NHKがウェブの徳島市長特集記事を1日で削除|波紋広げる子育て支援事業見直し

子育て支援事業の見直しを突如発表し、市民から大きな反発を招いている内藤佐和子徳島市長。市民感情の高まりが、メディアの報道にも影響を及ぼしつつある。

NHKが、ウェブサイト「NHK政治マガジン」(https://www.nhk.or.jp/politics/)に掲載した内藤氏の特集記事を、配信からわずか1日で“削除”したことが分かった。

削除理由について、NHKは「一時的なエラー」と説明しているが、「再掲載は検討中」というなんとも歯切れの悪い回答。すでに目次は別の記事に差し替えられており、システム上のエラーではないとみられている。日増しに高まる市民感情に配慮したのか。それとも……。

■“削除”された史上最年少女性市長の記事

6月17日、NHKがウェブサイト「NHK政治マガジン」で配信したのは、内藤市長が4月中旬に就任してから2か月間の活動を追った特集記事。タイトルは『できないなんて、いわないで ~最年少女性市長の2か月』だった。

内容は、今年1月に行われた内藤氏の出馬表明から始まり、同氏が政治の道を選ぶようになった経緯、選挙当日や初登庁の様子など節目ごとの動きを確認した上で、就任後の施策への取り組みを紹介するもの。終盤で、現在市政を混乱させている子育て事業の見直し方針にも触れ、市長の言い分や保育園事業者らの抗議場面、混乱する市議会も取り上げられていた。

ただ、内藤市長を主役にしたこの記事が閲覧できたのは、わずか1日。6月18日午前8時頃以降、当該記事を読もうとクリックするが、出てくるのは「お探しのページはみつかりませんでした」というエラー表示のみとなっている。記者はシステムエラーを疑い、その後も何度となく表示させようと試みたが、かなわなかった。ネット検索すれば、キャッシュだけは表示される。

18日正午ごろには、写真入りでタイトルが大きく掲載されていたマガジンの目次が、別の記事に差し替えられた。新たに掲載されたのは、なぜか昨年7月に掲載済みの記事だった(下の画像参照)。

■背景に市長批判の市民感情

NHKに記事差し替えの理由を問い合わせたところ、下の回答が送られてきた。

「記事の更新時に一時的なエラー」があったとした上で、「(河井夫婦の)選挙違反事件を受けて去年の参議院選挙の広島選挙区の選挙戦が関心を集めていることから、以前の特集記事を再掲載させて頂きました。徳島市長に関する特集記事の再掲載については検討して参ります」――。理屈は分かるが、市長の記事そのもののを“削除”する必要はあるまい。豊富な予算を持ち、間違いのない情報発信を旨とする“皆様のNHK”のサイトに、「一時的なエラー」が起きるとも思えない。記事そのものに問題があったと考えるのが普通だろう。

削除前に当該記事を読んだという徳島市内在住の女性(50代)は、こう話す。
「突然読めなくなっておかしいなと思いました。肝心の問題を追及しきれておらず、市民感情を逆なでする内容でしたから、苦情が出て削除したのではないでしょうか」

「史上最年少女性市長」を2か月かけて取材した特集記事だ。掲載1日でお蔵入りとなれば、まさに異常事態。メディアが一度配信した記事を差し替えねばならないまでに、市民感情が高ぶっているということになる。

内藤市長は6月3日の記者会見で、待機児童解消のために2020年度当初予算で盛り込んだ民間の認定こども園・保育園7か所の施設整備に対する補助事業を見直すと発表。2021年度に500名の受け皿ができる計画は白紙となった。

翌日、唐突な方針転換に驚いた保育事業者ら30名が市に抗議文を提出したが、内藤市長は「公務」を理由に面会拒否。「対話重視」を叫んで選挙戦を展開していたことが、反発に拍車をかけた。

市民からの批判に内藤市長は「職員が説明するのも対話」と発言し、市議会で追及される一幕も。その後、NHKのインタビューでは「対話」について、「全部に私が対話することってできますか、逆に」と開き直り、物議を醸す事態となっている。

(東城洋平)

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