者として考えていく、という形になろうかと思います」

6人の聴取時期については「できるだけ年内に」と須田座長。おそらくはそこでまた新たな対象者が追加されることになり、最終的な調査結果の取りまとめは年明け以降になる可能性が高い。調査の進捗によっては遺族への再聴取や中間報告などもあり得るといい、委員らは「できるだけご遺族の意向に沿って調査を進めていきたい」としている。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。
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