北海道警察の交通機動隊員による速度違反捏造事件で( https://news-hunter.org/?p=4356 )札幌地裁(中川正隆裁判長)は1月13日午後、証拠隠滅などの罪に問われた元警部補(58)に懲役2年6カ月・執行猶予5年の有罪判決を言い渡した(求刑は懲役2年6カ月)。
判決では「捜査機関に対する信頼を大きく損なう」と元警部補の不正行為が断罪された一方で、不正の発覚直後から内部で揉み消しが続いていた事実については「当時の職場環境に問題があった」と、組織的な隠蔽体質が指摘される結果となった。
■裁判所も認めた隠蔽体質
既報の通り、元警部補はパトカーに搭載していたレーザー式速度測定装置を悪用し、2019年8月から20年5月までに少なくとも10件、速度違反の反則切符(青切符)を捏造した。
不正の手口はレーザー式測定装置の仕様を逆手にとったもので、本来は停車中のパトカーから違反車へ向けて照射すべきレーザーを、パトカー自身が速度違反で走行しながら電柱などの固定物へ照射、あたかも一般車が速度違反を起こしたかのように装って反則切符を偽造し続けた。
13日の判決で地裁の中川正隆裁判長は、違法な証拠収集の重大さを指摘して「本件各犯行は刑事司法の前提をないがしろにする悪質なもの」と断罪、「警察官の職務に対する意識があまりに低い」と厳しく批難した。
一方これまでの審理では、元警部補の上司にあたる交機隊の中隊長が「内々で処理しよう」と揉み消しをはかっていた事実があきらかになっている。
中隊長は職場で是正を指導することなく問題を放置し続けたといい、元警部補の弁護人はこうした隠蔽体質を強く批判していた。判決でこれに触れた中川裁判長は、弁護人の主張に次のような理解を示すことになる。
「被告人が違法な取り締まりを行なっている旨の報告がされていたにもかかわらず、被告人の上司らがただちに問題の是正に向けた適切な対応をしなかったことなど、当時の職場環境に問題があったことは、弁護人の指摘するとおりである」
しかし結果として法廷で罪を宣告されたのは元警部補のみで、問題の隠蔽により被害を拡大させた当時の上司や同僚などはほとんど無傷のまま。こうした体質の改善について、筆者が昨年暮れに道警へ取材を寄せると、返ってきたのは次のような“回答”だった。
《引き続き、必要な報告や指導がなされるよう、周知徹底していきます》
今回の判決を受け、元警部補の弁護人は「過去のケースと較べても厳しい判決だったと認識している」としつつ、控訴の意志の有無については現時点であきらかにしていない。
(小笠原淳)
【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 北方ジャーナル→こちらから |