裏帳簿に「5,500,000」の記載|「黒革の手帳」が暴く宮路大臣政務官と鶏卵マネーの関係(4)

元農相・吉川貴盛容疑者が大臣在任中に鶏卵生産大手「アキタフーズ」(本社:広島県)の元代表・秋田善祺容疑者から現金500万円を受領していたとされる事件で東京地検特捜部は15日、吉川氏を収賄の、秋田氏を贈賄の疑いで在宅のまま起訴した。

ある捜査関係者は、起訴までの動きを、こう解説する。
「衆議院議員の任期は今年の秋まで。いつ解散総選挙になるか予測がつかない状況の中、新型コロナウイルスの感染拡大で、2度目の緊急事態宣言が発出された。事件が政局絡みになることを避けなければならない検察としては、国会が開かれる前のこのタイミングしかなかったのだろう。在宅起訴になったのは吉川氏が心臓を手術したため、さすがに緊急事態宣言下での逮捕というわけにもいかないし、何より逃亡や証拠隠滅のおそれがないと判断したからだ。政局とコロナの状況、そして吉川・秋田両人が容疑を認めていることで、在宅起訴ということになった」

鶏卵マネー疑惑は当初、吉川容疑者だけではなく西川公也元農相、公選法違反(買収)事件で裁判中の元法相・河井克行被告など複数の大臣経験者に波及するのではないかとみられていた。しかし、職務権限との関係で立件されたのは西川容疑者だけ。「ほっと胸をなでおろしている政治家は少なくない」(自民党関係者)というのが現状である。

ただし、悪いことはできないもの。公判の中で、これまで報じてきた「黒革の手帳」や「裏帳簿」の記述が明らかになれば、「ただではすまない議員がいる」(前出の自民党関係者)と囁かれている。

そんな一人が、ハンターが追及してきた総務大臣政務官の宮路拓馬衆院議員(九州比例)。改めて、秋田容疑者の「手帳」と新たに入手した「裏帳簿」の一部を検証してみると、新たな疑問が浮上する。

■アキタフーズ東京本社を度々訪問

手帳の記述や関係者の話によれば、秋田容疑者が吉川容疑者ら政治家と面談していたのは、「会食」以外なら、ほとんどが大臣室や議員会館。非議員の西川氏だけは内閣官房参与だったため、内閣府が入る中央合同庁舎に出向いていた。

手帳の記述だけに頼ると、自分からアキタフーズの東京本社に足を運んでいた政治家は宮路議員と元農林水産大臣政務官の上月良祐自民党参院議員(茨城選挙区:当選2回)の二人。宮路議員だけが、2019年に秋田容疑者と帝国ホテルの高級中華料理店で「会食」し、少なくとも3回、アキタフーズを訪問して同容疑者と面談を重ねていた。2019年に絞って、手帳の記述を確認してみると、こうだ。(*以下、赤い矢印と書き込みはハンター編集部)

・「2月26日 12:00 宮路先生来社(東京本社)

・「7月31日 13:30 宮路先生面談(東京本社)

・「12月12日 13:00 宮路先生来社(東京本社)」

実は、手帳の記述だけに限定すると、この年も含めてアキタフーズ東京本社を頻繁に訪ねていた国会議員は宮路議員一人しかいない。

特に、19年12月12日の訪問については、前後のカネの動きとの関係が見てとれる。宮路議員は臨時国会会期中の同年12月2日に秋田容疑者と会食し、4日には同議員の支援団体「新政策研究会」が秋田容疑者から50万円を受領。12日にアキタフーズの東京本社に秋田容疑者を訪ねるのだが、「会食」と50万献金の間の同月3日に、自身の政治資金パーティー「衆議院議員宮路拓馬君と国政を語る会」(収入額:608万円)を開催していた。

ここで、宮路議員の資金管理団体「拓翔会」の政治資金収支報告書を確認すると、宮路議員は同年3月6日に「衆議院議員宮路拓馬君を励ます会」(収入額:2,499万円)を都内のホテルで開催。8月27日には「衆議院議員宮路拓馬と国政を語る会」(収入額:668万円)を都内のホテルで開いているのが分かる。(*下は収支報告書の表紙と該当ページの一部)

この年の政治資金パーティーは計3回。アキタフーズ訪問記録など手帳の記述と一連の動きをまとめると次のようになる。

宮路議員がアキタフーズ東京本社に秋田容疑者を訪ねた前後で、宮路議員のカネ集めである政治資金パーティーが開かれた形になっており、パーティー券の購入を頼むために、アキタフーズの東京本社に行ったという見立ても成り立つ。

■裏帳簿に「5,500,000」― 翌日に政治資金パーティー

そうした視点で検証を続けると、興味深い事実に突き当たる。宮路議員は2018年にも3回の政治資金パーティーを開いていたのだが、ハンターが注目したのはその中の12月4日のパーティーだ(*下の報告書参照。赤いアンダーラインはハンター編集部)

入手したアキタフーズの「裏帳簿」には、2018年12月3日に550万円が出金されたとする記述がある。宮路議員のパーティが開かれたのは、その翌日の4日。秋田容疑者は年末にカネを配るのが常態化していたと言われており、裏帳簿にある550万円と宮路議員のカネ集めとの関連性の有無を疑ってみる必要がありそうだ。

宮路議員の関連政治団体すべての政治資金収支報告書をチェックしたが、アキタフーズや秋田氏からパーティー券を購入してもらった記録は確認できなかった。だが秋田容疑者は、吉川元大農相の政治団体が開いた政治資金パーティーのパーティー券300万円分と河井克行元法相の政治団体のパーティー券234万円分を、実際には会社が購入したにもかかわらず、複数の社員や関連会社関係者の名義で購入したように偽装してカネの流れを隠蔽していたことが明らかとなっており、起訴事実の中に政治資金規正法違反が含まれている。

これまでの配信記事で示した通り、宮路氏は農林水産委員会や自民党農林部会に所属してきた、いわゆる“農水族”。鶏卵業界の政策決定に強い影響を持っていることは言うまでもない。一方、アキタフーズは、鶏卵業界最大手の一つで、起訴された秋田元代表は鶏卵業界を束ねる「日本養鶏協会」の要職を歴任し、現在は、その関連団体「日本国際養鶏協議会」の代表理事になっている。宮路議員がアキタフーズの東京本社に行く度に「カネ」をもらっていたということになれば、特定の業者や業界への利益供与、請託が明らかになれば「贈収賄」が疑われる事態となる。

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