消えた裏金500万円|懐刀が語る三反園鹿児島県知事の実相(3) 

2016年7月に行われた鹿児島県知事選挙の投開票から一夜明けた朝、初当選を決めた三反園訓は得意の絶頂にあった。「脱原発知事の誕生」「鹿児島県政史上初の民間出身知事」――マスコミは三反園をもてはやし、本土最南端の県に全国の注目が集まった。

だが、好事魔多し。ハンターの記者はその数週間後から三反園陣営の「政治とカネ」の問題について取材を開始し、秋には同陣営が県選管に提出した選挙運動費用収支報告書の虚偽記載問題や選挙カーに絡む助成金詐取の実態について、次々に報じていくことになる。

■日本料理店で現金授受

この間、三反園知事の懐刀と言われるX氏は、ハンターが報じた一連の金銭スキャンダルを精査して陣営内部の不正行為を確認。対応に追われる日々を過ごしていたという。

三反園陣営の「政治とカネ」についてX氏は、ある人物が三反園氏に数百万円の現金を渡す現場に立ち会ったと振り返る。

しかし、三反園氏の資金管理団体「みたぞのさとし後援会 三訓会」と地元の支援団体「みたぞのさとし後援会」の2016年から2018年までの収支報告書には、それに該当する寄附収入の記載がない。

知事に渡った数百万円はどう処理されたのか――。東京都内でのインタビューで、X氏が重い口を開いた。

――Xさんは現在もなお、「みたぞのさとし後援会」の会計責任者です。「三訓会」は別の方が会計責任者ですが、陣営のすべての収入・支出について知る立場にあったと考えてよろしいですね?
「そうですね。ついこの間までは、ということになりますが」

――というと?
「三訓会の会計責任者は今年に入って交代しました。それまでは私の友人(が責任者)でしたが、いまは違います。従って、責任者が変わってからのカネの動きは分かりません。もちろん、前回の知事選当時の政治資金の流れは、すべて把握していますが」

――三反園陣営の政治資金については、かなりの期間、取材を行ってきました。じつは、鹿児島市内に本社を置くA社(インタビュー時は実名)から、裏で多額の資金提供を受けていたという話があります。ご存じですね?
「ああ、よく調べましたね。たしかに、その会社の関係者から三反園本人が、資金を受け取っています」

――どの程度の金額でしたか?
「私が見たのは数百万。数百万ということで、勘弁して下さいね。私はまだ、みたぞのさとし後援会の会計責任者ですからね」

――500万円だったんじゃないですか?場所は、鹿児島市内の日本料理店。商工会議所のビルの……。
「否定はしませんが、数百万ということで……。まあ、相手のあることですからね」

――その会社からの資金提供ですか?
「その会社のカネ“だった”、ということです」

――だった?
「そう。“だった”ということ。三反園にその数百万を渡した人物は、勝手にその会社のカネを持ち出したんですよ」

――どういうことですか?
「まあ、その会社の裏金だったということです。それを持ち出した。で、三反園に渡した」

――いくら持ち出したんでしょうか?
「さあ、どれくらいか。知ってても、言えることと言えないことがありますからね」

――その500万円は、どう処理したんですか?
「数百万ですよ、数百万。危ないなあ」

――失礼しました。その数百万円は、収支報告書に出てきません。不記載ということになりますが?
「そういうことになりますね」

――その数百万円は、選挙資金に消えたんでしょうか、それとも後援会活動に?
「いや、そのカネだけは、どう使われたかハッキリしているんですよ」

――何かいわくがありそうですね。
「はい。じつは、三訓会の前身は「鹿児島を改革し、元気にする会」という名称だったんです。話したと思うんですが、三反園の相談を受けた私が、「みたぞのさとし後援会 三訓会」という名称に変えたんです。で、千葉に「元気にする会」の関係者がいて、三反園に政治資金を提供していたんですが、ちょっとしたトラブルになって返金しなければならなくなった。急だったので私がいったん立て替え、後日、問題の数百万円から私に返済してもらうことになった。そういうことです。ご覧になっていただいて結構ですが、(銀行の振込証を示し)これが振込証です」

――なるほど、一連の流れが分かりました。ところで、三反園さんに数百万円を渡した人物は、会社の裏金を持ち出したという話でしたが、渡したのは料理店での数百万円だけですか?
「もっとあったかもしれないし、ないかもしれない。少なくとも、私が見たのはその料理屋の数百万円だけです」

――もっとあったかもしれない?
「わかりません。ただ、会社から持ち出したのが相当な額だったということだけは、確かですね」

――その数百万円について、三反園さんと話したことはないんですか?
「私は、もとの持ち主である会社に返したほうがいいと言ったんですが、三反園は『少し様子を見ましょう』と言って、結局返さなかった。持ってきた人物も、返さなくていいと言ったんでしょうがね。まあ、そのままになった」

――三反園さんに数百万円を渡した人物は、いまも三反園陣営にいますよね?
「まあ、いるようですね」

――その方とは?
「最近は、話してもいません。信用していたんですが……」

――疎遠になったと?
「そこはまあ、いいじゃないですか。本筋の話とは違うでしょうから」

――三反園さんの政治とカネの問題は、まだまだありますよね?
「まあ、そこはおいおいと。相手がある話ですから」

■裏金に政治資金規正法違反(虚偽記載)の疑い

X氏は正確な金額を明かさなかったが、三反園氏が2016年に鹿児島市内にある日本料理店でA社の関係者から受け取った裏の政治資金は、500万円だったことが別の関係者の証言で分かっている。しかし、「みたぞのさとし後援会 三訓会」の政治資金収支報告書にも「みたぞのさとし後援会」の報告書にも、その500万円は収入として記載されておらず、3年過ぎて時効になっているとはいえ政治資金規正法が禁じる虚偽報告だった可能性が高い。

ただし、17年以降の収支報告書は、本来カウントすべき収入を欠いた金額で繰り越されているため、違法とみなされる可能性が残っている。

本稿で紹介したX氏の証言内容は、彼が知る三反園氏の「政治とカネ」の、ほんの一端に過ぎない。インタビューで分かった話には、公職選挙法や政治資金規正法に抵触する可能性がある事例が数多く含まれており、ハンターの取材班が裏付け調査を継続中である。

このあと記者は、三反園陣営と自民党鹿児島県連のカネのやり取りについて、再度確認した。

――先ほど、三反園陣営のカネの動きについて、“ついこの間まで”は分かっていたとおっしゃいました。今年4月から5月にかけての、三反園陣営のカネの動きについては?
「さっき話したように、5月の頭だったか、自民党の県連がカネを入れるようにと指示してきたという話は聞いていました。ただ、私が直接関わったわけではないので、詳細は分かりません」

――5月8日に県連が所属県議37名に現金30万円を入れた封筒を配ったんですが、その原資が三反園氏側の提供した政治資金だった可能性は?
「そこは分かりませんが、先ほど申し上げた通りです。県連にカネを入れろという話はあった。三訓会の方に。(県連に)いくら入れたのか、あるいは入れなかったのかは、現在の会計責任者が知っているはずです」

このインタビューから約2週間後、ハンターは自民党県連がばら撒いた「30万円」の原資について、極めて重要な証言を複数の関係者から得ることになる。

 

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