那珂川市、観光プロモーション巡り予算の目的外使用か|議会無視して観光ガイド本出版

福岡県那珂川市が、議会承認を得て予算組みした業務委託の内容が当初の計画から大幅に変更されたにも関わらず、議会報告を怠ったまま予算を執行していたことがわかった。

行政が実施する事業の内容が大幅に変更される場合は、一旦事業を中止し、新規事業として予算の組み替えがなされるのが普通。しかし那珂川市は議会への説明すら行っておらず、一連の手順を無視して事業を進めていた。

市議会9月定例会で一部の市議が問題点を指摘し、「執行部は報告義務を怠り、議会審査を反故にした」として、改善を求めた。

■議会承認の「体験プログラム」が消え、市が勝手に「ガイド本出版」

問題の事業は、那珂川市地域づくり課が発注する予定となっていた「平成31年度那珂川市観光プロモーション業務委託」。主な業務は、自然や歴史探訪、食や芸術などの体験を通じて、街の魅力を伝えることを目的とした、子供から大人まで参加できる「体験プログラム」を企画し運営することだ。市内外から広く集客を行い、体験プログラムを通じて市の観光振興を図るという狙いがあった。

同事業は2016年(平成28年)度にスタートしており、4年目からの予算を審議する昨年3月の市議会定例会でも同様の趣旨で説明が行われ、業者選定費用の計上に加え、2019年度から2021年までのの3年度分となる予算約1,885万円が承認されていた。2019年度の単年度予算では、約776万円が計上されている。

入手した資料などによれば、2016年度から18年度までの那珂川市の観光プロモーション業務は、プロポーザルでの事業者選定。しかし、2019年度の公募は何故か実施されていない。代わりに登場したのは、予算承認時の説明になかった「観光ガイド本の出版」。いつの間にか「体験プログラム」が消えていた。一体何が起きたのか――?

市側の説明によれば、昨年7月に隣接する佐賀県吉野ヶ里町と観光振興に関する連携協定を締結。その一環として、共同で観光ガイドブックの作成に取り組みはじめたのだという。

協定締結後の秋頃に、入札ではなく随意契約で、ガイド本制作の業務委託契約をFM福岡と締結。今年3月に観光ガイド本「まるっと那珂川・吉野ヶ里」(下の写真)が発刊されたが、出版にかかった約290万円の事業費を、前述の観光プロモーション業務委託の予算776万円から支出したという。行政の裁量権を超えた、不適切な予算執行だったことは疑う余地がない。

本来なら、体験プログラムの実施に使われる予算である。それ以外の事業に使うなら、“目的外使用”だとして承認されなかった可能性もある。議会が、予算の目的外使用を指摘するのは当然だった。

市議会での追及を受けた市の担当者は、「交流人口の増加を目指すという同じ目的だったので、体験プログラムを見直してガイド本を出版した」と説明するが、苦しい言い訳にしか聞こえない。

■コロナ禍をいいことに3月議会素通り

最大の問題は、事業内容の見直しを議会や委員会で一切説明していなかったことで、この点について市の担当者は、報告を怠っていたことを認めた上で「内容変更については速やかに報告すべきだった」と述べている。

当初予算約776万円から出版費約290万円を差し引いた残り約480万円は、「今年3月議会の補正予算で落としている」(市の担当者)というが、新型コロナの影響で会期が短縮され議会のチェックが甘くなった隙をついただけの話。不適切な予算執行が分かっていれば、補正が通らなかった可能性もある。

数百万円の事業と言えども、原資は紛れもなく公金、つまり市民の血税だ。役所の勝手な理由で、議会承認を得た使途意外に予算を使っても構わないという考え方は間違っている。

なお、同市の観光やまちづくり促進業務委託を巡っては他にも不可解な点がいくつも浮上していおり、取材を重ねた上で詳細を配信する予定だ。

(東城洋平)

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