リコール署名偽造事件で再注目される高須クリニック「脱税」の過去

愛知県の大村秀章知事に対するリコール運動で署名の偽造が行われていた問題で、愛知県警は19日、「愛知100万人リコールの会」の事務局長・田中孝博容疑者ら4人を地方自治法違反(署名偽造)の疑いで逮捕した。

リコール運動の代表だった美容外科「高須クリニック」院長・高須克弥氏の秘書も偽造に関与していたことが分かっており、24日には高須氏の関係先が県警の家宅捜索を受けた。その高須クリニックだが、ここに来て過去の脱税事件が再注目されている。

■「指印」を押していた高須氏の秘書

集まった署名数43万筆のうち80%が偽造された署名だったとされるこの事件だが、知名度の高い高須氏に加えて、大村氏と対立関係にある名古屋市の河村たかし市長も応援団として加わっていたことから、当初、署名数はリコール成立に必要な80万筆を大きく超えるのではないかとみられていた。

「しかし」と田中容疑者のもとで、リコール活動を手伝った関係者は語る。
「高須さんと河村さんがいる時は署名がたくさん集まる。だが、地道に1筆ずつ集めようとしても、なかなかうまくいかなかった。締め切りが近づいた9月末くらいから、田中氏が『これはきつい。なんとかしなければいけない』と焦りだすようになった」

田中容疑者が、苦境を脱しようと考えついたのが署名を偽造すること。彼は10月になって、リコール活動の事務所に幹部を集め、偽造署名の計画を打ち明けたという。

「田中氏は偽造署名について、3つの団体の協力を得ようとしていた。ひとつは神道系団体、もう一つは戦没者関係の団体、そして保守系政治団体。しかし、2つの団体には拒否され、残るひとつの保守系政治団体のサポートがあって、九州での偽造署名となった。偽造署名は署名簿提出のギリギリになって、大きな段ボールに詰められて運ばれてきた。人の目がない深夜の時間帯に、隠すように田中氏が持ってきた」(前出・関係者)

だが、多くの偽造署名には必要な印鑑もしくは指印が押されていなかった。田中容疑者はスタッフを招集。自らが指に朱肉をつけて、両手を広げて「こうやって押せば、早く仕上がる」と「指導」したとされる。指印を押したメンバーの中に、高須氏のS秘書が含まれていた。ある捜査関係者の話。
「S秘書は当初からマークし、事情聴取もしている。携帯電話も任意提出させた。指印を押したことも認めている。田中容疑者の周辺は、偽造署名についても、事前にS秘書に報告したと言っている。偽造署名が発覚後、S秘書は『黙っていればバレない』と他のスタッフに話していたそうだ。偽造署名の実行犯になるので、捜査が進展すれば立件の可能性もある。当然、高須氏も佐賀市でアルバイト動員した偽造署名のことを把握していたことも考えられる」

一方、高須氏は自らツイッターに投稿し、「部下の暴走、不祥事は全て上司の責任です。知らなかったことも大罪だと自覚しております。全責任は僕にあります。逃げも隠れもしません。いかなる罰も受け入れる覚悟でおります」と記し、S秘書については「何百人もいたそうでその中の1人です」と説明している。(*下はツイッターの画面)

だが、指印を押した人物が何百人もいれば、もっと早く偽造署名はバレたはず。実は、指印を押したのは多くても10人ちょっとだったという情報もある。S秘書には、愛知県警だけではなく名古屋地検も事情聴取をしている模様だ。検察は、高須氏側のカネ動きに、別の意味でも興味を持っている可能性がある。

■脱税で有罪判決の過去

高須氏は、わかっているだけで2度、脱税、申告漏れで問題になっている。まず、1990年12月27日の読売新聞の記事から。

<美容整形最大手の「高須クリニック」を9億円脱税で起訴/名古屋地検>

名古屋地検は26日、3年間で約9億円の所得税をごまかしていたとして、名古屋など全国九か所に美容整形医院を持ち、最大手の「高須クリニック」経営、高須克弥容疑者(45)(愛知県一色町赤羽上郷中)と、母親で医師、登代子容疑者(69)(同)の二人を所得税法違反で起訴した。

起訴状によると、登代子容疑者は昭和60年から3年間の克弥容疑者の所得が16億円余あったのに、4億円余と申告、所得税8億9600万円を脱税した。克弥容疑者は、この脱税で利益を得ていた。

克弥容疑者は、テレビや週刊誌を使った派手な広告で業績を伸ばした。また、テレビ朝日-名古屋テレビ系列の「歌謡びんびんハウス」に出演している。

この事件では、高須氏には追徴金3億円が科せられ、母親の登代子氏は実刑判決を受けていた。2003年にも、2億円を超す申告漏れが指摘されている。

S秘書は、中学卒業後すぐに高須氏の両親が経営する医院で勤務をはじめたという。1990年の脱税事件では、S秘書も脱税行為に加担していたことがわかっている。高須氏と一心同体、懐刀との言われる存在だ。

「高須氏のS秘書に事情聴取をしただけで大きな報道だ。捜査がやりにくいな。高須氏は、メディアでは弁舌巧みでいいおじいちゃんという印象だ。しかし、過去2回の税金に関する事件では、実にしたたかだった。それはS秘書も同じだ。偽造署名の経費には2,000万円ほどかかっている。当然、カネがなければできない。金主となれるのは高須氏しかいない。そこまで手が届くかどうか、S秘書の供述次第だな」(捜査関係者)

愛知県議を経験した田中容疑者は、何度も選挙に出馬しており、偽造署名が違法になることはわかっていたはず。なぜ、それを主導したのか謎だ。この点に関しては、興味深い報道がある。「AERA dot.」5月19日の記事だ。

<その「動機」をみられるのは、カネだ。田中容疑者はリコール活動の最中に「事務局長をやれるというのは、宝くじに当たったようなものだ」と周囲に語っていた。「4億円を引っ張るつもりが、2億円に値切られてしまった」カネをもらったような内容も周辺に話していた>

記事から、カネを受け取ったのは田中容疑者だと読みとれる。しかし、カネを渡した人物が誰なのかについては、何も書かれていない。河村氏が名古屋市長選で勝利した直後、高須氏は祝福しつつも「絶交する」と宣言。そして、4月26日の東京スポーツで「高須マネーをあてにされるのはごめんです」とコメントしている。

一連のリコール活動に対し、高須氏は1,200万円を貸しつけていたことがわかっている。「『4億円を引っ張るつもりが2億円に値切られた』という田中容疑者の話を聞いた人は少なくありません。誰もが田中容疑者が高須氏からカネを引っ張ったと思っていたようです。だからこそ、偽造という違法行為をしてまでも、署名を集めなければならなかったのでしょう。田中容疑者は逮捕前、マスコミに『高須氏に恥をかかせられない』と業者に署名のアルバイトを発注していたことを認めました。そりゃ、2億円ももらっていれば、恥をかかせるわけにはいかない。仮に高須氏が2億円を渡したというなら、どういう性格のカネだったのか疑念を抱かざるを得ない」(前出・捜査関係者)

田中容疑者に続くターゲットが高須氏になるのかどうか?動向を注視したい。

(山本吉文)

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