廃棄された用地選定過程|田川広域水道企業団・新浄水場建設工事に不正の臭い(6)

福岡県田川市、川崎町、糸田町、福智町の1市3町で構成する一部事務組合「田川広域水道企業団」への情報公開請求で入手した資料から明らかになった、同企業団が整備を進める新浄水場(仮称・白鳥浄水場)建設工事の疑惑。チラつくのは同工事の建設予定地や施工業者を決めた際に、企業団トップを務めていた二場公人前田川市長の義兄、永原譲二大任町長の影だ。

建設予定地の一部は永原氏の女婿が代表を務める「有限会社 譲」が保有していた物件。永原氏と関係の深い飛島建設が請負った土木建築工事の下請けには、「有限会社 譲」と永原氏の実子が社長の「株式会社鷹羽建設」が参加していた。現在、企業団トップの企業長は田川郡川崎町の原口正弘町長だが、永原氏への忖度なのか本件に関する対応は極めて不適切。「隠蔽」を狙ったとしか思えない姿勢だった。

企業団側が隠していた文書は次々に暴いた。ただし、あり得ない形で「廃棄」されていた重要な資料がある。

■不透明な新浄水場建設用地の決定過程

昨年10月、ハンターが田川広域水道企業団に開示を求めたのは、新浄水場建設工事の業者選定に関する資料と“建設用地を選定するまでの過程が分かる文書”。これに対し企業団側が「不存在」だと主張したのが、田川市が建設用地を選定した際の過程を記した文書だった。

唯一残されていたのは、当時の企業長・二場公人氏が、田川市、川崎町、糸田町、福智町に発出した建設候補地の選定依頼と各自治体からの回答だ。下にその依頼文書と回答書の画像を示す。

建設候補地があると回答したのは田川市だけ。下が回答文である。

 「別紙に示します場所を建設候補地として選定しましたので……」とある。当然「選定」の過程が残されていなければならない。『田川市は、どのような理由と過程で、新浄水場の建設地を現在の場所に選んだのか』という市民の問いに答える義務があるからだ。しかし、企業団の回答は「不存在」だった。あり得ない事態だ。

■公文書毀棄の疑いも

“なぜ用地選定過程という重要な情報が不存在となるのか”――。ハンターの追及に対する企業団側の主張は、どうみてもタチの悪い「隠蔽」を示唆するものだった。「保存期間3年の文書だったから」という信じられない理由で「廃棄した」というのだ。担当者が示してきたのが下の文書管理規定。用地選定過程の記録を勝手に「庶務関係文書」と決めつけ、「3年経ったから処分した」という言い分だ。公文書毀棄の疑いが生じるのは言うまでもない。

「廃棄した」という企業団側の主張が事実なら、市議会や市民から「新浄水場の整備地は、どのように決まったのか」と聞かれた村上卓哉田川市長は、「わかりません」と答えるしかない。もちろん、市が「有限会社 譲」の土地を調整池の用地に選んだ正式な理由も藪の中である。

新浄水場に投じられる事業費は150憶円。原資が税金であることは言うまでもない。“進行中の大型公共事業の用地が、どのような過程で決められたのか不明”などという話は聞いたことがない。

新浄水場に関する企業団の実務を取り仕切っていたのは、業者選定の責任者でもあった田川市の前副市長・松村安洋氏(現・田川地区消防組合副管理者)だという。松村氏と永原町長は極めて近い関係だと言われており、ハンターは昨年、それを象徴するとんでもない出来事があったことを掴んでいる。

ちなみに田川広域水道企業団は昨年、“経営の健全性が確保されており、かつ、他の地方公営企業の模範となる取組を 行っている”として「令和5年度優良地方公営企業総務大臣表彰」を受賞した。しかし、本シリーズで報じてきた通り、企業団の経営の健全性は確保されておらず、むしろ疑惑まみれ。こんな団体が、「他の地方公営企業の模範」になるわけがない。

【参照記事】
『隠蔽』— 田川広域水道企業団・新浄水場建設工事に不正の臭い
「入札参加資格」への疑念 — 田川広域水道企業団・新浄水場建設工事に不正の臭い(2)
永原大任町長と請負業者の深い縁 — 田川広域水道企業団・新浄水場建設工事に不正の臭い(3)
田川市議会議長に公選法違反(特定寄附)の疑い |広域水道企業団・新浄水場建設工事に不正の臭い(4)
下請けに大任町長ファミリー企業2社|田川広域水道企業団・新浄水場建設工事に不正の臭い(5)

 

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