児童わいせつの元警察官に有罪判決|事件は未発表、検察も当初は不起訴に  

現職警察官だった頃に幼女へのわいせつ行為を繰り返し、強制わいせつの罪に問われていた札幌市の男(20歳代)に3月19日、札幌地方裁判所(吉戒純一裁判長)が懲役3年・執行猶予4年の有罪判決を言い渡した。事件は3年前に捜査の対象となっていたが、検察が不起訴処分としたことで容疑者の警察官は当初、刑事裁判を免れていた。

被害女児の親族が不起訴処分に不服を申し立てたところ、第三者機関である検察審査会が「不起訴不当」の議決を出し、これを受けた札幌地方検察庁が再捜査を経て昨年12月に起訴に踏み切っていた。

勤務先だった北海道警察は送検後、当事者の警察官を「停職6カ月」としたが、この処分を報道発表せず、また事件そのものも公表しなかった。3年を経て有罪判決が言い渡された時点でなお、道警はいずれの事実も発表の対象としておらず、未発表の理由もあきらかにしていない。

◇   ◇   ◇

強制わいせつで有罪判決を受けたのは、2021年10月まで道警本部に勤務していた元巡査長の男。道警の処分記録や札幌地検の起訴状などによると、元巡査長は同年6月から同中旬にかけ、同居していた養女に口淫を強いるわいせつ行為を繰り返した。養女は当時の妻の連れ子で、そのころ満6歳(小学1年生)。事件は、被害者である同養女が祖父母に「舐めたら抱っこして遊んでもらえる」などと打ち明けたことで発覚した。

祖父母らの申告を受けた道警捜査一課は、被害者と同じ屋根の下で寝起きする元巡査長の身柄を拘束せず、在宅捜査の形で調べを続けた。結果、同年10月6日付で書類送検。併せて、監察官室は元巡査長に「停職6カ月」の懲戒処分を言い渡した。

先述のように、この送検と懲戒処分の事実は、今に到るまで報道発表されていない。のちに筆者が寄せた取材対応依頼に対しても、道警は「発表案件ではないためお答えを控える」と対応拒否の姿勢を見せている。

事件を引き継いだ札幌地検は年を跨いだ22年3月8日、元巡査長の不起訴処分を決める。元巡査長はこの時点で道警を依願退職しており、肩書きが警察官から会社員に変わっていた。当時の札幌地検は道警と同様に事件の概要を明かそうとせず、筆者の質問にも「発表案件ではない」ことを理由に回答を拒んだ。

それから10カ月あまりを経た昨年1月19日、検察の処分の適正性を検証する札幌検察審査会が、元巡査長の強制わいせつ事件について「不起訴不当」を議決したと発表。審査申し立て人が被害女児の祖父母であることを明かした上で、元巡査長には「相当程度、嫌疑が認められる」とし、その犯行を「養父の立場を利用した児童に対する重大な犯罪」と指摘、「不起訴処分との結論には納得ができない」と検察の判断を強く批判した。札幌地検は再捜査を余儀なくされ、議決後の取材には「新たな視点で捜査をして結論を出す」と答えることになる。

さらに10カ月を経た昨年12月27日、同地検は改めて元巡査長を起訴。この時点で、幼い女児が深刻な性的被害を受けてから2年半が過ぎていた。事件がようやく裁きの場に持ち込まれたのは、そこからさらに2カ月を経た本年2月29日のこと。初公判の法廷では、被害女児の母親が意見陳述で次のように訴えた。

「長女が話してくれたことで事件が発覚したけれど、発覚していなければエスカレートしていたに違いないと思うと、ぞっとします」

陳述によると、加害者の元巡査長は事件後、謝罪の目的で元妻へ送った手紙に「(被害女児に)嫌がる素振りはなかった」「また一緒に暮らしたい」などと書いてきたという。この言い分に絶句した元妻は加害者のつきまといを恐れ、長女を車で学校まで送り続けなくてはならなくなった。陳述は、次のように続いている。

「まだ6歳の長女は、父親にさせられたことが悪いことかどうかも、ママに言っていいのかもわからないほどに幼かったのです。『舐めたら抱っこしてくれるの?』と訊いた長女。『無理やりでなく了承の上』と言いますが、それをさせる言動、交換条件を出す、それらすべてが『無理やり』であり『支配』であることが、わかりませんでしたか」

元妻は「性暴力は魂の殺人」と指摘、元巡査長に対して「罪の重大さを一生かけて理解し、後悔して欲しい」と求めた。

検察は論告で「動機に酌量の余地はなく、犯行態様は悪質で常習性も窺える」と指弾、「被害結果は重大で、予防の見地からも厳罰が必要」と懲役3年を求刑。対する弁護側は「暴行や脅迫を伴わず、凶器もなく、計画性もなかった」「同居両親が生活を監督すると約束しており再犯のおそれもない」などとして執行猶予つき判決を求めた。

3月19日午後の判決公判で言い渡されたのは、懲役3年・執行猶予4年の有罪判決。札幌地裁は「養父である被告人を信頼し愛情を求める被害者の判断能力の未熟さにつけ込んでわいせつ行為に及んでおり、悪質」と難じ、元巡査長の罪を「犯行の態様も強度のもので、単発的・偶発的な犯行ではない」と判断、「自己の性欲を満たすために被害者の人格を踏みにじるものとして厳しい非難に値する」とした。また「被害者の今後の心身の成長に及ぼす悪影響が懸念され、母親の処罰感情が強いのも当然」と、求刑通り懲役3年の刑が相当と結論づけた。一方、弁護側が主張するように元巡査長が現在は両親の監督下にあり、また前科・前歴もないことから、執行猶予をつけるのが相当とした。

おぞましい犯行から3年弱を経てようやく辿り着いた結論。これで被害者の傷が癒えることはないとはいえ、警察と検察の手で一時は闇に葬られた事件が被害者親族の異議申し立てで陽の目を見ることとなったのは、不幸中の幸いだったと言ってよい。繰り返すが、無抵抗の6歳女児にわいせつ行為を強い続けた警察官を逮捕せず、免職にもしなかった北海道警察は、今に到るまで事件・懲戒処分ともに一切公表せず、未発表の理由もあきらかにしていない。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

 

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