ペーパー業者や側近企業に独占させている公共工事の発注記録や、自身のコロナ感染、さらには賭け麻雀といった“不都合な真実”を隠蔽してきた福岡県大任町の永原譲二町長。その独裁者の狂った町政を支えてきたのが、行政をチェックする役割を担っているはずの「議会」だ。
他の自治体では当たり前に行われている本会議での一般質問は、今年になってマスコミが騒ぎ出すまで、6年間なし。報道に押され、ようやく一般質問が行われるようになったが実は形だけのもので、町長にとって不都合な質問が阻まれるという状況が続いている。議会制民主主義の基本である「質問」の権利を奪っているのが議長だというから呆れるしかない。(*下は、大任町議会の議会だより)
■「質問不許可」――議長の説明は意味不明
先月、『町長交際費』の使途状況と『一般質問』に対する町長の見解を一般質問で質そうとした次谷副議長が、議長から二つの質問事項のうちの一つを「認められない」として不許可にされた。
不許可になったのは「一般質問が6年間実施されなかったこと及び私が通告した町長に関する複数の質問が議長に許可されなかったことについての見解を問う」とした質問事項。町長交際費についての質問だけは許可されたものの、回答は「執行部」がやるとして町長本人は答弁しなかった。
他の自治体では、普通に質疑が行われる内容だ。不正常な議会の在り方を、2元代表の一方である町長に問うことに支障があるとは思えない。なぜ「不許可」なのか確認しようと同町議会の松下太議長に電話取材したが、この方とのやり取りも「質疑」にならなかった。
“一般質問が6年間実施されなかったことについて、町長の見解を聞くことをなぜ不許可にしたのか”という問いに対しては、「なんで町長に、一般質問が出なかった理由を聞くと?」
次谷議員は町長に理由を聞こうというのではなく、見解を求めようとしただけだ。どうやら議長は、質問の内容が理解できていない。さらに、「なんを聞きたいんかわからんでね、意味がね」「それは、俺たちがせんやったんやろうが」「自分たちがせんやったことを、なんか町長のせいにしたり、他のもんの、他のことのせいにしたりするなって」と、話はどんどんズレていく。ただ見解を質すだけのことを、なぜこうもムキになって否定するのか分からない。
“よその自治体だったら、普通に質疑が行われる内容ですよ”と詰めると、「(質問して)話の進展があると?」「俺の言うこと聞かんとなら切るよ!」。“いままでは、別の質問も許可しなかったでしょう?”と、角度を変えたとたん、次のようにまくし立てた。
「いままでは、じゃなかろうもん。あんた達報道しよるのはね、わがの(自分の)いい話しばっかりするんやないで。ちゃんとせな。あのー俺が。あのー、私がとにかく他の議長が許可せんやったっち話は聞いたことない。ただその前に、議長も俺も一緒。内容が悪いから、個人のプライベート的なこと、病気のこととかね、個人の色んなプライベートなことは、あんた浮気しよらせんかみたいな話は俺たちがするような話じゃない。それはもう議会でするような話じゃないから駄目って言って蹴ったんよ?その前のその6年間っちゅうのはしてないんよ、だから。してないんよ」
要するに、町長にとって都合の悪い質問は「プライベートなこと」だから、議長として「蹴った」というわけだ。議長が言う「プライベートなこと」とは、これまで次谷議員が質問通告して許可されなかった永原町長のコロナ感染や賭け麻雀、コロナ下で行われたピンクコンパニオンを交えた選挙の打ち上げなどの違法性を伴う不適切行為を指す。2元代表制だからこそ行政トップの行動をチェックするのは当然であって、議長が「蹴る」べき質問ではない。
そもそも、議会制民主主義の日本にあって、その機能を担保する「質問権」を奪う資格など誰にもない。蹴ること自体が論外。間違いなのだ。そう指摘すると、「もうあんたが勉強不足とか色々あろうけど」――。さらに反論すると、「だから、駄目なものは駄目っち言ってやったんだ!おお」と唸る始末。最後は、「よそはいいかもしれんけど、俺んとこは駄目なんよ。だから、駄目なんよ」と理屈抜きの大任ルールを押し付けてきた。噛み合わないやり取りは、一般社会の常識が通じない大任町政を象徴するものだった。同町の議会制民主主義は、死んでいる。