道警へ「意見」1年間で100件超|ヤジ排除批判、安倍氏銃撃後は反動も

2019年7月の発生以来、本サイトで報告してきた首相演説ヤジ排除事件。同事件に関連し、この1年間で一般市民などから地元警察に寄せられた意見が100件あまりに上ることが北海道警察への公文書開示請求でわかった。意見の多くは警察の排除行為に批判的な声だったが、本年7月の元首相銃撃事件後は一時的に排除を支持する声が増加、警察の対応に肯定的な意見が全体の3分の1ほどを占める結果となった。

◇   ◇   ◇

筆者が道警への開示請求で入手したのは、昨年7月から本年8月までの約1年間に道警に届いた意見を記録した公文書、計629枚。文書は『要望・意見受理カード』と『警察安全相談受理カード』の2種で、前者には108件、後者には5件の意見がまとめられており、道警が1年間で計113件の意見を受理していたことがわかった。

同旨の開示請求は昨年11月にも行なっており、排除事件直後の19年7月から昨年7月までの2年間で計931件の市民意見があったことがわかっている(既報 )。このうち全体の9割以上となる904件が最初の1年間に集中しており、2年目には27件と鎮静化していた。続く3年目の数字が再び増加に転じて100件を超えたのは、この間に排除問題をめぐる大きな2つの動きがあったためと考えられる。具体的には、排除被害者が道警を訴えた国賠訴訟の一審判決言い渡し(本年3月)、及び奈良県で発生した安倍元首相銃撃事件だ(本年7月)。

それまで平均して1カ月に1件ほどに留まっていた市民意見は、国賠判決のあった3月25日からの1カ月間で73件に急増、その多くが排除行為を違法と断じた札幌地裁判決を支持し、道警に控訴断念を申し入れるものだった。おもなものを下に引いておく。

《あなた方、もう一度憲法を読み直した方が良いぞ。違法なことしてんだぞ》(3月25日、以下同)

《安倍さんのヤジについて、とってもいい判決だと思いました。安心しました。警察は、知らず知らずのうちに権力をかさにきている感じになっていますよ》

《警察の仕事は良いと思いますが、余計なことに血税を使われるのが非常に残念です》

《あんたらがやった違法行為で賠償に使われるんだから説明すべきだし、違法なことをした理由を国民に話すべきだろ》

《これを控訴しないように是非していただき、この判断に従ってください》(3月26日)

ところが、判決から3日ほどが過ぎると道警支持の声が批判意見を上回る逆転現象が起こる。だがそれらの意見の多くは、ヤジを選挙妨害と断定するなど、一審判決の意義をよく理解してないものだった。

《あのヤジは、安倍総理の表現の自由を妨害する、偽計業務妨害にあたる》(3月28日、以下同)

《現場では排除しなければならない理由があったのでしょ。後々判断された今回の結果を持ってこれからの演説現場で萎縮してはいけませんよ》

《この判決が通るのであれば、今後選挙運動のための演説を大声のヤジで妨害しても正当な行為と認められて、他の選挙にも影響を与えてしまう》

これが再び逆転するのは、道警の控訴が報じられた4月上旬のこと。同1日以降、道警には怒りの電話やメールなどが相継ぐことになる。

《控訴したっていうじゃないか。とんでもないことだな》(4月1日、以下同)

《そういう姿勢は間違いで自分の立場ばかりを考えていることになる。上告するにしても税金を使うんだろう》

《これじゃロシアとか北朝鮮みたいだろう。国民みんなが声を上げるようなことが出来なくなるだろう》

《税金の無駄遣いです。これまでの裁判費用や88万円の賠償だって税金でしょ。控訴なんてもってのほかなんですよ》

《何を持って、第一審を不服として控訴するのか。これは意見ではない。質問である。答えなさい》

裁判の影響による意見の急増は4月下旬までに収束、5月からの2カ月間に届いた声は僅か4件に激減した。2度目の急増がみられたのは、安倍元首相銃撃事件が起きた7月上旬。しかしこの時は国賠判決ほどの反響はなく、数字でいえば3分の1ほどの増え幅に留まった。事件後の1カ月間で届いた声は、計26件。道警を支持する意見が多くを占めることになったのは、事件の衝撃の大きさによると推測できる。

《これは、お詫びの電話です。すいませんでした。道警が正解でした》(7月8日、以下同)

《もし北海道警察ならこんなことにならなかったのでは、と先見性を感じます》

《事件を起こすか分からない不審者を察知して、排除することは大事だ》(7月9日)

ところがこうした支持の声も、事件から時間が経つほどに「なんぼかは北海道警察にも責任がある」「道警がやりすぎたとは思う」などとトーンダウン、さらには批判への揺り戻しが起きることとなる。

《どういう心境で撃ったかって分からんけど。でも、北海道警も、あんぐらいのことで逮捕しない方が良かった》(7月8日)

《やっぱり、北海道警の勇み足だって思ってます》(7月13日)

《警察が「間違えまして、すいませんでした」と言わなくちゃ》(8月1日)

筆者は一連の文書を10月5日付で道警に開示請求、1度の決定延長を経て11月2日付で一部開示決定を受け、同9日に対象文書の写しを入手した。1年間に寄せられた113件の市民意見を紐解くと、うち101件を警察本部の警察相談課が受理、次いで4件を札幌中央警察署が受理したほか、本部総務課、同地域企画課、同外事課、同少年課、函館方面本部、釧路方面本部、北見署、及び留萌署でそれぞれ1件受理していたことがわかった。筆者の主観的な分類では、道警に批判的と読み取れる意見は半数以上の67件に上り、逆に好意的な意見は39件に留まると判断できた。残る7件は支持・不支持がはっきりしない意見だった(検証の要望や質問など)。

筆者は現在、国賠一審判決のあった札幌地裁へも同様の開示請求(司法行政文書開示申し出)を行なっているところで、近くこちらも一部開示決定を得られる見込みだ。特筆すべき事実がわかり次第、いずれかの機会に報告したい。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。
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