福岡県那珂川市が、2018年(当時:那珂川町)に実施した町発注の公共事業の入札に関する公文書の一部を廃棄していたことが、同市への情報公開請求で分かった。
保管されていなかったのは、業務を委託する事業者選定のために行われたプレゼン評価に関する文書。残されていたのは、市がまとめた最終的な採点結果一覧表のみで、評価点の裏付けとなる各審査員の素点を記録した文書――いわゆる“評価個票”は保管されていなかった。市は個票を廃棄したことを認めており、公文書毀棄の疑いがある。
■市「個票は公文書ではない」
ハンターが市に対し開示を求めたのは、市制移行前の2018年2月に公告された「那珂川町観光プロモーション業務委託」の関連文書。町の観光資源を有効活用し、来訪者を増やすための調査や研究、イベント企画や販促ツールの作成が主な業務内容だった。
見積もり限度額は約806万円で、3事業者が応札。3者によるプレゼンを審査員5名が審査した結果、ある地元企業が落札し、2019年4月から1年間、業務を委託されていた。
当時、町が入札結果に関して公表したのは、落札者となった最高得点者と次点者の名称と総合得点のみ。ハンターは選定結果の正当性を検証するため、改めて那珂川市に当時の関連文書すべての開示を求めていた。
その結果、開示されたのは、市が一覧にまとめた各審査員の評価点とそれを合わせた総合得点のみ。審査項目ごとの得点は、将来の同様事業において不公平が生じるという理由で、開示されなかった(*下の画像参照)。審査員が採点のため、手書きで素点を記入した評価個票は廃棄したとしている。
個票について確認したハンターの取材に対し、市の担当は「審査員がメモ程度に記載するもので、公文書として保管しておりません」と回答。最終的な判定は3事業者のプレゼンを審査員5名が複数項目にわたり採点し、この素点を元に、市が独自に設定した掛け率である「重み」を乗じて、評価点を算出したという。
■業者選定に生じる疑念
問題は、市が審査結果として公表した総合得点の正当性を裏付ける「個票」が存在しないこと。これでは、最終的に市が発表した得点が正しい数字なのかどうか、判断がつかないことになる。市側は「審査員の素点を元に市が算出した」というが、それならなおさら「素点」を記した個票は重要だ。
担当職員は、個票を「素点を記載したメモ程度」と表現するがそれは間違いだ。個票に記された点数を基に評価を下した時点で、個票自体を組織で共有した形となっており、そうなると個票は紛れもなく「公文書」。意図的に破棄した場合は、「公用文書等毀棄罪」に該当する可能性がある。
ちなみに、これまでハンターが扱った業者選定などの事案で、個票が廃棄されたケースは皆無。行政行為の正当性が担保されていない那珂川市には、埋もれている疑惑があるとしか思えない。
(東城洋平)