維新の会に失速の兆し

10月22日に参院徳島・高知、衆院長崎4区の補欠選挙で1勝1敗となった自民党。同日に投開票があったのが、「党本部が注目していた」と自民党の幹部が言う奈良県橿原市長選だ。実はこの選挙、同党の茂木敏充幹事長も「情勢を判断するひとつになる」と周囲に話すほど、関係者の注目を集めていた。

◇   ◇   ◇

橿原市長選は、現職で自民党が推薦する亀田忠彦氏と元市長で日本維新の会が公認した森下豊氏が激突。情勢調査では、当初、森下氏が3ポイント以上リードする中で、亀田氏が追いかける展開となっていた。今年春の統一地方選、奈良県では大阪府に続き維新が大躍進して維新公認の山下知事が誕生。奈良県議選でも3議席から14議席へと増やしたばかりだったため森下有利と見られていた。

維新は、初日に大阪府の吉村洋文知事、最終日には奈良県の山下真知事に加えて馬場伸幸代表も橿原市でマイクを握るという総力戦。しかし結果は、亀田氏が26,014票、森下氏が18,080票と8,000票もの大差がついて決着した。

一方、茂木幹事長は、自らが維新対策として設置した「大阪刷新本部」の本部長。近くにある大阪に通勤・通学する市民が多い橿原市を重視していたという。亀田氏の支援者がこう振り返る。
「現職の亀田氏に、市長経験者の森下氏の激突ですからどっちに転んでもわからない情勢だった。カギになったのはしっかり亀田氏が自民党、公明党の組織を固めて維新への票を逃がさずに、無党派層の票もそれなりに取り込んだこと。維新のスキャンダルに助けられたのも大きかった」

維新のスキャンダルとは、選挙直前に起きた刑事事件のことだ。10月5日、奈良県警は、日本維新の会の所属していた斑鳩町議の大森恒太朗容疑者(現在辞職)を業務上横領で逮捕。大森容疑者は、自分が担当していた自治会の会計から20万円を引き出し、着服したとみられている。だが、「実際の横領額は桁が違っている」と地元の人たちは怒りを隠そうともしない。
「横領金額は600万円とも800万円ともいわれており、地域の秋祭りもできなくなった。維新ってところはとんでもないヤツを議員にする政党だ」(地元自治会関係者)

維新の敗因は他にもあったようだ。2021年9月15日、地元の橿原市では、日本維新の会県総支部幹事長で市議だった原山大亮氏が亀田市長に暴言を吐いて辞職。国民スポーツ大会(国体)の開催を巡って市議会議長として亀田氏と協議に臨んでいた原山氏は、その席上、突然激高し「何で俺の発言だけ問題あんねん、お前、こら!」、「ええ加減にせえ! お前、こら! 都合のええことしあがって、われな」、「守秘義務あんのかよ。ほんなら、出すなよ」と罵詈雑言を吐き、亀田氏を脅していた。

原山氏は翌年4月、録音データがマスコミで報道されたとたん市議を辞職。自身のSNS投稿も削除するという失態を演じる。

しかしその原山氏が、今年春の統一地方選で県議選に出馬して当選。現在、日本維新の会奈良県連の政調会長におさまっているというのだから驚く。

市長選でこの件に触れた森下氏は、「原山氏は(亀田氏のマスコミリークで)切られた」と擁護する演説を繰り返していた。維新の奈良県議が、苦々しそうに打ち明ける。
「市長選になると、原山の暴言がSNS上にあふれました。原山が森下さんを応援している写真も出回った。原山はおとなしくしていればいいのに、俺が俺がと前に出るタイプ。『原山政調会長です』と呼ばれると森下さんの横で演説をはじめるのだけど、そのたびに票が減ったんじゃないか。最終日に馬場代表が入った時も、代表の真横ににつく始末。代表の演説が終わって全員で写真撮影となった時も『並んで、はよ集まって』と場を仕切るのですが、物言いや風貌から威圧感を感じる人は少なくなかった。聴衆からも『あの人なにやのん、怖そう』と声が出ていたほどですから。それなのに、原山が怖いのか、森下さんも演説で庇うんですから呆れました。維新の期待する無党派層が原山と大森(容疑者)のおかげで、かなり逃げたとしか思えない」

上掲の写真は選挙戦最終日の10月21日。原山氏が近鉄大和八木駅前の街頭演説を現場で差配する様子がみられた。SNSでも橿原市長選がスタートすると原山氏の「暴言」辞職について《維新の恫喝・脅迫怖い。 #橿原市長選挙  #森下ゆたか  #原山大亮》《#森下ゆたか を応援してる #原山大亮 はこんな人です。橿原市民の皆さん維新に騙されないで!》と批判が渦巻いた。

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原山氏は、橿原市・高市郡選出の奈良県議だが、本業の建設会社は奈良県大淀町に本社がある。同社の法人登記簿を調べると、奈良県議に当選後、原山氏は社長を辞任している。だが、日本維新の会のホームページには、現在も「建設会社代表取締役」の肩書を掲載しており、実質的には会社を支配しているとみられている。

同社については、確認できる限りで2014年から23年にかけて奈良県発注の公共工事を20件近く落札。橿原市議時代の受注も複数あり、亀田氏に暴言を吐いた2021年9月にも1,500万円ほどの工事を落札していた。原山氏が奈良県議になってからも、同社は《一般国道169号 仮設防護柵設置工事》という4,200万円あまりの工事を受注したことが分かっている。県議である以上、「建設会社代表取締役」の肩書はまずいだろう。

「奈良の維新は2つの勢力があり、原山がついているグループが権力を握っている。今回の市長選は敗れたが、『4年後は原山を市長選に』と推す連中もいるそうです。『お前、こら!』と恫喝されそうで、恐ろしい。恫喝されたくないので絶対に匿名にしてくださいよ」(維新の関係者)

維新絡みの問題はまだあった。選挙運動期間が過ぎた10月22日の投票日、維新所属の星川大地県議はX(旧ツイッター)に《本日投票日です!よろしくお願い致します》と森下氏の顔写真を入れて投稿(*下の画像)。この行為が公職選挙法違反を指摘されると、慌てて投稿を削除して、今度は写真のないものを投稿するというドタバタぶりだった。ちなみに、星川氏は元警察官。選挙を取り締まる側だったというから唖然とするしかない。

「不祥事のデパート」と笑いのネタにされることが増えた日本維新の会。支持率にも、「失速」の兆候がみえはじめている。

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