『隠蔽』— 田川広域水道企業団・新浄水場建設工事に不正の臭い

 自治体や一部事務組合が露骨な隠蔽に走った場合、裏にあるのが「不正」であることは言うまでもない。

 ハンターが福岡県田川市、川崎町、糸田町、福智町の1市3町で構成する一部事務組合「田川広域水道企業団」に、田川市内で整備が進む新浄水場=白鳥浄水場(仮称)の建設工事関連文書を情報公開請求したところ、開示までの過程で、意図的としか思えない何件もの隠蔽が発覚した。

■“あるべき文書”、当初は開示拒否

 新浄水場建設工事に関する不正の告発を受けたハンターは、今年10月、田川市水道企業団及び田川市に対し、新浄水場建設整備事業に関する以下の内容を情報公開請求した。

・新浄水場の建設用地を選定するまでの過程が分かる文書及び土地取得に関する契約書、土地の鑑定書、各種決裁文書。
・新浄水場建設工事の業者選定過程が分かるすべての文書(参考見積り、積算書、施工体系図、各種決裁文書。
・新浄水場整備工事業を進めるにあたって業務委託したコンサルの選定過程が分かる文書、契約書、決裁文書、成果物。

 田川市水道課が保有していた文書は、業務を水道企業団に移管したということで、ほとんどの対応は企業団の総務課ということになった。11月、開示された文書を閲覧した上で、必要と判断した部分の写しの交付を要求。郵送されてきたものを精査してみると“あるべき文書”が、ない。

 再度企業団を訪ねて開示対象となっていた文書の確認を行ったが、やはり“あるべき文書”が見当たらない。担当者に「取得した土地に関する文書は、郵送されてきた3件だけか」と尋ねるが、「それがすべて」と言う。そんなはずはない。記者は、「他にもあるはず」と追及すると、「調整池の土地もあるが、それは本件請求である『新浄水場建設整備事業に関する文書』には当たらない」と回答した。開示拒否である。ところが……。

■隠されていた土地の所有者は永原大任町長のファミリー企業

 新浄水場建設工事の契約は、工事の内容によって、下のように大きく3つに分けられている。
 【土木・建築】白鳥浄水場(仮称)及び大浦調整池建設工事・・・契約金額:55億7,700万円
 【機械設備】白鳥浄水場(仮称)機械設備設置工事・・・契約金額:49億600万円
 【電気設備】白鳥浄水場(仮称)外電気設備設置工事・・・契約金額:23億8,700万円

 仕様書などで工事内容を確認するまでもなく、工事名を見れば土木・建築工事の中に大浦調整池の建設工事が含まれているのは瞭然だ。当然、調整池の用地取得に関する文書は、開示請求の内容に合致する。企業団側の「調整池の土地もあるが、それは本件請求である『新浄水場建設整備事業に関する文書』には当たらない」は真っ赤なウソ。ただちに開示するよう、厳しく申し入れたのは言うまでもない。

 問題の土地取得に関する追加資料は、5分と待たずに現れた。契約は3件。1件は市有地で個人所有地分が1件、残り1件がある会社との契約だった。840万6,594円で企業団が取得した約4,600㎡の土地は、永原譲二大任町長のファミリー企業「有限会社 譲」が所有していた物件だった。

 有限会社譲の株主は、永原氏の実子で株式会社鷹羽建設の代表者。水道企業団は、150億円もの公費が投入される新浄水場建設工事と、田川市・郡で暴力支配を続けてきた永原町長との結び付きを知られないよう、問題の土地取得を隠したのではないか――?そうした疑念を持たれても仕方がない展開だ。しかも、しつこく指摘された企業団が後出ししてきた文書は、これだけではなかった。

 3件の工事契約は、すべて“1者応札”。つまり競争することなくそれぞれの受注業者が決まっている。疑惑まみれとなって田川市・郡を揺るがすごみ処理施設整備事業――「大任町ごみ処理施設」「汚泥再生処理センター」「大任町一般廃棄物最終処分場浸出水処理施設」――の3件の工事も1者応札だったが、同じ構図だ。

 ごみ処理3施設の建設には付帯工事などを入れて400億円前後の公費が投入されるが、新浄水場の整備費は約150億円。業者や権力者にとっては、よだれの出そうな話だったろう。それが土木・建築、機械設備、電気設備の入札いずれもが1者応札。おかしい。

 では、入札参加条件はいかなるもので、どのような過程を経て決められたのか?疑問が生じたため確認したが、入札参加条件を決めた過程を示す文書が、ない。企業団側を追及したところ、案の定、こうした大型公共事業では通常あり得ない杜撰な決定過程の記録が残されていた。組織ぐるみの「不正」を疑うには十分な経過だった。

(以下、次稿)

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