7月12日に投開票される鹿児島県知事選挙の序盤戦で、再選を目指す現職の三反園訓氏(62)が、元職の伊藤祐一郎氏(72)と新人の塩田康一氏(54)に並ばれる展開となっていることが分かった。三反園氏を推薦した自民党関係者の間に衝撃が走っている。
期日前投票を済ませた有権者への聞き取りや、県内各地での取材を通じて見えてきたのは、苦戦する現職陣営の姿。今月中旬頃まで他候補を上回る支持を得ていた三反園氏が、伊藤祐一郎前知事や新人で前九州経済産業局長の塩田康一氏に並ばれた格好だ。大手メディアが鹿児島市内で行った期日前投票の出口調査でも3人が競り合っている状況だという。
これまでに実施された関係機関の情勢調査によれば、4月から5月にかけての三反園氏のポイントはいずれも38~40。新型コロナウイルスの感染拡大を受け国内が緊張する中、移動の自粛を訴えていた知事自身が、後援会の事務所開きに東京から森山裕自民党県連会長と野村哲郎参議院議員を招いていたことや、県連が三反園訓氏を支援するよう所属県議に要請した際、茶封筒に入れた現金30万円を渡していたことなどが次々と判明。マイナス材料が目立ち始めた6月になって支持が急落し、20ポイント台後半の数字になっていた。
さらに支持の落ち込みを招いたのは、告示直前、三反園氏が複数の自治体首長に事業予算を盾に集票を迫っていたことを報じた地元紙南日本新聞のスクープ記事。公選法が禁じる「公務員の地位利用」と「事前運動」の疑いが浮上し、知事本人が刑事告発されかねない事態となっている。
苦戦を象徴するように、29日に鹿児島市卸本町にあるイベント施設で行われた現職陣営の演説会に集まったのは数十人。陣営側は「連絡ミス」としているようだが、現場を見ていた政界関係者からは、あきらめの言葉が漏れた。
「ダメだな、この選挙は。現職がここまで苦戦するとは、誰も考えていなかったろう。三反園には伸びしろがなく、一方で伊藤さんや塩田さんにはまだまだ票を増やす余地がある。批判のネタばかりだった現職を強引に推薦した外薗(勝蔵)議長や県連会長の森山さんは、どう責任を取るかを考えておいた方がいい」
鹿児島知事選には前出3人の他、元鹿児島大特任助教の有川博幸氏(61)、内科医の横山富美子氏(73)、元民放アナウンサーの青木隆子氏(57)、元高校教諭の武田信弘氏(66)などが立候補している。