反省なき自民党の象徴|大野元参院議員が「5100万円」の裏金裁判で無罪主張

自民党安倍派の裏金事件で2024年12月に強制捜査が入ってから約2年。最高額5,100万円の裏金を受け取り、政治資金規正法違反(虚偽記入)の罪に問われている大野泰正元参議院議員の初公判が今月10日に東京地裁で行われた。検察側は、旧安倍派の政治資金パーティーで得たキックバック分を、2018年から22年分までの政治資金収支報告書に記載しなかったと指摘。冒頭陳述ではさらに詳細な裏金づくりを明らかにしたが、大野被告側は無罪を主張している。

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大野被告と並び元秘書の岩田佳子被告も共犯として起訴されている。冒頭陳述によれば、被告ら大野被告の政治団体「泰士会」の関係者は《還付金は泰士会に対する寄附金》であると認識、カネの取り扱いについて事務所内で協議をしたとされる。その結果、《大野の立場上、清和会の意向に反することができないので、還付金について清和会に返還することや収支報告書に記載することができないと考えた。専用口座に入金して費消せずに「預り金」として東京事務所で管理。発覚した場合には保管していた還付金を自主的に返還することで、大野への政治的非難を最小限に抑える》との方針を決定。その方向で作成された政治資金収支報告書を、大野被告も確認して提出したという。

キックバック分を政治資金収支報告書に記載しなければ罪に問われるということを、把握していた可能性がある。

当初は「預り金」となっていたキックバック。しかし、検察は冒頭陳述で《「預り金」だと伝えられていたが、大部分を秘書に指示して大野名義の口座に入金し、使用したクレジットカードの決済資金に費消するようになった》と断定、問題の裏金が大野被告の飲食代金などに使われていたことを明かした。

これが2018年のことで、その後も継続して清和会のパーティー券をノルマ以上に販売。キックバックをもらいながら政治資金収支報告書には記載せず、大野被告関連の銀行口座に入金して飲食に費消というパターンが続いていた。

19年のキックバックについては、大野被告が岩田被告からほとんどを現金で受け取ったという。それを大野被告は秘書に命じて、キックバック分の中の1,030万円のうち172万円をクレジットカード引き落としの口座に、797万円を大野被告の個人名義の口座に入金させていた。還付金を利用し、飲食店の支払などに使っていた疑いがある。

この年のキックバックは検察の捜査で1,481万円があったとされる。うち前述の1,030万円を大野被告が個人的に費消し、451万円だけが政治資金収支報告書に記載されていた。

立件はされていないが、問題はまだある。検察側は《事情を知らないX秘書らをして、泰士会の収支報告書案を作成させ虚偽の金額を記入させた》と主張。また、事情を知らない会計責任者にも印鑑を捺させ、その上で選挙管理委員会に虚偽の政治資金収支報告書を提出させていたと指摘する。

検察の主張に対し、大野被告と岩田被告はどちらも容疑を否認。「虚偽記載の共謀など一切していません」と無罪を訴えた。大野被告の弁護士は「派閥から交付された現金は求められれば返す『預かり金』という認識。いつでも派閥に返せるように管理。(キックバックが)泰士会あてという認識ではない」、「政治資金収支報告書は秘書が作成しており、大野被告はかかわっていない。提出前に大野被告の机の上に置かれるだけで、預り金の処理も適正にされていると思っていた」などと反論している。

しかし、大野被告がキックバックの現金を手にしていたことは検察側の捜査で明らか。苦しい言い訳としか思えない。

大野被告は、自民党結党の中心的役割を担った初代副総裁・大野伴睦元衆院議長の孫にあたる。父親の大野明氏は元運輸相、その後を継いだ母親つや子氏は参院議員だった。大野一族の地盤は岐阜県の岐阜羽島駅周辺で、東海道新幹線岐阜羽島駅が伴睦氏の政治力で誘致されたことは有名だ。それゆえ、駅前には伴睦氏の銅像がそびえたつ。泰正被告は大野一族の4代目という、まさに世襲一家の典型。世間知らずなのか、泰士会の2016年分政治資金収支報告書には、女性接待のある店やカラオケ代に政治資金を計上していた。以前から政治資金について問題がある人物なのだ。大野被告の地元後援者が呆れ顔でこう話す。

「自民党の国会議員と何人も深い付き合いがあるが、政治家は自分のパーティー券は必死で売る。一方、派閥のパーティー券はノルマ程度をさばけばいいという考えで、売り先は資金力ある後援者中心にとなる。ただし、大野さんに関しては、派閥のパーティー券の販売攻勢はすごかった。無罪だと言ってるようだが、キックバックのカネを飲み食いに使っていたのが事実なら支持者への背信行為。問題は他にもあるが、我々にはなんらメリットはない。ありがとうと言われたこともない。地元にこれだけ迷惑かけて無罪主張とは……」

裁判の争いは「預か金」かキックバックの裏金であるかがポイント。大野被告個人に「預り金」が帰属していたか否かだ。大野被告はカネの帰属という「死角」をついて、無罪を勝ち取ろうという作戦のように思われる。

被告側は「預り金」を受け取ったことを認めており、それを飲食代金などに充てたことも否定していない。肝心なところで「秘書が」とお決まりのフレーズを訴えているのだ。だが、実際にはキックバック分5,100万円のかなりの部分を大野被告が個人的に費消した可能性が高い。旧安倍派の国会議員が次のようにぼやく。

「総裁選でまた裏金が問題になる。こういう時期に大野被告の裁判でいろいろ出るとなれば、困ったもんだ。裏金を“預かり金”と言い換えても使っちまっているんだから始末に負えない。素直に認める潔さはないのかな」

裏金事件の反省がない自民党。総裁選でのお祭り騒ぎはやめて、一度下野するか、裏金議員全員を除名するかのどちらかを選ぶべきだ。

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