先月中旬、鹿児島県が新型コロナウイルスの感染者を療養させるため提供しているホテルなどで、鹿児島県医師会から派遣された男性職員が女性スタッフに不適切な性的行為をしていたことが発覚。地元紙南日本新聞などが事案の概要を報じた。
県民の命を守るという崇高な使命を帯びた事業の委託先として、県や県民の期待を担った医師会の人間が、仕事の現場で性的行為にふけったというおぞましい出来事。県の新型コロナ対策事業に対する信頼を失墜しかねない事態だが、謝罪と説明責任を果たすべき立場の医師会内部で、事の本質を忘れたかのような方向違いの議論が行われていることが分かった。前代未聞の「事件」について、シリーズで検証する。
■「事件」の概要
複数の関係者の証言によると、鹿児島県医師会の男性職員による不適切なわいせつ行為が行われたのは、昨年8月から9月までの間。最初は、新型コロナ療養施設に指定された鹿児島市内のホテルに用意された医師会職員用の部屋で、背後から抱きしめたりキスを強要するといった行為だったものが、職務上の接触が重なるたびにエスカレート。わいせつ行為は一線を超えるまでになっていった。
女性スタッフはその度に抵抗したが、相手の巨体と力の前になすすべなく、恐怖もあいまって固まった状態になっていたという。
女性スタッフの異変に気付いた勤務先の同僚が、事情を聞いて「事件」が発覚。女性スタッフは鹿児島県警に告訴状を提出し、県警はこれを受理している。
■問題点は・・・
シリーズの初めに断っておくが、この件の最大の問題は、県民の生命を守るため税金を投入して新型コロナ感染者を療養させるという重要なミッションの現場で、「医道の高揚、医学及び医術の発達並びに公衆衛生の向上を図り、社会福祉を増進すること」(日本医師会ホームページより)を目的とする団体の職員が、業務期間中に性的行為を行っていたということ。これは、県民の信頼や期待を裏切る行為であり、民間企業なら懲戒解雇となるのが普通だろう。仕事の最中にわいせつ行為を繰り返す社員を、容認して雇い続ける企業があるはずがない。性行為に「合意」があったか、なかったかには関係なく、医師会職員の行動そのものが問題なのだ。
■生ぬるい鹿児島県の対応
新型コロナの療養施設内で、患者の命を守るという使命を負った医療関係者が性的行為――県民の信頼を失いかねない暴挙に、県の担当者も戸惑いを隠さない。
鹿児島県くらし保健福祉部健康増進課新型コロナウイルス感染症対策室は7日、ハンターの取材に対し「県医師会に対し事案の詳細な内容を調査し、迅速に報告するよう求めた」とコメントするのが精一杯。それ以上の話はできないとして、踏み込むことを避けた。生ぬるい対応と言うしかない。
県民からすると「新型コロナの療養施設で、なんてことしてるんだ」というおぞましい事件。患者がいる施設内に派遣した職員が、性的行為に及んでいたことを医師会側が認めている以上、現時点で厳しい姿勢をみせて当然だろう。県は医師会側の調査結果を待つというが、医師会内部の調査には限界がある。そもそも、医師会職員のわいせつ行為については既に告訴状が出されて刑事事件になっており、捜査結果や、場合によっては法廷での決着をみるまで真相は分からないのだ。「調査結果を待つ」などと悠長なことを言っている場合ではなかろう。
最初に断ったように、この事案の最大の問題点は、複数回のわいせつ行為が発覚した時点で明確になっている。業務期間中に、性交渉を持つなどというハレンチ行為が許されるはずはなく、当該業務が公金投入された人命にかかわるものであるならなおさらだ。
では、派遣した職員の行為について、県民の信頼を裏切ったかたちの鹿児島県医師会はどのような対応をしてきたのか――?取材したところ、世間の一般常識から大きくかけ離れた医師会上層部の姿勢が、浮き彫りとなる。
(以下、次稿)